30:「除湿」・・・4つの方法

2020年5月30日

前回のコラムでは、「快適性」には「湿度」が大きな影響を及ぼすということについてみてきました。

夏場は「湿度」が低いほうが涼しく感じ、冬場は「湿度」高い方が暖かく感じます。

季節に応じて適切な「湿度」の調節ができるといいですね。

 

今回のコラムは少しだけ厄介な「除湿」の方法について考えてみたいと思います。


 

 

 

「加湿」と「除湿」どちらが簡単?

 

 

「快適性」には「湿度の調整」が大切でした。

大きなビルなどでは、しっかりとした空調設備が備わっていますので、この「湿度の調整もしています。

いわゆる「空気調和機」といって、室内の空気の「温度」「湿度」「清浄度」「気流」の4つの条件を適切な状態に調整しています。

「湿度」に関しては「除湿」も「加湿」も自在にできます。

 

しかし、一般的な住宅ではこのような空気調和機ではなく、家庭用の「ルームエアコン」で冷暖房を行います。

「湿度」については、「除湿」はできますが調整まではできなくて、あくまでも相対湿度は「成り行き」です。

一般的なビルでも「湿度」までコントロールのできる空調まではしていないです。

コストがかかりますからね。

 

それでは、この「加湿」と「除湿」ではどちらが簡単なのでしょうか。

それは「加湿」です。

 

 

 

加湿の方法

 

「加湿」の方法はは比較的簡単で、昔なら石油ストーブの上にヤカンをのせていましたが、ヤカンの湯気が加湿の役割をしていました。

あるいは部屋に洗濯物を干せば、水分は蒸発して、空気中に入り込み湿度は上がります。

手軽に加湿するなら、「加湿器」でしょうか。

 

実は、私たちが普通に生活しているだけで、「湿度」はどんどん増えていくんですよ。

人の呼吸による「湿気」は、毎時35g(安静時)〜65g(事務作業程度)です。

四人家族なら毎時140g〜260gもの「湿気」が室内に排出されているわけですね。

 

一方、室内では例えば一般的な8畳の部屋であれば、室温が20度の場合、547gまでしか水分を含むことができません。

もし、外気の湿度が40%だったとしたら、その部屋の「湿度」は{(547*0.4)+260}/547=0.875、つまり87.5%になってしまいます。

 

このように、湿度は生活しているだけでも増えていくようなものですから、「加湿」はどちらかといえば簡単なのです。

「湿度」の調節を考える場合、「加湿」よりもむしろ「除湿」の方を考えなければなりません。


 

 

 

少しやっかいな「除湿」・・・4つの方法

 

 

「除湿」とは、空気中に含まれている水分を取り除くことです。

「加湿」と違って、「除湿」は少々厄介です。

今回は下記の4つの方法についてご説明しようと思います。

 

1)エアコンによる除湿

2)除湿機による除湿

3)換気による除湿

4)内装材(自然素材)による除湿

 

 

「除湿」の基本的な方法は、主にエアコンのように空気中の水分を「結露」させて取り除く「冷却除湿」と除湿機のような「乾燥剤」を使った「デシカント除湿」そして圧縮機を使った「コンプレッサー式除湿」などがあります。

 

どれも一長一短あります。

 

各々ご説明します。

 


■ エアコンによる除湿

 

冷却除湿の仕組み

 

 

この方式は空気の温度を下げて「結露」させて水分を取り除く訳ですが、家庭用エアコンはこの方式です。

まず、「結露」の仕組みについてご説明します。

 

コラム29で空気は温度によって含むことのできる水分の量が変わることをお伝えしました。

例えば、温度が20度の1m3空気は17.2gの水分を含むことができます。

この状態が湿度(相対湿度)100%です。

 

この状態から、この空気を10度まで冷却したとすると、水分たちはどうなるでしょうか。

温度10度の1m3の空気が含むことのできる水分は9.39gです。

 

そうすると、もともと17.2gの水分が含まれていましたから、その差の7.81gが空気中に存在することができなくなり、「結露」という形で水滴になって、空気中から取り除かれていきます。

 

夏場に冷房をかけたときに、エアコンの室外機の近くのホースから水が出ているのをよくみますが、これが結露した空気中の水分です。

 

エアコンの冷房は、温度を下げながら、除湿もしている訳です。

 

このような仕組みが「冷却除湿」です。

そして、エアコンの機能には「冷房」「弱冷房除湿」「再熱除湿」の3通りあります。

それでは、この3通りの「冷却除湿」の使い分けについてみてみましょう。

 

 

冷却除湿の使い分け

 

 

・冷房

 

冷却は温度を下げる働きですが、同時に除湿もしています。

そのため、夏場の蒸し暑い時は、冷房すると涼しく、さっぱりしてとても気持ちいいです。

しかし、梅雨時などに気温は高くないけど、湿度が高くて不快な時があります。

このような時に冷房をすると、気温が高くないのにもかかわらず、除湿するにはさらに温度を下げる必要があります。

そうすると、確かに除湿はできたけど、部屋の温度も下がってしまい、とても寒くなってしまうという現象がおきます。

この様な時は「冷房」は使わない方がいいです。

「冷房除湿」はどちらかというと、「温度」を下げることが主目的の時に使います

 

 

・弱冷房除湿(除湿モード)

 

エアコンでは「除湿モード」がありますが、これは冷房能力の小さい「弱冷房」のことです。

気温がそんなに高くない時に、「除湿」を目的とした機能です。

  「除湿モード」と言っても特殊なことではなく、単純に弱い冷房をして除湿しているだけです。

そのため、「除湿量」は「冷房」よりも少ない訳です。

梅雨時など、部屋の中の水分量が「除湿モード」で除湿できる水分量よりはるかに多いので、あまり効果はないのです。

あまり暑くないけど、ちょっと「湿度」を下げたいという時に使います。

 

 

・再熱除湿

 

除湿能力を高めるためには、温度をどんどん下げなくてはなりません。

そうすると、部屋の温度もどんどん下がってしまいます。

この欠点を補ったものが「再熱除湿」です。

これは、部屋の温度が下がりすぎないように、除湿した後にその空気を温め直して吹き出すというものです。

せっかく温度を下げた空気を再度温める訳ですから、電気代が余分にかかるという欠点があります。

しかし、梅雨時など、室内の「湿度」を最優先して下げたいという時は最適です。

 

 

冷却除湿のまとめ

 

冷却除湿には、「冷房」「除湿モード(弱冷房)」「再熱除湿」の3つの方法がありました。

各々の使い分け、除湿能力、電気代などをまとめると下表のようになります。

 

 

 

 

ダイキンHPより掲載

 

 

 

簡単にまとめると

 

「冷房」の主目的:温度を最優先で下げたい時

「弱冷房除湿」の主目的:少しムシムシしていて、ちょっと湿度を下げたい時

「再熱除湿」の主目的:梅雨時など湿度を最優先で下げ、かつ室温はあまり下げたくない時

除湿能力:冷房>再熱除湿>弱冷房除湿

消費電力:再熱除湿>冷房>弱冷房除湿

 

このようになります。

状況に応じて、適切に使い分けてください。


 

 

■ 除湿機による除湿

 

 

「除湿機」には大きく分けて、乾燥材を使って除湿する「デシカント式除湿」と圧縮機を使って除湿する「コンプレッサー式除湿」の2通りの方式があります。

 

 

デシカント除湿とは

 

一般的にはシリカゲル系、ゼオライト系の「乾燥剤」を使って、「水分を吸着」させることによって「除湿」をします。

そしてこの水分を吸着した乾燥剤はヒーターで熱を加えて、水分を放出させ、その放出された水分は熱交換器で冷やされて、水滴となってタンクに溜まります。このようにして、乾燥材を再生するという仕組です。

メリットは冷却除湿と違い、温度を下げる必要がないので、温度が低い時でも安定して除湿ができます。

また、デメリットとしましては、「乾燥剤」を再生するためにヒーターによって熱を加えるため、消費電力が大きくなる点があります。

そのため、室温も3〜8度程度上昇するという問題もあります。

 

 

メリット・・・低温時でも除湿能力が高い

デメリット・・・ヒータがあるため、ラニングコストが高く、室温上昇が大きい

 

 

コンプレッサー式除湿とは

 

基本的にエアコンと同じ仕組みです。

コラム21で圧力が高い方が凝集しやすいとお話ししましたが、コンプレッサーで高圧にして、液化させた冷媒を、大きな容積の冷却器に放出すると、冷媒は気化して急激に温度を下げます。この時に周囲の空気も冷やされ、水分が凝縮して水滴となって除湿されます。

 

 

メリット・・・高温時の除湿能力が高い(湿気の多い梅雨、夏場に向いている)

ランニングコストが安い

デメリット・・・低温時に除湿能力が下がる、運転音が大きい。


 

 

 

■ 換気のよる除湿

 

ここまではエアコン、除湿機などによる除湿についてみてきました。

実は一番簡単な除湿方法は、窓を開けて換気をすることです。

 

前にも書いた様に、湿度は生活しているだけでどんどん上がります。

そのため、梅雨時のジメジメした季節でも、意外と室内よりも外の方が湿気が少ない場合もあります。

特に在室人数が多い場合などは、人が発する湿気によってかなり湿度が上がっているはずですから、まずは窓を開けての換気がおすすめです。

 

もちろん換気扇による換気も、除湿には有効ですよ。

 

また、外の方が湿度が高い場合などは、換気をすると、逆に湿気が室内に入ってきてしまいます。

このような場合は、全熱交換型の換気扇を使うと、外の湿気を下げて室内に入れることができますから、とても有効です。

(全熱交換型の換気扇についてはコラム22をご覧ください)


 

 

■ 内装材による除湿(調湿)

 

最後に内装材による除湿について考えてみたいと思います。

これは、除湿というか調湿と言った方がいいでしょうね。

特に木製のフローフィングとか、左官材の漆喰、珪藻土などの自然素材は水分を吸収したり、放出したりして、調湿効果があるのです。

この働きをうまく使った方が健康的ですよね。

どれくらいの効果があるのかみてみたいと思います。

 

 

木製フローリングの調湿性

 

「木は呼吸している」とよく言われます。

これは、周囲の温度や湿度に合わせて空気中の水分を吸収したり、放出したりしているというという意味で言われています。

木の吸湿量はとても多くて、挽いたばかりの木材に含まれる水分は40%〜200%ほどだそうです。

これを「含水率」といいますが、例えば重さが20Kgで、含水率100%の木材ですと、乾燥状態の木材自身の重さが10Kgで、含んでいる水分も10Kgということです。

 

200%なら、自身の重さの2倍の20Kgの水分量を含んでいるということです。

木材の水分保持能力は、空気の数倍もあります。

 

ちょっと驚きですよね。

建材として使う時は、乾燥させて含水率10〜15%くらいで出荷されます。

 

さて、その木材を床のフローリングとして使った場合、どれくらいの水分を吸収してくれるのでしょうか。

例えば8畳の部屋で、気温25度の時、この室内の空気が含むことができる水分量は700gほどになります。

この水分量は厚さ4mmのヒノキのフローリング1㎡に相当するそうです。

単純計算すると、8畳の広さの床でしたら、約9000gの水分量となります。

実際には、その時の湿度条件によっても変わってきますが、いずれにしても、木のフローリングには、かなりの吸湿能力があることがわかりますね。

また、逆に乾燥している場合には、含んでいる水分を放出してくれます。

このように木には湿度を調整してくれる、「調湿効果」が期待できるわけですね。

 

 

 

珪藻土の調湿性

 

近頃壁材としてよく聞くのが珪藻土です。

珪藻土とは、珪藻という植物プランクトンの殻が海や湖の底にたまって出来た堆積物です。

無数の穴が開いていて、珪藻土1gあたりの穴の表面積は20㎡もあります。

驚異的な面積ですね。

この無数の穴一つ一つに吸水性を持っているため、非常に高い吸湿性があるわけです。

当然、湿度が低ければ放出もして、「調湿効果」があります。

 

メーカーの資料をみてみましょう。

 

フジワラ化学の「シルタッチSR」の場合

フジワラ化学「シルタッチ」より掲載

 

上表の実験資料から、シルタッチSRの吸放湿性能は、24時間で1㎡あたり125.7gの水分を吸放湿できることがわかります。

8畳の部屋の壁面積は34.5㎡なので、24時間で吸湿できる水分量は34.5X125.7=4336.7gとなります。

先ほどの例で25度の8畳の部屋の空気の水分量は最大で約700gですから、吸湿量は十分ですね。

但し、この数値は測定条件にあるように、吸湿時は湿度90±5%、放湿時は湿度45±5%となっていますので、湿度条件によって変わってきますが、それでも高い「調湿効果」があることがわかります。

 

 

このように、吸湿性のある自然素材を内装に使うことは、非常に健康的で、快適な生活が出来そうです。


 

 

以上、「除湿」の4つの方法についてみてきました。

おわかりいただけたでしょうか。

 

自然素材の内装も、全熱交換型の換気設備も、できれば採用するにこしたことはないと思います。

 

また、エアコンと除湿機では、その使い分け、除湿能力、消費電力などの比較など、今回はまとめることができませんでしたが、別の機会に是非まとめてみたいと思います。

 

今回のコラムはここまでです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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