29:「快適性」は「湿度」による・・・のお話

2020年5月23日

普段の生活では、快適に、そして健康的に過ごしたいものですよね。

 

夏、外が暑い時に室内は涼しく、冬、外が寒い時に室内は暖かい。これは快適ですね。

 

しかし、もう一つ、人の快適性や健康におおきな影響を及ぼすものがあります。

それが、実は「湿度」なのです。

 

今回のコラムでは、この「湿度」について、考えてみたいと思います。

 

前半では、湿度が快適性にどう関わってくるかについて、そして、後半ではその仕組みについて、まとめてみようと思います。


 

 

 

快適性は湿度で変わる

 

 

人が快適と感じる環境は、温度だけではありません。

 

人間の体は大変良くできていて、「湿度」「温度」の両方を感じ取っているのです。

 

この「温度」「湿度」のバランスが「快適」「不快」かに大きく影響するわけですね。

 

もちろん個人差はあるでしょうが。

 

人間は汗によって体温調節をします。

 

暑い時には汗を出して体温の上昇を防ぎ、寒い時は震えて熱を作り体温が下がるのを防ぎます。

 

汗をかくということは、その汗が蒸発することによる「気化熱」によって熱を奪い、体温が上がりすぎるのを防いでいるのです。

(この気化熱についてはブログ「省エネ・・・設備による方法(その1)」で簡単に説明しています)

 

そして、この汗をかくという「発汗作用」を左右するのが「湿度」なのです。

 

つまり「湿度」が高いと汗が気化しにくくなり、体温をうまく下げることができなくなります。

 

逆に「湿度」が低いと、汗がすぐに気化して、体温を下げることができます。

 

そのため、高温多湿な夏に、室内の湿度を低くできれば、室内温度が「28度」くらいでも、汗がすぐ気化するため、体感的には涼しく感じることができるわけです。

 

逆に乾燥している冬では、加湿をすると汗の気化が抑えられるので、室内温度が「20度」くらいでも暖かく感じることができます。

 

梅雨時など、気温があまり高くないのにも関わらず、ジメッとして暑苦しいのはこの「湿度」が高いため、汗の気化が抑えられているためです。

 

また、気温がずいぶん高いのに、汗ばむこともなく、気持ちいい場合は、カラッと乾燥していて「湿度」が低いため、汗がスムーズに気化して、熱を発散させているからなんですね。

 

このように「快適性」には「湿度」が大きく影響しているわけです。

 

 

 

快適な湿度と不健康な湿度

 

 

 

「湿度」「快適性」についてみてきましたが、「湿度」は高すぎても低すぎてもいけません。

 

建築物衛生法では、適性な「湿度」40%以上70%以下と基準が定められてます。

 

その中で、特に快適なのは40%〜60%でしょう。

 

また、「湿度」が70%を超えると、カビダニが繁殖しやすくなり、逆に40%未満になるとウィルスが増殖してきます。

 

このように、過乾燥な状態、あるいは多湿な状態となる「湿度」は不健康な湿度と言えます。

 

下図はこうした関係を示した図です。

 

 

 

 

それでは次に、「湿度」が高い、あるいは低いとはどういうことか、もう少し詳しくみていきましょう。

 


 

空気と湿度の関係

 

 

湿度って何?

 

 

空気は私たちが生きていく上で、なくてはならないものですが、無色透明の気体で実態があまり良く掴めませんよね。

 

そのため、空気には重さも無いように思ってしまいがちですが、実は1m3当たり、約1.2Kgもあります。

 

意外に重いですね。

 

さて、問題の「湿度」ですが、これは空気中に水蒸気という形で含まれる水分の量を、比率で表した数値のことです。

 

そして、この空気ですが、面白いことに、実は温度によって、含むことのできる水分の量が変わるんです。

 

温度が高いほど、多くの水分を含むことができるのです。

 

例えば、気温が25度のとき、1m3当たり、約23.8gの水分を含むことができます。

 

この状態が湿度100%です。

 

このまま、もし気温が30度まで上がったとすると、湿度は約78%まで下がります。

 

なぜかというと、30度の空気は約30.3gまで水分を含むことができるようになるため、23.8gの水分なら湿度は78%となるわけです。

 

このように、ある温度の空気中に含みうる最大限の水分量に比べて、どの程度の水分を含んでいるかを示す値を「相対湿度」といい、一般的に「湿度」という時はこの相対湿度のことをいいます。

 

「湿度が高い」とは、空気中に含みうる水分量の余裕がない状態であり、「湿度が低い」とはその水分量に余裕があるということなんですね。

 

 

これに対して、「絶対湿度」という指標もあります。

この数値は簡単にいうと、その空気に存在する水分の量を示した数値で、温度には関係ありません。

先ほどの気温25度、湿度100%の空気も、気温30度、湿度78%の空気も実際に含まれる水分の量は23.8gで同じですから、絶対湿度は同じになります。

この絶対湿度は参考までにご紹介しましたが、一般的には使わないので、あまり気にしないでください。

 

 

 

「湿度100%」の空気ってどんな状態?

 

 

 

それでは、もし部屋が湿度100%の状態になったらどうなるでしょうか。

 

湿度100%ですから、その部屋の空気はもうそれ以上の水分を含むことができない状態です。

 

これはどういうことかというと、洗濯物を乾かそうとしても全く乾かないという困った状況になるということです。

 

実際に部屋が湿度100%になることはないと思いますが、湿度が高いということは、蒸発がとてもしにくい状態ということですね。

 

そして部屋の中はとてもジメジメしていて、非常に居心地が悪く、不健康な環境と言えます。

 

 

 

「湿度」が「体温調節」の邪魔をする

 

 

「湿度」高いということは、空気中に蓄えることのできる水分量の余裕がない状態ですから、人間の「体温調節」の重要な役割を担う汗が、気化しにくい状態と言えます。

 

そのため、気化熱が発生せず、体温が下がらず暑く感じることになるわけです。

 

つまり、高い「湿度」が「体温調節」の邪魔をするわけですね。

 

そのため、「湿度が高い」「不快」になるわけです。

 

 

 

快適な生活をするには、この「湿度」をうまく調節することが大切でなのです。


 

 

 

また、「湿度」は建物を痛めるあの「結露とも密接に関係してきます。

 

快適な住宅を造るには、この湿度をどのように扱うか、コントロールするかがとても重要と言えます。

 

気密性が高くなった昨今の住宅では、結露が生じやすいというデメリットがあります。

 

また発生した湿気をどのように排出するか、あるいは除湿をどのようにするのか、いろいろ考えなくてはなりません。

 

次回のコラムでは、この「除湿」について考えてみたいと思います。

Categorised in: