20:省エネ・・・エアコン、本当に必要な能力は?

2020年2月7日

今回のコラムはコラム19でも書きましたが、部屋の条件によって、エアコンの能力がどう変わってくるのかを検証してみたいと思います。

 

2月1日のブログで、カタログで12畳用と書いてあるエアコンは、実は木造なら冷房で9畳、暖房で10畳、鉄筋コンクリートのマンションで、かつ中間階なら冷房で12畳、暖房で15畳の部屋までの能力があることをお知らせしました。(詳しくは、ブログーカタログでエアコンの能力はどうやってみたらいいの?

 

これからいくと、木造の住宅の場合はカタログで12畳用となっていても、10畳用と考えた方が良いということになります。

 

しかし、この場合の木造は南向き、平家建てという条件です。

その他、断熱の仕様とか、窓の大きさなどの条件はわかりません。ましてや、西向きの部屋なら暖房能力は足りないかもしれませんね。

 

そこで、部屋の条件とエアコンの能力について、どのような違いがあるのか検証してみようと思います。

 

その方法ですが、一般的に空調機の能力は、その部屋の条件にそって「熱負荷計算」をして決定します。

今回は、一つの部屋を想定して、その部屋の条件をいろいろ変えて「熱負荷計算」をして、比較をしてみようと思います。

 

問題は前提条件ですが、メーカーはJIS C 9612の基準に沿って能力を決めているようですので、計算の温度条件はそれに倣ってみようと思います。

 

概要は下記の通りです。

 

■  部屋の大きさ・・・20畳(4.5m X   7.2m)

■  部屋の構造・・・木造(断熱無し)、木造(断熱有り)

鉄筋コンクリートマンション中間階(断熱無し)、鉄筋コンクリートマンション中間階(断熱有り)

(使用材料、断熱仕様、窓の大きさなど、詳細は下記条件表をご覧ください)

■ 場所・・・東京(JIS C 9612より)

■ 外気条件・・・夏季33℃、冬季 0℃(JIS C9612より)

■     室内条件・・・夏季27℃、冬季20℃(JIS C9612より)

■  部屋の向き・・・南向き(JIS C9612より)

■  換気回数・・・木造 1.5回、鉄筋コンクリート 1回 (JIS C9612より)

■ 家族人数・・・5人

 

想定した図面は木造では平家の一戸建て、鉄筋コンクリート(RC)はマンションの中間階の想定です。

 

 

 

細かな条件は下表に依ります。

 

 

 

さて、計算結果はどうなるか?

 

ちょっとその前に、20畳用のエアコンの能力がカタログ上でどれくらい必要かをみてみましょう。

 

これに依りますと、暖房能力は7.1KW,冷房能力は6.3KWです。

木造なら暖房能力で16畳まで、コンクリートのマンションなら暖房で20畳冷房なら26畳までいけることになります。

 

それでは、熱負荷計算をした結果をご覧ください。

結果は下表の通りです。

 

 

この結果をみますと、Aの木造の20畳で断熱無しを見ると、暖房能力で7.8KW,冷房能力で7.29KWですので、カタログの暖房能力で7.1KW,冷房能力で6.3KWを超えています。

やはり能力が暖冷房とも足りませんね。

 

それではDの木造16畳の断熱無しを見てみましょう。

ここでは暖房の必要能力が6.59KWです。カタログの7.1KW以下ですのでOKですね。

 

次にEのRCマンション20畳の断熱無しを見てみます。

こちらは暖房能力が6.59KWですので、7.1KW以下ですからOKです。

冷房能力はどうかというと、4.71KWですから、6.3KWまでまだ余力があります。

カタログでは26畳までいけるはずですね。

 

それではGのRCマンション26畳の断熱無しをみてみると、冷房能力が5.55KWですから、6.3KW以下ですのでこの広さでもOKです。

 

この結果を見ると、概ねカタログで表示されている能力が計算結果ともあっていると言えそうですね。

(計算結果の数字とカタログ上の数字に誤差はありますが、想定にもよりますので、許容範囲としてください。)

 

ここからわかるのは、カタログ表示の能力は恐らく断熱はしていない部屋という前提ではないかということです。

 

考えてみれば、断熱が叫ばれるようになったのはここ20年〜30年ほどで、実際に公庫融資で断熱が義務付けられたのは1989年だそうです。

 

断熱の無い古い家はまだまだたくさん存在するわけですから、メーカーとしても能力の基準を断熱することを前提とはできないわけですよね。

 

さて、ここでもう一つ重要なのは、部屋を断熱した場合です。

計算結果ではB,C.Fのタイプです。

 

断熱の仕様にも依りますが、カタログ上の能力の40%〜60%以下になっています。

 

ということは、昨今の断熱をしっかり施し、ペアガラスにしたような住宅では、カタログ通りのエアコンを選んでしまうと、オーバースペックになってしまうということです。

 

今回のように、仕様に合わせて、熱負荷計算をすればいいですが、普通は無理ですので悩ましいところですね。

 

家を新築する場合は是非、建物の断熱仕様に合わせて、熱負荷計算をしてエアコンを選定してもらって下さい。

 

注意しなくてはいけないのは、設備屋さんにお願いしても、負荷計算をするのではなく、経験値で選定されてしまうケースがあります。

 

建物の仕様をわかっているのは設計士さんですから、設計士さんを通じて設備屋さんに負荷計算をしてもらうようお願いするのがよいかと思います。

 

最後におまけですが、部屋の向きが西向きの場合は必要能力はいくらになるか計算してみます。

Aタイプの木造20畳、断熱無しのケースでやってみます。

 

結果は暖房能力で7.84KW, 冷房能力で9.65KWでした。

 

これは26畳用のエアコンに相当します。

 

やはり、西向きの部屋は環境が厳しいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Categorised in: