23:理想の家づくりの手順(その1)
初めて家をつくる方の中には、いったいどのようにして進めていったらよいのか、検討がつかないという方も多いかと思います。
今回のコラムは、
家づくりを思い立ってから、竣工するまでの手順をまとめてみました。
おおよその手順は次のとおりです。
- 工事にどれほどの予算がかけられるか把握する
- どんな家に住みたいかイメージをふくらます
- どこに依頼すべきか検討する
- 要望を伝え、提案書をもらう
- 納得したら契約する
- 設計作業に入る
- 建築確認申請を提出
- 工事見積を徴収
- 工事契約
- 着工 → 工事 → 竣工 → 検査
- 引き渡し
早速、この項目を1〜5、6、7〜11の3回に分けて詳しくご説明します。
工事にどれほどの予算がかけられるか把握する
家を造るには、まずお金の問題が出てきます。
1件の住宅を完成させるまでには、工事の他に様々な諸費用が必要になってきます。
全ての予算を工事費に使ってしまうと、お金が足りなくなってしまうわけですね。
例として、工事費が3000万円の場合で、竣工までに必要な総額費用を下表にまとめてみました。
註)上記表の金額はあくまでも概算です
おおよそ4000万円くらいの費用が必要となってきます。
まずはしっかりとした資金計画を立ててみましょう。
どんな家に住みたいかイメージをふくらます
理想の家を造るには、設計者に住みたい家のイメージをうまく伝えることが大切です。
必要諸室を伝えるのは当然として、次のように5つの項目に分けて、自分の考えをまとめてみるといいと思います。
1)今後の家族構成を考えてみる
- 子供は増えるか
- 子供はずっと住み続けるのか、早くに独立するのか
- 親世帯と同居する可能性はあるか
2)生活スタイルを考えてみる
- 居間を中心に家族が集まるのか、個室中心か
- 食事は家族全員でするか、ばらばらか
- 食事の準備は一人か、子供あるいはご主人と一緒に楽しくか
- 趣味の部屋は必要か
- 来客が多いか
- 家にいる時間は長いか、短いか
- 服とか靴は多い?少ない?
- くつろぐ場所はどこか
- 奥さんは普段どこにいることが多いか
- 家事はどんな流れでやりたいか
- お風呂とトイレは別々とするか、一体か
3)どんな空間構成がいいか考えてみる
- LDKが一体となった広いワンルームがいい
- キッチンは独立型がいい
- 吹き抜けのある開放的な空間がいい
- 陽当たりがよくて明るい部屋がいい
- お風呂と洗面はガラスで仕切って広々と見えるようにしたい
4)部屋のイメージを考えてみる
- 白基調のシンプルな部屋がいい
- 自然素材を使った飽きのこないシックな部屋がいい
- パステル調のかわいい部屋がいい
- クラシック調のイメージがいい
- 和風の落ち着いた部屋がいい
5)収納について考えてみる
- 極力造り付け家具としたい
- 納戸を広くとって、全てそこに収めたい
- 気にいった家具を置いて、収納したい
家族全員で話し合ってみると楽しいと思います。
どこに依頼すべきか検討する
さて、家のイメージが固まったところで、どこに依頼して造ってもらうのか決める必要があります。
一般的には次の3つの選択肢があります。
- 大手ハウスメーカー
- 地元工務店
- 建築設計事務所
恐らく圧倒的に多いのはハウスメーカだと思います。
ただ、どれも一長一短がありますので、下表にまとめてみました。
(あくまでも私の個人的な見解でまとめてあります)
自分の思い描いた家を依頼するのにもっとも適しているのはどこか、よく考えてみてください。
いかがでしょうか。
どこも一長一短ありますが、どんな方がどこへ依頼したらよいか、簡単にまとめてみます。
- 大手ハウスメーカー:家づくり一切を安心して任せ、少しでも早く住みたいという方
- 地元工務店:地元に信頼できて、評判のよい工務店がある方
- 建築設計事務所:こだわりを持って、理想の家づくりをしたい方、変形敷地で設計の難易度が高そうな方
要望を伝え、提案書をもらう
依頼先が決まったら、次は要望を伝えて提案書をもらいましょう。
この時点で、1社に絞る必要はありません。
ハウスメーカー数社に声をかけたり、設計事務所に声をかけてもいいと思います。
この時の注意点ですが、相手先に数社に声をかけていること、どこまでが無料の範囲かを確認しておくのがよいと思います。
あらかじめ、要望事項をまとめて、同じ条件で依頼したほうが比較しやすいでしょう。
依頼する時に下記の資料があるといいと思います。
- 敷地の大きさがわかる資料(実測図があればいうことなし、公図、住宅地図など)
- 要望事項をまとめたメモ等
提案してもらう内容としては、「配置図」「平面図」「概算予算書」「工程表」くらいでいいと思います。
納得したら契約する
各社提案書が出てきたら、よく内容をみてみましょう。
特に配置図、平面図は家づくりの基本となる図面ですから、注意深くみなければいけません。
次に各図面のチェック事項をまとめてみます。
■ 配置図(建物の位置、庭、駐車場などを書いた図面)
- 建物の位置は、庭とか隣家との位置関係を配慮してあるか
- 建物周囲はメンテナンスできるように適度なアキはあるか
- 建物を配置する事で、使い道のないデッドスペースができていないか
- 駐車場がある場合、車が入れやすいか
■ 平面図(部屋の間取り、家具などを配置した図面)
- 全体のゾーニングを見てみる
住宅は大きく分けて3つのゾーンからできています。
1)パブリックゾーン(居間、食堂いった家族全員が集まる空間)
2)プライベートゾーン(寝室、子供室といった個人的な空間)
3)サービスゾーン(キッチン、ユーティリティ、バス、洗面室といった機能的空間)
これらのゾーンがスムーズにつながっているか、サービスゾーンの配列は使いやすいか
などを見ていきます。
- 動線に回遊性があるか
動線とは、人が家の中をどのように移動するかという軌跡をいいます。
玄関から入って、居間、食堂、キッチンへと移動する日常の動きに無駄がなく、かつ行き止まりがなく、回遊できるかどうか。
このように回遊性のあるプランになっていると、ストレスのない使いやすい家になります。
- 家具の配置・人の動きを配慮した部屋になっているか
部屋には窓と入口がありますが、これらの位置は家具の配置を考慮して決める必要があります。
特に居間では家族が集まります。
ソファーとテレビの位置関係が良いか、あるいはテレビを見ている前を人が横切ることはないか、また、食堂とつながっている場合は、家族がくつろぐスペースと食堂へ向かう通路スペースとが交錯していないかなど、実際にその部屋を使った場合をじっくり想像して、歩いてみてください。
次にキッチンですが、作業の流れを考えます。冷蔵庫から材料をとりだし、洗い、まな板で作業して、炒めるといった一連の動きが無駄のない配置になっているか。
ゴミを出すのはどこか。食品庫への動線はスムーズか。
あるいは忙しい朝などは、調理と洗濯を同時進行で行いたいものです。
その場合キッチンと洗濯室の動線がスムーズになっているかどうか確認しましょう。
各個室は、机、ベッド、タンスなどの配置が考慮されているかチェックします。
- 通風・採光・安全性が配慮されているか
家の快適さは、間取りだけではなく、光の取り入れ方、風通しの良さによっても左右されます。
採光では、一般的な窓、トップライト、ハイサイドライトなどの工夫で、どの部屋も明るくなっているかかどうか。
通風では、風通しをよくするために対角方向に2箇所窓を設けてあるかどうか。
また、安全性では例えば階段です。
階段がある場合は、扉をあけたらすぐに段板があるような階段は危険です。スペースがないからといって、踊り場を設けないような設計は避けるるべきでしょう。
実際に住むことを考えて、平面図の中で動いてみて、生活を想像してみてください。
これが理想の生活だと確信が持てたら、その提案をしてくれた会社と契約です。
設備機器、仕上材など細かいことは、その後の設計作業の中で決めていきます。
Categorised in: 建築設計あれこれコラム