21:省エネ・・・設備による方法(その1)

2020年3月6日

コラム18で、省エネには2つの方法があるとお伝えしました。

「建物による方法」と「設備による方法」です。

今回は「設備による方法」について考えてみたいと思います。

内容は下記のとおりですが、2回に分けてお伝えします。


項目

1)設備による方法とは

2)高効率型のエアコンについて

・ヒートポンプって何?

・省エネラベルの見方

3)給湯設備の省エネについて

・高効率給湯器・・・エコジョーズとエコキュート

・コージェネレーションシステム・・・エネファーム

4)換気設備の省エネについて

・換気の種類と役割

・実は大きい換気負荷(外気負荷)

・換気負荷を減らすための全熱交換器

5)照明設備の省エネについて

6)自然エネルギー利用による省エネ

・太陽光設備

・太陽熱設備


設備による方法とは

 

住宅を省エネ化するには、住宅設備についてもエネルギーの消費の少ない高効率型の機器を採用しなければなりません。

住宅設備にはエアコン、給湯器、換気扇、照明設備などがあります。

これらの技術は年々進歩しています。

 

こうした技術の中に、エアコン、電気式の給湯器で使われるヒートポンプという技術、給湯器で多く使われる「コージェネレーションシステム」という1つのエネルギーから、電気と熱の2つを取り出すという技術、照明器具ではLED化、そして換気扇では全熱交換器という熱交換をして省エネを図るという技術があります。

そして、自然エネルギー利用の技術としては、太陽光設備、太陽熱設備などがあります。

 

こうした技術を使って省エネするわけですね。

それではこれらの技術を各々もう少し詳しくみていきましょう。


高効率型のエアコンについて

 

・ヒートポンプって何?

 

家庭で使われるエアコンは、ほとんどがヒートポンプエアコンです。

このヒートポンプという技術が実はすごい「スグレモノ」なのです。

でもこのヒートポンプエアコンの説明はなかなか難しいのですが、簡略化して書いてみますね。

 

ヒートポンプとは「熱を汲み上げる機械」とよく例えられるのですが、「熱を汲み上げる」ってなんかよくわかりませんね。

それでは、熱ではなく水で考えてみましょう。

 

水を汲み上げて、高い所から流すということはイメージしやすいですよね。

水は高い所から低いところに流れます。しかし低い所から高いところには絶対流れませんよね。

ですから、水を流すためには低いところの水を、高いところに移動してあげなければなりません。

そして、そのためにはポンプという機械が必要になってきます。

それでは熱の場合はどうでしょうか。

 

熱 の 特 徴 と 冷 媒 の 働 き)

 

実は熱も水と同じように、「温度の高い方から「温度の低い方」にしか移動しないのです。

ですから、熱を移動させるためには、水と同じ様に温度の低い所の熱を汲み上げて、高い所に移動させなければなりません。そして、そのためにはポンプが必要になってきます。

このポンプにあたるものを「ヒートポンプ」という呼び方をしています。

 

このように空気中の熱を取り込んで冷暖房に利用するため、エネルギー効率が良いわけですね。

そして、この熱を汲み上げるときに欠かせないのが「冷媒」と呼ばれるガスです。

この「冷媒」の役割は、空気の中にある「熱」を運ぶことなのです。

エアコンでは、室外機と室内機の間をこの「冷媒」がグルグル回っているのですが、冷房時には部屋の熱を外に、暖房時には外の熱を部屋に運んでいるわけです。

あとで詳しく書きますが、この「冷媒」が熱を取り込むときに、先ほどの熱は「温度の高い方」から「温度の低い方」に移動するという性質を利用しているのです。

 

(「蒸 発」と「凝 縮」)

 

そしてもう一つ理解しなければならないのが、「蒸発」「凝縮」です。

液体が蒸発するときには、エネルギーが必要で、それを「気化熱」と言います。液体が蒸発するときには廻りの空気から気化熱というエネルギーを奪って、気化します。そうすると、廻りの空気は熱を奪われるわけですから、温度が下がります。

よく夏場に、道路に打ち水をすると涼しく感じるというアレです。

このような作用を「吸熱作用」といって、エアコンの「冷房」に利用されます。

反対に気体が液体に変化するときには、エネルギーを放出しますが、これが「凝縮熱」です。

この作用を「発熱作用」といい、エアコンでは「暖房」に利用します。

 

(圧 力 の 働 き)

 

最後に「圧力」についてです。

水は100°で沸騰しますね。でもこれは地上で1気圧の場合です。

沸騰とは水の内部から気化している状態を言いますが、これは気圧によって沸騰する温度が変わるんですよ。

例えば富士山の山頂では90°で沸騰します。それは富士山の山頂では気圧が低いからなのです。

あるいは圧力鍋は内部の圧力を高めていますので、120°で沸騰します。ですから普通より高い温度で料理ができるわけです。

 

こうした例から分かるように、圧力が低いと気化しやすくなります。逆に圧力が高いと気化しにくくなります。

水が気化した状態で、圧力をあげると気体の状態を保てなくなって、凝縮して、液体に戻ります。

エアコンでは「気化熱」凝縮熱」で冷暖房をしているのですが、この「気化」「凝縮」をしやすくするために「圧力」をあげたり下げたりしているわけです。

 

また、「圧力」を上げると温度は上がり「圧力」を下げると、つまり膨張すると温度は低くなります。

この性質もエアコンでは利用しています。

そしてエアコンが使う電気は、この「圧縮」をするためにほとんどが使われているんですね。

この圧縮するための機械が「コンプレッサー」です。

 

(エ ネ ル ギ ー 効 率 に つ い て)

 

例えば電気ヒーターですが、これも暖房器具ですが、これは電気のエネルギーを熱のエネルギーに変えているだけですので、電気エネルギー「1」に対して得られる熱エネルギーも「1」です。

ところがヒートポンプエアコンは圧縮するためのエネルギー「1」に対して得られる冷暖房のエネルギーは「5」とか「6」になります。

これは汲み取った空気の熱も活用しているからなんですね。

つまり、高効率なエアコンとは投入するエネルギー「1」に対して冷暖房のエネルギーをいかに高く発揮できるエアコンであるかということなんです。

この効率を表すのが「APF」という数値ですが、この数値からエアコンの性能がわかります。

以前にブログでエアコンのカタログの見方を説明しましたが、再度そのラベルを見てみましょう。

 

ここにAPF6.8と書いてあります。

この「APF」とは「通年エネルギー消費効率」といって、エアコンを運転したときの消費電力1キロワット当たりの冷房・暖房の能力を表したものです。

この数値が大きいほど、高効率な省エネ性能が高いことになります。

このラベルのエアコンは消費電力「1」に対して冷暖房の能力は「6.8」倍あることを示しています。

このように「ヒートポンプ」とは非常に省エネな技術なわけです。

 

(ヒ ー ト ポ ン プ エ ア コ ン の ま と め)

 

最後に図でご説明します。

 

暖房の仕組み

 

 

ヒートポンプ・蓄熱センター資料より掲載

 

上図は暖房の仕組みですが、図の左側がエアコンの室外機、右側が室内機と思ってください。

室外機では外の空気の熱を汲み上げるために、「冷媒」を膨張弁で膨張させ温度を下げます。

すると冬でも外気の温度よりも下がりますので、熱の性質から、冷媒より温度の高い外の空気の熱が冷媒に伝わります。

このようにして、空気中の熱を汲み上げるわけです。

そして、その空気を圧縮して温度を高め、室内機で凝縮させて熱を室内に放出します。

この時も「冷媒」の方が室内の温度より高いので、温度の低い室内に熱が伝わるわけです。

 

冷房の仕組み

 

 

 

福井原子力センターHPより掲載

 

上図は冷房の仕組みです。

暖房とは反対の動きになります。

室外機では圧縮された高温の冷媒を凝縮させて、温度の低い外気に放出させます。

そして、室内機では圧力を下げて、液化した冷媒が気化しやすい状態にして蒸発させて、部屋の熱を奪い温度を下げるわけですね。

 

いかがでしょうか。

理科の授業みたいな話ですが、これがヒートポンプエアコンの大雑把な仕組みです。


・省エネラベルの見方

 

2006年にエネルギーの合理化に関する法律が改正施工され、家庭で使用される製品を中心に、小売事業者が製品の省エネ情報をラベルに表示するための制度が開始されました。

表示内容は

・省エネ基準達成率(この数値が大きいほど、省エネ性能が優れた製品といえます)

・エネルギー消費効率

・省エネ性能の相対評価(☆印による1つ星から5つ星までの5段階)

・1年間の電気代の目安

などです。

 

住宅省エネルギー技術講習テキストより掲載

 

このようにAPFの数値とか、省エネラベルに記載されている内容と予算とを勘案して、採用するエアコンを決めなければいけないわけですね。

 

給湯設備の省エネについて

 

・高効率給湯器・・・エコジョーズとエコキュート

 

家庭で使用するエネルギーの中で、給湯に使うエネルギーは約30%もあります。

給湯設備も省エネ性能の高いものを選ばなくてはいけませんね。

そこで「エコジョーズ」「エコキュート」についてご説明します。

 

エコジョーズとは

 

エコジョーズとは「潜熱回収型給湯器」といって、少ないガス量で、効率よくお湯を沸かすことのできる給湯器です。

なぜ、少ないガス量でお湯を沸かせることができるかというと、これまでお湯を沸かすために捨てられていた「排気熱」を回収して「再利用」しているからなのです。

メーカーさんによると、従来の給湯器の熱効率が80%であるのに対して、エコジョーズは95%にアップしているそうです。

尚且つ使用するガス量は15%下がっているとのことです。

とっても効率がいいですね。

リンナイHPより掲載

 

エコキュートとは

 

エコキュートとは「自然冷媒ヒートポンプ給湯器」といって、冷媒に二酸化炭素を使用したヒートポンプで、お湯を作る給湯器のことです。

ヒートポンプエアコンでご説明したように、ヒートポンプはとっても省エネな技術ですから、それを活用したのですね。

屋外の空気から熱を集めて、その熱をお湯を沸かすのに活用します。当然電気も使いますが、ヒートポンプのため、少ない電力で効率がいいわけです。

さらに、料金に安い深夜電力を使うので経済的でもあります。

メーカーさんよると、電気エネルギー「1」に対して給湯エネルギーは「3」になるようです

 

三菱電機エコキュートHPより掲載

 

・コージェネレーションシステム・・・エネファーム

 

コージェネレーションシステムとは、発電により得られた電気と、発電時に発生した熱を、電気や暖房、給湯などに利用することなのですが、このように2つのエネルギーを同時に生産して供給する仕組みをこのように呼びます。

この発電の燃料には、天然ガス、石油、LPガスなどが使われます。そして近年では燃料電池も使用されるようになっています。

ここでは、燃料電池コージェネレーションのエネファームについてお伝えします。

エネファームとは

 

エネファームとは、ガスから水素を取り出して、空気中の酸素と化学反応をさせて発電します。

熱機関で発電する通常の発電のシステムとは異なり、化学エネルギーを電気エネルギーに変換しているわけです。

機能は①発電、②給湯、③暖房の3つです。

 

①発電

上述したように、燃料電池の働きで発電をして、その出力は最大で700W程度です。

 

②給湯

発電時に発生する熱を利用して約60°Cのお湯をつくり、設定温度になるように水と混ぜて給湯に使います。

お風呂の追い焚きはバックアップ熱源機で加熱します。

 

③暖房

暖房設備に使う温水は、バックアップ熱源機でつくり、その温水は、エネファームでの発電時に発生する熱でも温めています。

 

エネファームは発電をしているわけですから、停電時には停電時専用コンセントを使用して、最大500Wの電力が使用可能です。

この500Wというのは、どれくらいの目安かというと、メーカーカタログによれば、液晶テレビ(32型)、携帯電話の充電、LEDスタンド、給湯、温水床暖房くらいまで使えるようです。

 

パナソニック「エネファーム」HPより掲載

 

以上、ここまで、給湯設備についていくつか省エネ商品をご紹介しましたが、各々メリット、デメリットがあります。

コストの問題、低周波による騒音問題、設置スペースの問題、使い勝手による費用対効果の問題など、採用する場合はいろいろな方面から検討した方が良いかと思います。

 

省エネ・・・設備による方法(その1)はここまでです。

続きは次回、設備による方法(その2)でまとめてみます。

 

 

 

 

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