17:天井は高い方がいい?低いほうがいい?

2020年1月12日

住宅を設計する上で、天井高ってどれくらいにしたら良いのでしょうか。

 

一般的な住宅では2400にすることが多いようです。

高すぎず低すぎずといったところでしょうか。

 

一方、住宅を得意とされる建築家の方々の場合は、どちらかというと低いケースが多いです。

2100から2250くらいが多いような印象です。

もちろん天井が高いケースもありますが。

 

もう亡くなられましたが、箱根プリンスホテル、志摩観光ホテル、迎賓館などを設計された、著名な建築家である村野藤吾さんが昔、天井高について語っておられました。

少し抜粋すると

「私は日本建築について特別に学んだことはない。すべて見よう見まねで覚えたようなもので、自己流の道を模索する糸口のようなものを与えてくれたのは、泉岡さん(大阪の実業家の泉岡宗介氏)ではなかったかと思う。

その泉岡語録を少し紹介しよう・・・・」

 

その中に天井に触れた部分があります。

 

「天井の高さは七尺五寸を限度と思え、それ以上は料理屋か功なり名をとげた人の表現になるので普通でない。」

とあります。

 

七尺五寸ですから、換算すると2250mmを限度とせよということですね。

これはもう100年以上も前のお話だと思いますので、今に通じるかどうかはわかりませんが、一つの目安かなとは思います。

 

それでは、天井が低い場合と高い場合で、どんなメリット・デメリットがあるでしょうか。

僕なりに考えてみました。

 

■低い場合のメリット

 

1)天井が低い分、建物高さを抑えることができるので、コスト的に有利

2)部屋容積が小さいので、空調の能力を小さくできる

3)窓を無理なく天井いっぱいまで作ることができて、外部との一体感あるいは外部への視線の抜け感が演出しやすい

4)狭い部屋も広く感じる(という説もある)

5)天井に照明器具をつけなくても天井を照らすことで明るさを確保できるなど、照明演出の幅が広がる

6)2階建ての場合、階段の段数が少なくてすむ

 

■低い場合のデメリット

 

1)圧迫感がある

2)壁掛けのエアコンに頭がぶつかりそうになる

3)壁掛けのエアコンの風がまともに当たってしまう

 

■高い場合のメリット

 

1)開放感がある

2)シャンデリアを吊ったり、立派な建具を入れてたり、部屋にゴージャス感を演出できる

3)空間にボリュームがあるので、天井形状に変化をつけたりして、空間演出ができる

4)ハイサイド窓をつけて、自然換気しやすい

 

■高い場合のデメリット

 

1)建物の高さが高くなり、コストアップになる

2)部屋容積が大きくなり、空調コストがかかる

3)ヘタをすると寒々しい感じになってしまう

4)2階建ての場合、階段の段数が多くなる

5)狭い部屋だと一層狭く感じてしまう

 

といったところでしょうか。

 

ところで天井が高いとは何cmからをいうのかと考えてみると、明確な基準がありません。

そこで、ハウスメーカーさんが高天井とうたっている高さなどから想定してみました。

幅はありますが、どうやら2.8m以上が高い天井といえそうです。

 

いろいろ考察してみましたが、天井高を決めるに当たっては、いろいろな要素を考慮する必要がありそうです。

 

検討項目をまとめてみます。

 

1)建築コスト

2)上下階の移動によるストレス(階高が低いほどストレスは少ない)

3)空調のシステムと建物の断熱性、気密性

4)部屋の広さに応じた適切な天井高はどれくらいか(実際のスペースより狭く感じない、あるいは寒々しく感じない天井高)

5)天井が低い場合に圧迫感を防ぐために、天井の高低差、あるいは吹き抜けによる空間のメリハリの演出

 

設計にはこれが正解というものはなかなかありませんから、こうしたことを考えながら、うまくバランスを取って、天井高を設定するしかなさそうですね。

 

うまく設計ができれば、建築コストを抑えつつ、天井が低くても空間が広々と感じられ、空調も温度ムラのない過ごしやすい豊かな住空間がつくれると思います。

 

そんな設計を目指したいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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