2階が暑い原因とその対策|夏でも快適に過ごせる注文住宅の設計ポイント

「夏になると、2階がとにかく暑くて寝苦しい…」
「冷房をつけても2階はなかなか涼しくならない…」
そんな経験、ありませんか?
戸建てにお住まいの方や、これから家を建てようと考えている方の中には、こうした“2階の暑さ問題”に悩まされている、あるいは不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、夏に2階が暑くなるのは構造的な理由があり、きちんと対策しないと毎年のように悩まされてしまいます。でも逆にいえば、設計段階で工夫をすれば、暑さを防ぐことは十分可能なんです。
この記事では、
- なぜ2階が暑くなるのか?
- どうすればその暑さを防げるのか?
- 注文住宅だからこそできる具体的な対策は?
といった点をわかりやすく解説していきます。
なぜ夏の2階は暑くなるのか?主な原因を解説
夏の戸建て住宅でよくあるお悩みのひとつが「2階の暑さ」です。
1階はそれほどでもないのに、2階に上がった途端、もわっとした熱気に包まれるような感じ…。
実はこれ、構造的な理由がいくつか重なって起こっているんです。順番に見ていきましょう。
屋根からの熱の影響(輻射熱・断熱不足)
夏の昼間、屋根の表面は直射日光を浴びて60〜70℃以上にもなることがあります。
この強烈な熱は、屋根の下にある屋根裏(小屋裏)を通じて天井面に伝わり、最終的には2階の室内までじわじわと侵入してきます。
このとき、屋根の断熱がしっかりしていないと、まるでフタのない鍋を火にかけているような状態になってしまいます。
断熱性能の弱い断熱材だったり、そもそもの厚みが不足していると、屋根からの熱がダイレクトに室内に届いてしまい、2階が猛烈に暑くなるわけです。
上昇した暖かい空気がこもりやすい
もうひとつの大きな理由が、「暖かい空気は上にのぼる」という自然現象です。
室内で発生した熱や、窓から入った日射のエネルギーなどで温められた空気は、どんどん上昇していきます。そして最終的に2階にたまり、逃げ場を失ってしまうんです。
特に、
- 1階と2階で冷房の効きが違う
- 吹き抜けがあるのに空調の工夫がされていない
- 気密性が低くて空気がうまく循環しない
といった条件がそろうと、2階だけがサウナのように暑くなるなんてこともあります。
風通し・通気の悪さ
2階の暑さは「熱のこもりやすさ」にも大きく関係しています。
たとえば、2階にある部屋に対面する窓がない、あるいは隣の家が近すぎて風が入りにくいという場合、室内の熱気が外に出ていきません。
注文住宅でも通風計画が甘いと、「開けても風が抜けない窓」になってしまうこともあります。
また、屋根裏や天井裏に熱がこもると、その影響が室内にまで及ぶこともあるので、屋根の通気(棟換気や軒裏換気)が不十分なケースでは、熱が溜まりやすくなります。
西日や日射取得の設計ミス
午後になるとぐんと日差しが強くなる「西日」。この西側に大きな窓があると、夕方から夜にかけても部屋の温度が下がらない原因になります。
本来であれば、西側の窓はコンパクトにしたり、外付けブラインドなどで日射を遮るのが理想です。
でも、それがされていないと、室内にジリジリと太陽の熱が入り込み、壁や床を暖めてしまうんですね。
最近は「日射を取り入れるパッシブデザイン」が注目されていますが、取り入れ方を間違えると逆効果になることも。季節ごとの日差しの角度まで考えた設計が大切です。
このように、夏の2階が暑くなる理由には、
- 屋根からの熱
- 空気の性質(上昇)
- 通気不足
- 日射遮蔽の設計ミス
など、いくつかの原因が重なっていることが多いです。
でも逆にいえば、これらのポイントをしっかりおさえた設計にすることで、「2階は暑いもの」という常識をくつがえす、快適な家づくりができます。
次の章では、そうした暑さを防ぐための「設計の工夫」について、具体的にご紹介していきます。
設計でできる暑さ対策とは?効果的なポイント5つ
「2階って、どうしても暑くなるものでしょ?」と思っている方もいるかもしれません。
でも実は、注文住宅なら設計の工夫次第でその“暑さ”を変えることができます。
ここでは、暑さを感じにくい2階にするために特に効果的な設計ポイントを5つご紹介します。
これから家を建てる方も、今の家を見直したい方も、ぜひ参考にしてみてください。
1. 高性能な断熱・遮熱材を屋根・天井に使用する
まず大前提として大切なのが、「屋根からの熱を遮ること」です。
屋根の断熱が甘いと、2階は日差しに直撃されているような暑さになってしまいます。
そこで効果的なのが、厚みのある高性能断熱材をしっかり入れること。さらに、
- 遮熱タイプの透湿ルーフィング
などを組み合わせることで、屋根の外から入ってくる熱をしっかりブロックできます。
「断熱は冬だけのため」と思いがちですが、夏の暑さにも断熱は超重要なんです。
2. 熱を逃がす「小屋裏換気」や「通気層」を取り入れる
いくら断熱しても、屋根裏に熱がこもっていたら意味がありません。
そこでポイントになるのが「屋根裏の換気」です。
屋根と断熱層の間に通気層(空気が流れるすき間)を設けたり、
- 棟換気口(屋根のてっぺん)
- 軒天換気口(屋根の下)
などから熱い空気を外に逃がすことで、小屋裏の温度がぐんと下がります。
ちょっとしたことに見えますが、これだけでも2階の体感温度にかなり違いが出てくるんですよ。
3. 窓の位置とサイズ、Low-Eガラスなどで日射対策をする
暑さの大きな原因のひとつが「窓から入る日差し」。
窓は光と風を取り入れてくれる一方で、熱も一緒に連れてきてしまうんです。
そこで大切なのが、日差しをコントロールする設計です。
たとえば:
- 南側の窓には庇(ひさし)や軒を出して、夏の高い日差しは遮る
- 西側の窓は小さめにして、外付けブラインドやすだれでガード
- 窓ガラスは遮熱タイプのLow-E複層ガラスを選ぶ
こうした工夫によって、日射をしっかり遮りつつ、明るさや風は取り込める快適な空間がつくれます。
4. 風が通り抜ける間取り・開口の工夫
暑さ対策といえば、「風通し」も忘れてはいけません。
自然の風が通り抜けるだけで、体感温度はぐっと下がります。
そのためには、
- 部屋の対角線上に窓を配置して、風の通り道をつくる
- 引き戸や吹き抜けを活用して、空気の流れを邪魔しない
といった工夫が有効です。
風は目に見えませんが、設計次第で「ちゃんと流れる家」と「空気が滞る家」に分かれてしまいます。
風通しの良い家は、夏だけでなく春や秋も気持ちよく過ごせるメリットがありますよ。
5. 「吹き抜け+高窓」で熱気を抜く設計
暖かい空気は自然と上へ上がる性質があるため、2階や吹き抜け上部に開口部(窓)を設けるだけで、空気の流れが生まれます。
このとき、高い位置の窓を開けておくことで、下から上がってきた熱気が自然に外へと抜けていくんです。
いわゆる“煙突効果(スタック効果)”と呼ばれるもので、窓が開いていれば機械の力に頼らず、自然の力で換気が行われます。
たとえば:
- 吹き抜けの上部に高窓を南北方向に配置して、風の通り道をつくる
- 天井の高いリビングのてっぺんに天窓をつけて、上昇した熱気を逃がす
- 寝室からつながる吹き抜けを設けて、夜間も熱を排出しやすくする
といった工夫ができます。
既存の家でできる暑さ対策(リフォーム・応急処置)
「もう家は建てちゃったから、暑さはあきらめるしかない…」
そんなふうに感じている方、ちょっと待ってください!
たしかに、注文住宅のように最初から設計で対策することは難しいかもしれません。でも、今の家でもできる工夫やリフォームで、2階の暑さを和らげることは十分可能です。
ここでは、比較的手軽に取り入れやすい対策を中心にご紹介します。
◆ 天井からの熱をブロック!天井裏に断熱材を追加する
2階が暑くなる原因の多くは、屋根からの熱がじわじわと室内に入り込んでくること。
その侵入ルートのひとつである「天井面」に断熱材を追加することで、暑さを和らげるだけでなく、住まいの快適性そのものがぐんと高まります。
リフォームとしては費用も抑えやすく、効果はしっかり感じられる。
暑さ対策で悩んでいる方には、ぜひ検討していただきたい方法のひとつです。
特に屋根面からは強烈な熱が侵入してきますから、天井面に追加する断熱材は厚みを熱くする必要があります。この暑さは計算で出ますので、専門家に依頼して断熱計画をしてもらうことが良いと思います。
◆ 窓からの熱をブロック!すだれ・外付けブラインドで日射遮蔽
実は、室内に入ってくる熱のうち、約7割が窓からの直射日光だと言われています。
ということは、「窓からの熱を防ぐ」だけで、かなり暑さを抑えられるんです。
おすすめなのが、外側から日射を遮る方法。
たとえば:
- すだれやよしずを窓の外に掛ける
- 外付けのブラインドやシェードを取り付ける
- ベランダの上にオーニング(日除けテント)を設置する
などがあります。
「室内のカーテンだけじゃダメなの?」と思うかもしれませんが、熱はガラスを通る時点で室内に入ってしまうため、外側で遮る方がずっと効果的です。
見た目も涼しげになりますし、省エネにもつながるので一石二鳥ですよ。
◆ 内窓(二重窓)を設置して断熱・遮熱性能をアップ
「日差しが強い日は、2階の窓辺がジリジリ暑くて…」
そんなお悩みに効果的なのが、既存の窓の内側にもう一枚窓を取り付ける“内窓(二重窓)”の設置です。
いわゆる「二重サッシ」のような構造にすることで、暑さの侵入をぐっと抑え、室内の温度上昇を防ぐことができます。
夏の熱気は、主に窓ガラスとサッシから入ってきます。
特に2階は屋根からの輻射熱に加えて、窓からの日射熱の影響も大きいため、遮熱対策が重要です。
ガラスについては、遮熱タイプのLow-Eガラスにします。
このようにして内窓を取り付けると、
- 外側の窓と内側の窓の間に空気層(断熱層)が生まれる
- 外気温の影響が室内に伝わりにくくなる
- 窓のすき間から入る熱風や湿気もカットできる
といった効果が得られ、2階の体感温度が大きく変わってくるんです。
今ある家でもできることはたくさんある!
家を建てたあとでも、「暑い2階」を少しでも快適に変えるための工夫はたくさんあります。
- 屋根からの熱を防ぐ → 天井面に断熱材を敷き込む
- 窓からの日差しをカット → すだれや外付けブラインド
- 窓からの熱の侵入を防ぐ→ Low-Eガラスの内窓を設置する
どれも比較的手軽に取り入れられる対策なので、まずはできるところから試してみるのがおすすめです。
もしそれでも「なかなか涼しくならない…」という場合は、小規模な断熱リフォームや空調計画の見直しを検討するのもひとつの手。
専門家に相談すれば、お住まいに合わせた具体的な改善方法を提案してもらえるはずです。
まとめ|夏でも快適な2階をつくるために大切なこと
夏に2階が暑くなる理由はひとつではありません。
屋根からの強い輻射熱、室内の熱がこもる構造、風の通らない間取り、窓からの直射日光…。
こうしたさまざまな原因が重なって、2階が蒸し風呂のように暑くなる家が生まれてしまいます。
ですが、注文住宅であれば、そうした問題に最初から備えることができるのが大きなメリットです。
具体的には、
- 屋根や天井に高性能な断熱・遮熱材を使い、熱を室内に入れないこと
- 熱がこもらず、風がスムーズに流れるような間取り・通気計画を立てること
- 窓の向きや大きさ、庇の出し方を工夫して、夏の日射を上手に遮ること
- 2階までしっかり冷気が届く冷暖房計画を組み、快適な温度を保つこと
これらを部分的にではなく、トータルで設計することが大切です。
こうした工夫は、夏だけでなく冬の暖かさや、冷暖房にかかる光熱費の削減にもつながります。つまり、「夏も冬も快適で、省エネ性にも優れた家」になるわけです。
せっかく注文住宅を建てるなら、毎年のように「2階が暑い…」と悩むのではなく、
季節を問わず家中が快適で、心地よく過ごせる空間にしたいですよね。
断熱・通気・冷暖房、それぞれの性能と設計をバランスよく整えることで、無理なく快適な住まいをつくることが可能です。
「どうすれば、うちの家族にとってベストな暑さ対策ができるだろう?」
そんなふうに思ったら、ぜひお気軽にご相談ください。
快適さと性能の両立を目指した家づくりを、わたしたちが一緒にお手伝いします。
「2階が暑くならない家にしたい」
「断熱や通風って、うちの敷地条件でもできるのかな?」
「冷暖房計画も含めてバランスよく設計したい」
そんなふうに感じたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
足立和太建築設計室では、「夏涼しく冬暖かい」性能と快適性を両立した家づくりを得意としています。
土地の条件やご家族のライフスタイルに合わせて、暑さ対策も含めた最適なプランをご提案いたします。
ちょっとしたご質問や、相談だけでももちろん大歓迎です。
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