9坪で暮らす工夫|キッチンは“コックピット化”する|狭い家でも使いやすいキッチンの考え方

前回のブログでは、K邸において、9坪という限られた面積で本当に暮らせるのかについて考えてみました。

9坪、つまり約18畳というコンパクトな空間の中で、
食事・くつろぎ・就寝・収納といった生活のすべてを成立させるためには、
一般的な間取りの考え方では難しく、いくつかの工夫が必要になります。

その中で重要なポイントとして、次の3つを挙げました。

・狭いキッチンはコックピットのように考える
・寝室は「小上がり」の和室として収納を兼ねる
・収納は「量」ではなく「配置」で考える

どれも「広さを確保する」のではなく、
限られた空間をどう使い切るかという視点での工夫です。

今回のブログでは、その中でも特に日常生活への影響が大きい、
「キッチンのコックピット化」について、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。

キッチンは毎日使う場所だからこそ、
わずかな使いにくさが積み重なると、暮らし全体のストレスにつながります。

逆に言えば、ここをうまく設計できれば、
狭い家でも驚くほど快適に暮らすことができるとも言えます。

「広いキッチン=使いやすい」という前提を一度手放して、
最小限の動きで完結する“コックピット”のようなキッチンとはどんなものか。

その考え方と設計のポイントを、具体的に見ていきます。

目次

コックピットキッチンの基本は「動かない」こと

一般的なキッチンは、
冷蔵庫へ行く → シンクへ行く → コンロへ行く → 配膳する
というように、意外と動きが多くなりがちです。

広いキッチンほど、一見ゆとりがあるようで、
実際には「歩く距離」が増えてしまうことも少なくありません。

一方でコックピットキッチンは、
できるだけ“その場から動かない”ことを前提に設計します。

  • 必要なものがすぐ触れる位置にある
  • 動きが最小限で済む
  • 整理整頓されている
  • 操作性が高い

この状態をつくることが基本です。

特に今回のキッチンは2.8畳しかありません。

さらに改装ということもあって、プラン上の制約から、このキッチンに玄関からの出入り口を設けなければなりません。

そのため、2.8畳の広さがあっても、入り口があるために全ての広さを有効利用ができません。

このような制約にある2.8畳の中に、

冷蔵庫、シンク、ガスコンロ、作業台、食器、フライパンの収納、電子レンジ、炊飯器、コーヒーメーカー、ゴミ箱・・・

を配置しなければなりません。

今回、どのように考えたか、その配置の考え方を次にまとめてみます。

配置の考え方①|シンク・コンロ・作業スペースを一体化する

まず重要なのが、キッチンの中心となる3点です。

・シンク
・コンロ
・作業スペース

この3つをどう配置するかが、使いやすさに直結します。

一般的なキッチンでは、これらを一直線に並べ、
それぞれの間に十分なスペースを確保することが多いですが、
2.8畳のようなコンパクトなキッチンでは、そのような余裕はありません。

実際には、スペースの制約から
シンクとコンロを一直線に並べることができず、L型の配置になるケースが多くなります。

一見すると不利に思えますが、
ここでも考え方を変えます。

L型配置の特徴は、「移動」ではなく
“その場での回転”で作業が完結することです。

たとえば、

・正面にシンク
・横を向けばコンロ
・その間や周辺に最小限の作業スペース

という関係にすることで、
一歩も動かず、体の向きを変えるだけで調理が進みます。

また、作業スペースについても、
独立して確保するのではなく、

・シンクにまな板を渡す
・コンロ横のわずかなスペースを活用する

といったように、機能を重ねて使う工夫が重要になります。

「広さ」や「一直線のレイアウト」ではなく、
“動きを減らす配置”になっているかどうか。

それが、コックピットキッチンの本質です。

配置の考え方②|家電とゴミ箱を“最初から組み込む”

使いにくいキッチンに共通しているのが、
家電とゴミ箱の位置が後付けになっていることです。

・炊飯器の置き場がなく、カウンターの上に出しっぱなし
・電子レンジが遠くて動線が分断される
・ゴミ箱が通路にはみ出して邪魔になる

こうした状態では、どれだけキッチン本体が良くても機能しません。

そこで重要なのが、設計段階から

・炊飯器
・電子レンジ
・ゴミ箱

の位置を一体で計画することです。

キッチンは「設備を並べる場所」ではなく、
使い方に合わせて構成する空間です。

その視点で計画することで、
動きの流れを止めないキッチンが実現できます。

配置の考え方③|食器・フライパンは“取り出す動き”で配置する

キッチンの使いやすさを左右するのが、
食器やフライパンの収納位置です。

ありがちなのは、

・食器棚が少し離れた場所にある
・フライパンが足元の奥に収納されている

といった配置です。

この場合、

・一度しゃがむ
・数歩移動する
・また戻る

といった動きが増え、
小さなストレスが積み重なります。

コックピットキッチンでは、ここも考え方を変えます。

ポイントは、
「使う動作の延長線上に収納する」ことです。

例えば、

・食器はシンクや作業スペースのすぐ近くに配置する
 → 洗う・拭く・しまうが一連で完結する

・フライパンはコンロのすぐ下、もしくは横に配置する
 → 取り出してそのまま加熱に移れる

このように、
“取り出す→使う”が一動作でつながる配置にします。

さらに重要なのが、収納の高さです。

・よく使う食器は立ったまま手が届く位置に
・フライパンもできるだけ腰の高さで出し入れできるように

とすることで、
しゃがむ・背伸びする動作を減らせます。

限られた空間では、
収納量を増やすことよりも、

「どこに、どう取り出すか」

を優先することが、使いやすさにつながります。

キッチンは“しまう場所”ではなく、
動きの中に組み込まれた収納であることが重要です。

造作で“使い方に合わせる”という発想

ここまで見てきたように、2.8畳という限られた空間では、
キッチンに十分な広さや余白を確保することはできません。

・十分な作業スペースを設けることが難しい
・シンクとコンロは極力コンパクトにまとめなければならない
・炊飯器の設置場所をどうするか

このように、一つひとつの要素に対して、
“スペースが足りない前提”で考えていく必要があります。

そのときに重要になるのが、造作という考え方です。

既製品のキッチンや収納は、
あらかじめ決められた寸法や使い方を前提に作られているため、
どうしても今回のような条件にはうまく当てはまりません。

・あと少し小さければ収まるのに
・この数センチの隙間がもったいない
・使い方と配置が噛み合わない

そうした“わずかなズレ”が積み重なり、
使いにくさにつながってしまいます。

一方で造作であれば、

・スライド棚を必要な位置に組み込む
・ゴミ箱の寸法に合わせて収納をつくる
・体の向きや動きに合わせて配置を決める

といったように、空間ではなく
「使い方」から逆算して設計することが可能です。

つまりキッチンを、既製の設備として選ぶのではなく、
自分の動きに合わせてつくる“道具”として考えるということです。

広さに余裕がある場合は、多少の無駄があっても成立します。
しかし9坪のようなコンパクトな住まいでは、
そのわずかなズレが、使いやすさに大きく影響します。

だからこそ、

「広くする」のではなく
「使い方に合わせてつくる」

この発想が、キッチンの完成度を大きく左右します。

具体的にみていきましょう。

実際の計画案

平面計画と問題点

Screenshot

まず平面図です。

このキッチンは、たった2.2m角のスペースしかありません。

狭いスペースを有効的に使うには、「コの字」方のプランにしたいところです。

しかしながら、今回は玄関からの入り口がありますので、使えるスペースが限られてしまいます。

この計画での主な問題点は

  • シンク周りの作業スペースがほとんど取れない
  • 炊飯器を置くスペースがない
  • 配膳スペースがない

次にこららの問題点の解決方法についてみていきます。

作業スペースをどう確保するか

この計画では、シンク周りの作業スペースは電子レンジの前のわずかなスペースしかありません。

絶対的なスペースが不足しているため、この問題はどうしようもないわけです。

こうした場合、前にも書きましたが、機能を重ねて使うという方法でなんとかしたいところです。

今回は、造作キッチンですからどう作るかは全く自由です。どんなシンクを選ぶかも自由です。

そんなわけで、検討した結果、今回は「トヨウラ」さんのシンクを採用しました。

このシンクのいいとろは、水切りプレートやまな板がシンクと同ツラでセットできるところです。

これを使えば、電子レンジ前のわずかなスペースとシンクの水切りプレートを合わせればそこそこの作業スペースが確保できるわけです。

Screenshot

炊飯器をどこに置くのか?

平面図をみてもわかりますが、炊飯器を置くスペースがありません。

今回の計画では、炊飯器を常設する場所を確保することが難しく、
キッチンカウンター内にスライド式の棚を設ける方法を採用しました。

普段はカウンターの中に収めておき、
ご飯を炊くときだけ手前に引き出して使用する、という使い方です。

このように、

・使うときだけ現れる
・使わないときは空間から消える

という仕組みにすることで、
限られたスペースでも作業性と見た目の両立が可能になります。

ゴミ箱についても同様に、
通路に置くのではなく、

・カウンター下に組み込む
・引き出しの一部として計画する

といった方法で、最初から居場所をつくっておくことが重要です。

合わせてコーヒーメーカーも置いています。

配膳スぺースがない

この狭いキッチンでは、当然のことながら配膳スペースなど設ける余裕はありません。

今回は、シンク下をOPENにして、そこに収納を兼ねて可動式ワゴンとゴミ箱を置くようにしました。

この可動式ワゴンを配膳スペースとして使います。

普段はシンク下に入れて、引き出しとして使用します。

必要な時に引き出して使うというわけです。

Screenshot

このようにして、狭いキッチンを有効利用できるように考えました。

Screenshot

出来上がりのイメージはこんな感じです。

Screenshot

まとめ|狭いからこそ、キッチンは洗練される

2.8畳という限られた空間では、
キッチンに広さや余白を求めることはできません。

・一直線に並べるのではなく、L型でコンパクトにまとめる
・家電はスライド棚などで“使うときだけ現れる”ようにする
・食器やフライパンは、動きの中で取り出せる位置に配置する

こうした一つひとつの工夫は、
すべて「無駄な動きを減らす」ためのものです。

広いキッチンであれば、多少の無駄があっても成立します。
しかしコンパクトな空間では、そのわずかなズレが
使いにくさとしてはっきり現れます。

だからこそ必要になるのが、

「広さに頼る」のではなく
「使い方に合わせて設計する」という発想です。

動きを減らし、機能を重ね、無駄を削ぎ落とす。

そうしてつくられたキッチンは、
ただ小さいだけの空間ではなく、

よく考え抜かれた、密度の高い空間になります。

狭いからこそ生まれる合理性と使い勝手のよさ。
それが、コックピットキッチンの良いところではないでしょうか。

次回のブログは「寝室は「小上がり」の和室として収納を兼ねる」についてまとめてみます。

設計から考えるキッチンづくりをご希望の方へ

ここまでご紹介してきたように、
限られた面積の中で使いやすいキッチンを実現するためには、
既製品を選ぶだけではなく、使い方から設計する視点が欠かせません。

・スペースが限られていて不安がある
・できるだけ無駄のない間取りにしたい
・家電や収納まで含めて細かく考えたい

こうしたご要望は、むしろ設計事務所の得意とするところです。

私たちは、単に設備を選ぶのではなく、
日々の動きや暮らし方を丁寧に整理しながら、
一つひとつの寸法や配置を検討していきます。

その積み重ねが、
「なんとなく使いやすい」ではなく、
自然と体に馴染むキッチンにつながります。

もし、

「この条件で本当に成り立つのか」
「自分たちの暮らしに合う形にできるのか」

といった疑問や不安があれば、
お気軽にご相談ください。

ご要望をもとに、
具体的な形としてご提案させていただきます。

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