24:理想の家づくりの手順(その2)
初めて家をつくる方の中には、いったいどのようにして進めていったらよいのか、検討がつかないという方も多いと思います。
今回のコラムも先回に続き、家づくりを思い立ってから、竣工するまでの手順の(その2)です。
手順をもう1回振り返ります。
- 工事にどれほどの予算がかけられるか把握する
- どんな家に住みたいかイメージをふくらます
- どこに依頼すべきか検討する
- 要望を伝え、提案書をもらう
- 納得したら契約する
- 設計作業に入る
- 建築確認申請を提出
- 工事見積を徴収
- 工事契約
- 着工 → 工事 → 竣工 → 検査
- 引き渡し
今回は「6、設計作業に入る」の項目について詳しくご説明します。
ここでの構造は基本的に「木造」で、ハウスメーカーであれば、「木造」もしくは「軽量鉄骨」という前提で考えます。
目次
設計作業に入る
まずは平面図から
契約が済んだら、いよいよ本格的な設計作業に入ります。
実際の設計作業は、ハウスメーカー、工務店、建築設計事務所で、進め方が違ってきます。
但し、どの場合も平面図が基本であることは共通です。
まず、平面図から考えていきましょう。
契約した時には、概ねの平面図ができていますが、まだ十分ではありません。
再度じっくり検討しましょう。
平面図が家づくりの基本ですから、大事なところです。
平面図を検討する上でのチェック事項をまとめてみました。
部屋構成から検討する
- 必要諸室は不足なく満足されているか
- 各部屋への動線(つながり、並び)は機能的で使いやすくなっているか
- 各部屋の広さは機能を十分に満たしているか
- 各部屋は家具のレイアウトが考慮され、入口、窓、通路などへの動線を邪魔していないか
- 通風、採光は十分考慮されているか
- 特にサービスゾーンのキッチン、パントリー、ユーティリティ、洗面室、バスといった、機能的諸室のつながりに無駄はないか
- キッチンでは、食品庫、冷蔵庫、流し、調理台、ガスコンロ、配膳といった一連の調理作業がスムーズに動ける配列になっているか
- ゴミ置き場、洗濯干し場などのスペースが考えられているか
- 2階にキッチン、バスなどがある場合、ゴミ置き場、給湯器などの設置スペースとしてサービスバルコニーがあるか
- 家族人数、来客頻度などを考慮したトイレの数、位置になっているか
- 裏動線として、勝手口があるか
収納から検討する
- 玄関
-
- シューズクロークは十分か
- 外出用のコート掛け、来客用のコート掛けがあるか
- 傘の収納はあるか
- 掃除用の道具置き場があると便利
- ベビーカー、ゴルフバックなどの大物入れ、宅配用の印鑑等の小物いれがあると便利
- リビング・廊下
-
- 本が多い場合は、壁面に収納を考える
- 掃除機などの収納を考える
- ちょっとしたワードローブがあると「ちょい置き」の服の収納に便利
- 洗面・脱衣室
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- タオル、洗剤等のストックスペースは十分か
- 下着などの収納のためのリネン棚はあるか
- 脱衣籠の設置スペースはあるか
- 家族構成によっては洗面器の数の検討も必要
- ウォークインクローゼット
-
- 衣類の量に見合った長さがあるか
- 人が入って歩ける通路スペースがあるか
- 寝具・小物収納もあると便利
- ウォークインが無理な場合は壁面収納で考える
- 和室
-
- 来客用の寝具、座布団などが収納できる押入れがあるか
- 納戸
-
- 既存の整理ダンス・洋服ダンスが収容できるか
- 雑多なものが多い場合にあると便利
実際の生活を思い描いて、じっくり検討してみてください。
外観を決める
平面がきまったら、次は外観です。
外観は大きく分けて次の2つパタンに集約できます。
- 家形
屋根が三角形のもっとも一般的な家の形です。
さらに分けると、軒の出が短いと洋風、軒の出が深いと和風の外観になります。
- 箱型
陸屋根(ろくやね)といって、屋根が平らで、四角い箱型の家です。
どちらの形状がいいか、また洋風か和風かくらいの希望は設計者に伝えると、デザインを進めやすいと思います。
また、どちらのパタンもデザインがかっこいいか、かっこ悪いかは、設計者の力量しだいです。
大手ハウスメーカーの場合は、デザインがシリーズ化されていて、そのイメージをみて、方向性を決定できると思います。
設計事務所では、オリジナルのデザインを提案してくれます。まさに腕の見せどころですね。
ハウスメーカーも設計事務所も外観については、CG(コンピュータグラフィック)で、実物そっくりの絵で見せてくれることでしょう。
地元工務店では、設計担当者の技量によって、CGであったり、立面図という図面での説明であったりと、対応が異なってくると思います。
ただ、図面だけの説明では、出来上がりは全く想像できないと思いますが。
さて、それではどんなんデザインがいいかというと、これはなかなか難しい問題です。
デザインは好きか嫌いか、イメージに合うか、合わないかなど、ヒトそれぞれですからね。
デザインについては全くわからないという方は、町を歩く時に建物をちょっと気にして見てください。
たくさんの建物を見ていくうちに、目が養われていきます。
そうすると次第にデザインの好き、嫌いの判断がつくようになってくると思います。
以前のコラムでも外観のデザインについてちょっと考察しています。
インテリアを決める
外観が決まれば、次はインテリアです。
このあたりから大手ハウスメーカー、地元工務店、建築設計事務所で進め方に違いが出てきます。
一般的なケースでご説明していきます。
大手ハウスメーカーの場合
内装の仕上材をまとめたカタログ、あるいはハウスメーカーのショールームが充実しているので、そこに行って仕上材を見ながら、選んでいくことになります。
専門のインテリアコーディネーターがアドバイスしてくれることでしょう。
かんたんなCGでイメージの確認もできると思います。
造り付け家具、入口ドアなどは基本的にカタログから選びます。
地元工務店の場合
インテリアまで、事前に設計することは稀で、クロス、フローリングなど、一般的な仕上げで想定しておき、施工の段階で施主に仕上材のサンプル帳を見てもらい、決定することになる場合が多いでしょう。
建築設計事務所の場合
設計が専門ですから、インテリアの雰囲気をスケッチ、もしくはCGで見せながら、部屋の形状や仕上材をいろいろ提案してくれます。
また、造り付けの家具などは使い勝手も考えて提案してくれることでしょう。
仕上材や造り付け家具などの材質、色、そしてアルミサッシの形状、入口ドアのデザイン、設置する置き家具のイメージ、照明器具など、総合的な見地からより良いインテリアとなるように考えてくれると思います。
設備を決める
最後に決めるのは設備ですね。
設備には、電気を扱う「電気設備」とガスとか給水・排水を扱う「給排水衛生設備」、空調と換気を扱う「空調・換気設備」の3つがあります。
ここで、主に施主さんが決めるのは、下記のとおりです。
- 「電気設備」・・・照明器具の種類、コンセント・TV・インターホン・LANの設置位置
- 「給排水衛生設備」・・・便器、洗面台などの衛生陶器の種類
- 「空調・換気設備」・・・エアコンを本工事とするか、別途工事とするか、本工事とする場合は個別空調とするか、全館空調とするかの方針
- その他・・・システムキッチン、ユニットバス
これらも各々見ていきましょう。
大手ハウスメーカーの場合
大手ハウスメーカーの場合は、照明器具、衛生陶器、システムキッチン、ユニットバスなどのほとんどが、あらかじめカタログとしてまとめられています。
施主はその中から、自分の好きなものを選んでいけば良いわけです。
また、ハウスメーカーのショールームで実際に見て選ぶことも可能だと思います。
その他のコンセント、TV,インターホン、LANなどの設置位置も、設計者あるいは営業担当がアドバイスしながら決めてくれることでしょう。
エアコンは安く済ませたい場合などは、別途工事として、引き渡し後に施主さんが、家電量販店にて設置するケースが多いと思います。
ハウスメーカーによっては全館空調を売りにしている場合などがありますが、メリットがありそうだと判断された場合は、それを採用してみるのもいいと思います。
地元工務店の場合
インテリアの場合と同様、一般的な仕様で想定しておき、施工の段階でメーカーのショールームもしくはカタログで決定するケースが多いかと思います。
あるいは、下請けの電気業者、設備業者さんに依頼して照明器具、衛生陶器の写真を貼ったわかりやすい資料を作ってくれる場合もあります。
エアコンについては、設置したい部屋の希望を聞いて、一般的な仕様で想定されると思います。
建築設計事務所の場合
設計事務所の場合は、照明器具、衛生陶器、システムキッチン、ユニットバスなどは、設計者が予算を勘案しながら、選択して、わかりやすく説明してくれると思います。
場合によってはメーカーのショールームに同行して、検討してくれるでしょう。
コンセント、TV、インターホン、LANなども設計者の方で、家具のレイアウトも想定しながら、決定します。
エアコンについては、適切な能力のものを、見栄えも考えて設定します。
省エネ設備について
昨今、省エネについて関心が高くなっています。
建物本体では断熱仕様、設備機器では高効率な給湯器(エコジョーズ、エコキュート)、エネファーム、換気設備では全熱交換器(ロスナイ)、自然エネルギー利用など様々な機器が開発されています。
また、エアコンの能力については、断熱の仕様によっては、カタログ通りの能力では過大設備になってしまいます。
こうしたことを踏まえて、特に省エネで設計したい場合は、設計者にその旨を伝えて、よく検討してもらい設計に反映してもらうのがいいでしょう。
僕のコラムでもそのあたりを考察しています。
まとめ(図面化)
ここまで平面、外観、インテリア、設備について検討してきたことを図面にまとめる必要があります。
ここでも大手ハウスメーカ、地元工務店、建築設計事務所でまとめ方が異なってきます。
順番に見ていきましょう。
大手ハウスメーカーの場合
大手ハウスメーカーでは、図面としては配置図、平面図、立面図が中心で、この図面にあらゆる情報を網羅します。
特に平面図には照明器具、造付け家具、建具、コンセント、スイッチ、TV,物干し金具、換気扇などの位置、仕様、配線などが書かれています。
さらに細かい仕様は10枚以上にもなる仕様書という文字ばかりの図面にまとめられています。
そして建具、造り付け家具、押し入れなどの造り方は、それらの標準的な造り方を示した記号化された図面によって指示され、建物全体が把握できるように要領よくまとめられています。
但し、これらの図面は施工者が施工するために必要な情報をまとめたもので、施主さんが見ても絵として理解することができません。
そのため、図面の内容が打ち合わせ通りになっているかどうかを確認したくても、わかりにくいのが難点です。
僕のコラムで「設計図って何が書いてあるの?」に図面のことを書きましたが、これらの図面は基本的に、見えるままの姿を絵に書いて、そこに寸法とか仕上げが書いてあるので、図面をよく見れば素人の方でもなんとなくわかると思います。
そのような意味で、図面の枚数、図面構成などは全く違います。
地元工務店の場合
地元工務店の場合は、木造であれば基本的に確認申請に必要な図面(仕上表、平面図、断面図、立面図)と「矩形図」という建物を垂直に切断して、その仕組みを細かく書いた図面が1枚程度あれば造ってしまうと思います。
あとの細かな仕組みは大工さんのあたまの中にあります。
仕上げなどは、施工しながら順次打ち合わせして決定していくことになります。
しかし、工務店の中でも、きちっと図面を書いてから造っていくという考えの会社の場合は、平面のさらに細かい図面である「平面詳細図」、部屋の壁がどうなっているかを示す「展開図」なども書いてしっかり施工してくれることでしょう。
建築設計事務所の場合
設計が本職ですから、施主さんと細かな打ち合わせをした内容をを全て網羅した図面を事細かに図面化します。
「設計図って何が書いてあるの?」に書いたような図面を全て書き、枚数は数十枚になります。
こんなにも図面を書く理由は、施主さんが思い描いた理想の家を、誰が作ってもその思いがキチッと反映された家ができるようにするためですね。
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