27:土地購入に失敗しないためのチェック事項(敷地状況編)

2020年5月12日

家づくりには、まず土地が必要です。

実はこの土地にはいろいろな法規制だったり、前面道路の状況、インフラの状況、敷地特性などによって、建てられる建物の条件、あるいは建築コストが変わってきます。

主なチェック事項は下記の通りです。

  1. 法規制
  2. 道路状況
  3. インフラの状況
  4. 敷地特性

 

この中でコラム26では、前編として1の(法規制)についてまとめてみました。

今回は後編として2〜4までの(敷地状況)についてまとめてみたいと思います。

 

 

 

 

道路状況:道路が建物に及ぼす影響

 

 

建物を建てる時、道路が建物に影響を及ぼすのは次の3つです。

 

  • 接道義務
  • 道路斜線
  • 容積率の低減

 

 

接道義務とは

 

 

建築物の敷地は道路に2m以上接しなければ、基本的に建築できません。

これを接道義務といいます。

 

さて、ここでいう道路とはどんな道路なのか、これも建築基準法で定義されています。

 

道路は基本的に4m以上の幅員が必要で、道路法による道路、都市計画法による道路、土地区画整理事業による道路など、様々に規程された道路があります。

 

代表的な道路としては

 

・1号道路・・・道路法による道路

 

・2号道路・・・「開発道路」といって都市計画法、土地区画整理法などの法律により築造

された道路

 

・3号道路・・・「既存道路」といって、建築基準法の適用や、都市計画区域の指定以前か

ら存在した道路

 

・4号道路・・・「計画道路」といって、道路法、都市計画法、土地区画整理法などの法令

による事業計画があり、2年以内に執行される予定のもの

 

・5号道路・・・「位置指定道路」といって、建売住宅や土地の分譲の目的で土地を区画割

りする場合に、全ての区画が道路に面するように築造し、この道路が4m以上の幅員を有し、かつ一定に技術水準に適合するようにして、特定行政庁から位置指定道路の認可を得た道路

 

・2項道路・・・「みなし道路」といって、この法律が施工される前に、すでに建物が建ち

並んでいる幅員4m未満の道路は、「道路とみなす」として認められた道路。

 

ここで特に住宅を建てる場合に注意しなければならない道路が「みなし道路」といわれる2項道路です。

 

この「みなし道路」の場合は、敷地のセットバックが必要となります。

これは「みなし道路」の中心線から水平距離2mの線を道路の境界線とみなし、そのラインまで敷地を後退させなければならないということです。

 

さらにこのセットバック部分の敷地は、建ぺい率や容積率を算定する場合の敷地面積に含めることができません。

 

せっかく土地を買っても、建物面積の算定用の敷地面積が減らされてしまうのですから、ずいぶんもったいないですね。

土地購入にあたっての重要なチェク事項です。

 

道路については、役所に行って道路台帳をみて調べることができます。

ちなみに、名古屋市の場合は市のホームページにて、下図のような道路認定図という資料がみれます。

該当する道路をクリックすると、その道路の幅員、路線名などの情報をみることができますよ。

 

 

 

道路斜線とは

 

 

よく斜線制限といわれているのは、この道路斜線を指す場合が多いです。

道路斜線とは、「建物のその部分から、前面道路の反対側の境界線までの水平距離に1.25倍もしくは1.5倍かけた高さ以下としなければならない」というものです。

 

ここで、1.25倍となる地域は住居系の7つの用途地域に建つ場合で、商業系などのその他の地域に建つ場合は1.5倍となります。

 

簡単にいうと、前面道路の反対側の境界線から、1.25/1もしくは1.5/1の勾配で斜線を引いて、その範囲内に建物を造りなさいというものです。

 

また、建物が前面道路の境界線より後退している場合は、前面道路の反対側の境界線からさらに後退した距離の分だけ外側の線からの水平距離になります。

 

このように言葉で書くと、全く理解できないと思います。

絵にすると下図のようになります。

 

 

 

この絵からわかると思いますが、敷地があまり広くない場合には、前面道路の幅員が狭いと、建物の高さが制限を受けてしまいます。

 

例えば、住居系の用途地域において、前面道路の幅員が4mで、建物の後退距離が1mの場合、建物は(1m+4m+1m) X 1.25=7.5mの高さから斜めにしか建てることができません。

 

よくマンションで、上のほうが斜めにカットされたような形になったものがありますが、そのような形になってしまいます。

もし3階建てを造ろうと思っている場合は、影響が出てしまいますね。

 

土地購入にあたっては、道路の幅員もチェック事項ですね。

 

 

 

容積率の低減

 

 

前面道路の幅員が12m未満の場合、用途地域の区分によって、容積率が低減されてしまいます。

 

住居系の用地地域の場合は道路幅員に4/10を、その他の用途地域では6/10をかけた数値となります。

 

例えば住居系の用途地域で容積率が200%の場合において、前面道路の幅員が4mの場合なら、4 X 4/10  = 1.6

 

つまり160%となってしまうわけです。

 

これももったいない話ですよね。

 

このように道路の条件によって、建築できる建物が制限を受けてしまうわけです。

 

 

 

 

インフラの状況


 

 

建物を造って生活するためには、水道、ガス、下水などのインフラ設備が必要です。

 

したがって、土地購入する場合には、このインフラの整備状況を確認する必要があります。

 

もし、前面道路に上下水道、ガスが通っていなければ、近くの上下水道やガス管から、家の近くまで費用をかけて引き込む必要があります。

 

また、下水がなければ、浄化槽が必要となります。

 

都市ガスが通ってなければ、プロパンガスにしなくてはなりません。

これはランニングコストに影響してきます。

 

一般的には都市ガスのほうが安いですからね。

 

このインフラの整備状況も土地購入にあたって、重要なチェック事項となります。

 

 

 

 

敷地特性

 

 

土地には様々な特性があります。

家を造るとき、特に注意したいポイントは下記のとおりです。

 

  • 敷地の高低差
  • 前面道路と敷地との高低差、
  • 前面道路の排水能力
  • 地盤の強さ

 

 

 

敷地の高低差

 

敷地に高低差がある場合は、土地を平らにするために盛り土したり、あるいは家を造るために擁壁を造る必要が発生したりします。

 

高低差がある場合には、それを活かして設計上面白い建築ができる可能性も秘めていますが、上記のような平地では発生しないような、余分なコストもかかります。

 

しかし、その分土地の値段は安いかもしれませんが。

 

傾斜地の場合は、どんな家ができるのか判断が難しいので、専門家の意見も聞いた方が良いように思います。

 

 

前面道路と敷地との高低差

 

稀なケースですが、前面道路が敷地より上にあったり、敷地は平坦ですが、道路が坂になっていて、敷地が道路の面でねじれたような形になっているような敷地もあります。

 

こうした敷地の場合は、傾斜にもよりますが、どこかに階段を設けたり、擁壁を造ったりして、対処することになります。

 

また、敷地が道路より低い場合は、道路の雨水が流れ込む恐れがないか、あるいは敷地の排水はどうなるのかといったことも調べる必要があります。

 

特に雨水の問題は次の項でも書きますがとても重要です。

 

 

前面道路の排水能力

 

 

昨今、温暖化の影響なのかもしれませんが、雨の降り方が尋常ではありません。

 

建物自体の屋根とかベランダの排水は雨量を計算して、トイの径、本数を決めれば問題はありませんが、問題は前面道路の排水能力です。

 

下水などのインフラが整備された昔に較べると、明らかに雨量が多くなっています。

したがって、当時の排水能力では現状の雨量に追っ付いてないケースがあるのです。

 

その場合、大雨が降ると排水できなくて、道路側溝から、雨が溢れて道路が冠水してしまいます。

敷地形状とか、建物の造りによっては床下浸水、床上浸水の恐れが出てきます。

 

土地購入を検討する場合は、現地に行って周囲の家をよくみてください。

 

もし、近隣の家が道路から玄関まで、何段か階段で上がっている場合は、そこは水につかる恐れがあるため、そのようにしている可能性もあります。

 

近隣の方に、冠水したことがあるか聞いてみるのもいいと思います。

 

名古屋市のホームページには、洪水・内水ハザードマップがあり、住所を入力すると、下図のような地図でみることができます。

 

 

 

是非、調べてみてください。

 

 

 

地盤の強さ

 

家を造る上で、その土地が安全なのかを調べることも大切です。

もし、地盤の強度が弱い土地に建物を建ててしまうと、建物が傾いたり、地盤が下がったりします。

 

事前に強度を調べることができればいいですが、これはなかなか難しいので、役所の資料で調べてみるのが良いかもしれません。

名古屋市の場合は、地震災害危険度評価図情報があり、参考になります。

 

 

 

 

また、土地を購入して、具体的に強度を調べる場合には、一般的にはボーリング調査をしますが、住宅ではスウェーデン式サウンディング試験をします。

 

こちらの方が、費用も安いですから。

 

この調査で、もし地盤が弱ければ、地盤改良といった補強を行ったり、あるいはもし強度の強い地盤が何mも下にある場合は、その地盤まで届く杭を打って、その上に基礎を造ります。

 

このように、地盤が弱くても建築は可能ですが、もともと地盤の強度があれば何も補強する必要がないので、良い地盤に建てるにこしたことはないですよね。

 

 

 

さて、2回にわたって、土地購入に失敗しないためのチェック事項をまとめてきましたが、いかがでしたか。

大きな買い物ですから、しっかり調べて、失敗しないように慎重に・・・・ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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