37:耐震補強は重要(平成12年以前、特に昭和56年以前の住宅は要注意!何が問題か)

2024年8月12日

気象庁HPより

 

ここ数年、地震がいたるところで発生しています。

 

大地震を振り返ってみると、

 

1995年:阪神淡路大震災

2004年:新潟県中越地震

2011年:東日本大震災

2016年:熊本地震

2018年:北海道地震

2018年:大阪北部地震

2019年:新潟山形地震

2024年能登半島地震

 

そしてつい先日日向灘地震が起きました。

 

特に日向灘地震では、南海トラフ地震の発生確率が数倍上がったと報道され、驚いたところです。

 

そして、地震が起きるたびに心をいためるのが、木造家屋の倒壊です。

 

平成12年以前、特に昭和56年(1981年)以前に着工した住宅は、耐震基準が緩かったため倒壊する確率がとても高いのです。

 

今回は、この時期に建てられた木造住宅の何が耐震上問題なのかについてのお話です。

 

 

■耐震補強は重要(平成12年以前、特に昭和56年以前の住宅は要注意!何が問題か)

 

 耐震基準の変遷 

 

建築基準法の構造規定は1950年(昭和25年)に制定され、その後何回かの大改正が行われています。

 

明治・大正:構造規定は特になし。

 

1950年(昭和25年):初めて構造規定が制定され、地震に抵抗する耐力壁の必要量が規定された。

 

1981年(昭和56年)6月:新耐震基準施行により、必要な耐力壁の量、・耐力壁の倍率が見直され、耐震性が大きく向上した

 

2000年(平成12年)6月:柱頭柱脚・筋交いの接合部、耐力壁の配置、基礎等、それまでに施工者にゆだねられていた具体的な仕様が明確に規定された。

 

1981年5月以前がを旧耐震基準といい、1981年6月以降を新耐震基準といいます。

 

「新耐震基準」といっても43年も前の基準なんですけどね。

 

 

 

 耐震基準の違いによる被害の実態調査 

 

 

ここで熊本地震の被害状況の報告書を見てみましょう

 

 

くまもと型住宅生産者連合会報告書より

 

 

これを見ると、旧耐震基準の木造住宅は「倒壊」「全壊」が45.7%を占め、約半数にも及びます。

 

また、1981年の6月~2000年5月までの新耐震基準の木造住宅においても「倒壊」「全壊」が18.4%であり、約2割という結果です。

 

一方、2000年6月以降の住宅では6%まで減っています。

 

さらに2000年6月以降で、耐震等級3の木造住宅にあっては0%という結果です。

 

この結果を見ても、2000年(平成12年)5月以前、特に1981年(昭和56年)5月以前の木造住宅は、命を守るために耐震補強をしたほうがよいのではないかと思われます。

註)以降「木造住宅」を「建物」と表記します

 

 

 

 旧耐震基準の建物はどこが問題か 

 

 

旧耐震基準では、初めて構造規定が制定され、地震に抵抗する耐力壁の必要量が規定されたとご説明しましたが、耐震的にはこれだけでは全く不十分で、2000年6月以降の基準と比較してみます。

 

耐震基準を考えるうえで重要な要素が、「耐力壁の基準」・「耐力壁配置の基準」・「軸組接合部の基準」・「床・屋根の強度の基準」・「基礎の基準」の5つあります。

 

下の比較表は、これらの要素が建築基準法でどのように規定されたかをまとめた表です。

 

 

 

木造住宅の耐震補強の実務より掲載

 

 

上表で分かる通り、旧耐震基準である1981年(昭和56年)5月以前の建物には、耐力壁の必要量は示されたものの、どの要素も水準が低いか、明確な規定がないため、耐震的に非常に弱い建物であるといえます。

 

また、新耐震基準にしても1981年(昭和56年)6月~2000年(平成12年)5月までの建物は、耐力壁の基準が明確にされましたが、その他は明確な規定がありません。

 

そして2000年(平成12年)6月以降に、ようやく「床・屋根の強度」の基準を除く他の項目に明確な基準が定められました。

 

この表からわかるのは、旧耐震基準の建物が耐震不足なのはいうまでもなく、新耐震基準であっても、2000年(平成12年)5月以前の建物は、耐力壁の配置や接合方法など耐力壁が有効に働くための規定がなかったため、壁量を満足していても、ほとんどの建物が耐震強度不足になっていると考えられます。

 

2000年6月以降の建物は、耐力壁の基準が明確で、その耐力壁がバランスよく配置されているかもチェックでき、柱や梁、筋交いなどの接合部にはそこにかかる力に見合った補強金物が明確に規定され、基礎についても配筋の規定が明確化されました。

 

そのため、先ほどの熊本地震の被害状況の報告書からのわかるように、2000年6月以降の建物の被害状況は極めて少なくなっているわけです。

 

また、耐震等級3の建物は被害がありませんでしたが、この耐震等級3とは、建築基準法とは別の品確によって定められた基準で、ここでは「床・屋根の強度」の基準も明確化され、より耐震強度が増す考え方をしています。

 

いかがでしょうか。

 

このような耐震基準の変遷があるわけですが、2000年(平成12年)5月以前の建物にお住まいのかたには、まず、耐震診断をされることをお勧めします。

 

名古屋市でもそうですが、この耐震診断は無料でできます。

 

そして耐震診断をして、もし、その評価が「1.0未満」であった場合は、耐震補強設計、補強工事へと進めていかれるのがよいかと思います。

 

 

 まとめ 

 

 

耐震基準は大きく分けて、「旧耐震基準」と「新耐震基準」の2つがあります。

 

この基準は建物の着工時期で明確に判断できます。

 

1981年(昭和56年)5月以前:旧耐震基準

1981年(昭和56年)6月以降:新耐震基準

 

さらに新耐震基準は、1981年(昭和56年)6月~2000年(平成12年)5月までと、2000年(平成12年)6月~に分かれます。

 

耐震基準の要素には、「耐力壁の基準」・「耐力壁配置の基準」・「軸組接合部の基準」・「床・屋根の強度の基準」・「基礎の基準」の5項目あります。

 

この5項目のうち、「床・屋根の強度の基準」をのぞく4項目が明確に規定されたのが2000年(平成12年)6月ですので、それ以前に建てられた建物は耐震強度不足になっていると考えられます。

 

1981年(昭和56年)5月以前の旧耐震基準の建物はいうまでもなく、新耐震基準の建物でも、2000年(平成12年)5月以前の建物は、強度不足の恐れがありますので、耐震診断をされることをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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