注文住宅で快適な家を建てるなら?夏涼しく冬暖かい家にする5つの工夫

「せっかく注文住宅を建てるなら、夏は涼しく、冬はあたたかく暮らしたい」
――これは、家づくりを考えるほとんどの人が思うことではないでしょうか。

真夏の寝苦しい夜、どれだけエアコンをつけても暑さが取れない。
冬の朝、布団から出るのがつらくなるほど家の中が冷えきっている。
そんな日々をできるだけ避けたいと思って、注文住宅に望む「快適さ」への期待が高まってきます。

でも実は、「夏涼しく冬暖かい家」をつくるには、ちょっとしたアイデアや設備の選び方だけでは足りません。
断熱材や窓の性能、気密のとり方、日差しのコントロールなど、設計の段階からしっかり考えておくことがとても大切なんです。

この記事では、快適な住まいを叶えるために押さえておきたい、
夏も冬も心地よく過ごせる家にする5つの工夫」をご紹介します。

「性能の高い家ってどんなもの?」
「断熱って聞くけど、何をどうすればいいの?」
という方にもわかりやすく、設計の考え方をひとつずつ丁寧にお伝えします。

これから家づくりを始めようとしている方や、建てる前にできるだけ失敗を減らしたい方に、
きっと役立つ内容です。

目次

なぜ「夏涼しく冬暖かい家」が求められているのか

日本の気候と住宅性能の関係

日本の気候って、本当にバラエティ豊かですよね。
北海道のように冬が長くて寒さが厳しい地域もあれば、沖縄のように一年中暖かいところもあります。とはいえ、多くの地域では夏は蒸し暑く、冬は底冷えするような寒さを感じるのが現実です。

たとえば、愛知・東京・大阪といった都市部でも、真夏は35℃を超える猛暑日が続き、冬は氷点下近くまで冷え込むこともあります。
つまり、日本で暮らす私たちは一年の中でかなりの温度差にさらされながら生活しているんです。

そんな環境の中で、昔ながらの「夏向きの家」や「冬向きの家」だけでは対応しきれません。これからの家には、一年を通じて快適に過ごせる性能が求められていると思います。

それを叶えるカギとなるのが、「断熱」「気密」「通風」「日射の調整」といった住宅の設計や性能に関わる要素
このあたりをきちんと考えておくことで、冷暖房に頼りすぎず、自然な快適さをつくり出すことができます。


快適さだけじゃない?光熱費や健康への影響

「夏は暑いもの、冬は寒いもの」と、少し我慢しながら暮らしている方もいるかもしれません。
でも、その我慢、実はお金や健康にまで影響しているんです。

まずは光熱費の問題。
断熱や気密がしっかりしていない家では、夏はエアコンが効きにくく、冬は暖房をつけても部屋がすぐ冷えてしまいます。
結果的に、冷暖房にかかる電気代がどんどん上がってしまうことに。

さらに見逃せないのが健康面への影響。
冬場、暖かいリビングから寒い脱衣所やトイレに移動したとき、急激な温度差によって血圧が急上昇・急降下する「ヒートショック」のリスクが高まります。
これは特に高齢の方にとって命に関わることもある、深刻な問題です。
逆に、夏の高温多湿な室内環境では、熱中症や不快な睡眠障害なども起こりやすくなります。

そしてもう一つ、見落としがちな視点が「環境への影響」。
エネルギーをたくさん使って冷暖房をまかなう家は、CO₂排出量が多くなり、地球温暖化にもつながってしまうんです。

つまり、「夏涼しく冬暖かい家」は、単に気持ちよく過ごせるだけではなく、
光熱費の削減、家族の健康維持、そして環境へのやさしさといった、暮らしのあらゆる面でプラスになる存在だということなんですね。

これらをしっかり理解しておくことで、「どうして今、高性能な家が注目されているのか」がきっと見えてくるはずです。

夏涼しく冬暖かい家にするための5つの設計ポイント

① 断熱性能を高める(UA値を意識した設計)

「断熱」と聞くと、「ああ、なんとなく家の“あたたかさ”に関係するやつでしょ?」と思う方も多いかもしれません。でも実は、断熱性能こそ、家の快適さのベースになるとても重要なポイントなんです。

断熱とは、外の暑さや寒さを家の中に伝えにくくする性能のこと。
これがしっかりしていると、夏は外の熱が入りにくく、冬は室内の熱が逃げにくいので、エアコンを使ってもすぐ効く・長持ちするという効果が期待できます。

この断熱性能は「UA値(ユーエーち)」という数値で評価されていて、数値が低いほど優れた断熱性を持っているということになります。
たとえば、「UA値0.46以下」は、HEAT20(ヒート20)という高断熱住宅の基準のひとつ。快適さと省エネを両立した住宅を目指すなら、この数値を参考にしてみるといいでしょう。

壁・屋根・床・窓など、家の外側をぐるっと囲む部分(これを「外皮」と呼びます)にどんな断熱材を使うか、厚みはどのくらいにするか、施工の精度はどうか──
こうしたことを設計段階でしっかり決めておくことで、一年中、室内の温度が安定した快適な空間が実現します。


② 気密性能を確保する(C値で確認する)

「断熱をよくすれば、もう安心!」と思いたいところですが、実はそれだけでは不十分なんです。
断熱材がしっかり入っていても、すき間だらけの家では外の空気が出入りし放題。エアコンをかけても効きにくいし、結露の原因にもなってしまいます。

そこで重要になるのが「気密性」です。気密性とは、家の中にどれだけ“すき間”があるかを示す性能で、こちらは「C値(シーち)」という数値で評価されます。
このC値も、数字が小さいほど隙間が少なく、気密性が高いということになります。

気密性を高めると、

  • 冷暖房の効率がアップ
  • 家の中の温度差が少なくなる
  • 結露やカビが発生しにくくなる
  • 換気計画が正しく機能する
    …といった、メリットがたくさんあります

ただし、気密性は図面だけでは決まりません。実際の現場での施工精度が大きく影響します。しっかりと気密測定を行い、信頼できる施工者と連携しながら進めることが、快適な家づくりへの大事なステップになります。


③ 日射遮蔽と日射取得をコントロールする

夏に家の中が暑くなってしまう最大の原因は、「窓からの日差し(=日射熱)」です。
特に南や西側の大きな窓から、午後の強烈な日差しが差し込むと、まるで温室のように室温が上がってしまうこともあります。

これを防ぐのが「日射遮蔽(しゃへい)」という考え方です。
たとえば、

  • 南向きの窓には「庇(ひさし)」をつける
  • 外付けブラインドやシェードを使う
  • 落葉樹を窓の外に植えて、夏は日差しを遮り、冬は取り込む
    といった工夫をすることで、夏の強い日差しをカットしつつ、風通しは確保することができます。

逆に、冬はできるだけ太陽の熱を取り入れて、暖房に頼らずに室内をあたためたい。
このとき大切になるのが「日射取得」です。つまり、太陽の恵みを上手に取り込むということ。

こうした季節ごとの日射を上手にコントロールする設計の考え方を、「パッシブ設計」といいます。
最近では、Low-Eガラス(ロウイーガラス)という断熱性と遮熱性を兼ね備えた窓ガラスも普及していて、窓選び一つで夏と冬の快適性がグンとアップしますよ。


④ 通風・換気計画を立てる

夏の夜、「エアコンを切っても涼しい風が通って、なんだか気持ちいい…」そんな体験をしたことはありませんか?
実はこうした自然の風をうまく取り入れる工夫も、快適な家づくりには欠かせない要素なんです。

風は、ただ窓を開ければ入ってくるわけではありません。「どこから風が入り、どこへ抜けるか」をきちんと設計しないと、うまく通ってくれません。
たとえば、

  • 窓を風の流れに対して対角線上に配置する
  • 高低差を利用して風を動かす(上昇気流)
  • 周囲の建物や植栽も考慮して風の流れをつくる
    などの工夫をすることで、自然の力を最大限に活かすことができます。

また、高気密住宅では「計画換気」もとても重要。
とくに第1種換気(熱交換型の換気システム)を導入すると、外気の温度に左右されにくく、一年中きれいな空気と快適な温度を保ちやすくなります


⑤ 窓の配置と性能を見直す

最後のポイントは「窓」。
窓は光や風を取り込む大事な要素ですが、同時に熱の出入りが最も多い“弱点”でもあるんです。

たとえば、南側に大きな窓をつけると冬はポカポカして気持ちがいい反面、夏は日差しが強すぎて暑くなりすぎてしまう。北側に大きな窓をつけると、光は入るけれど熱が逃げやすく、冬に寒く感じる。
つまり、どこにどんな窓をつけるかで、住まいの快適性は大きく変わってくるんです。

基本的には、

  • 北側の窓は小さめに
  • 南側は日射取得を意識して庇とセットで設計
  • 東西は日射が強く入りやすいので、遮蔽も工夫する
    といった考え方が基本になります。

さらに、断熱・遮音に優れた樹脂サッシ+トリプルガラスなどの高性能な窓を使えば、熱の出入りを最小限に抑えつつ、外の騒音もカットできます。

「窓は景色を見るためのもの」という感覚にプラスして、“性能を持った部材”として戦略的に考えることが、これからの家づくりではとても大切になってきます。

さらに詳しくは「夏涼しく冬暖かい家づくり|断熱・気密・日射取得のポイント解説」をご覧ください。

設計段階から気をつけたいこと

「断熱」や「気密」、「窓の配置」など、これまでご紹介した工夫は、どれも快適な家をつくるために欠かせないものですが、じつはこれらは設計段階からどれくらいの断熱性能を持った家にするか、目標を持って計画しないと快適ないい家にはなりません。

たとえば、家の設計ができあがった後に「じゃあ、断熱等級を6にしよう」と考えても、壁や屋根の断熱材の種類、厚さ、そして窓の配置や大きさ、断熱性能がうまく計画されていないと達成できません。
逆に、性能ばかりに目がいってしまって、敷地の条件や家族の暮らし方が考慮されていなければ、快適さの“芯”がぶれてしまうんです。

だからこそ、「夏涼しく冬暖かい家」にしたいなら、家づくりのいちばん最初の段階から、どんな性能の家にするかの目標をもって、全体を見通して設計を進めることがとても大切です。

また、設計で大きく差が出るのが、敷地条件や周囲の環境です。

たとえば、

  • 南側に高い建物が建っていて冬の日当たりが悪い
  • 道路が北側で玄関の位置に制限がある
  • 西からの強い日差しをどう防ぐか
    こうした条件は一つひとつの家で違うので、「○○の工法を入れれば快適になる」という単純な話ではないんですね。

だからこそ大事なのは、「その土地、その家族に合った設計」をすること。
日当たり・風の流れ・近隣の建物や植栽の位置などをしっかり読み取り、性能と間取りを同時に組み立てていくことで、その場所に本当に合致した住まいが生まれます。

そしてもうひとつ。
これらをすべて設計者まかせにするのではなく、「自分たちはどんな暮らしがしたいか」をはっきり伝えることも大切です。たとえば、「朝日で目覚めたい」「洗濯物を室内干ししたい」「寒い脱衣所は嫌だ」など、ちょっとした希望が、設計の工夫につながることも多いんですよ。

性能とデザインを両立するには?

「高性能住宅」と聞くと、なんだか“機械の箱”のような、機能ばかりを重視した家をイメージしてしまうかもしれません。
「断熱性がすごいってことは、窓も小さくて、外観は四角い箱みたいになるのかな…?」
「デザインはあきらめなきゃいけないのかな?」
そんな不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

でも実は、性能とデザインは“両立できる”どころか、むしろおたがいを高め合える関係なんです。

たとえば、夏の強い日差しを遮るために設けた深い軒(ひさし)は、機能性だけでなく日本らしい美しい陰影をつくり出す要素にもなります。
窓の位置やサイズも、単に「開けたいところに開ける」のではなく、断熱や日射取得を計算したうえで美しく配置することで、内外のバランスが取れた上質なデザインになります。

また、内装に自然素材を使うことで、調湿性や蓄熱性といった性能的なメリットを得つつ、あたたかみのある空間演出が可能になります。
たとえば、無垢のフローリングは足触りが心地よく、冬でもヒヤッとしにくいですし、珪藻土の壁や杉板の天井は、空気の質感そのものをやわらかくしてくれます。

こうした「機能性」と「見た目の心地よさ」をトータルで実現するには、やはり設計の段階から“暮らし全体をどう設計するか”を丁寧に考えていくことが大切です。
性能の数字だけで判断せず、どう暮らしたいか・どう感じたいかという感覚的な部分まで共有できるパートナー(設計事務所や建築士)と対話することで、
「高性能で、なおかつ美しい家」は、確実に形にできます。

まとめ|快適な家づくりの第一歩は「設計」で決まる

「夏涼しく冬暖かい家」と聞くと、つい「断熱材を厚くすればいいのかな?」「いい窓を入れれば大丈夫かな?」と思ってしまいがちですが、実際にはひとつの要素だけで快適な家ができるわけではありません

断熱・気密・日射のコントロール・通風・窓の配置や性能――
これらのバランスをうまく整え、家全体の“温熱環境”をトータルで設計していくことがとても大切です。

また、そういった性能面だけでなく、

  • 家の中の温度がどこでも均一で、ヒートショックの心配が少ない
  • 夏も冬も光熱費が抑えられて、家計にやさしい
  • 結露やカビが起きにくく、空気がキレイで健康的
  • 自然の光や風を感じながら、心地よく暮らせる
    こうした“実際の暮らしの質”を大きく左右するのが、設計の力です。

つまり、「夏も冬も快適な家」は、単に過ごしやすいというだけでなく、健康・省エネ・環境配慮のすべてを兼ね備えた“これからの暮らしの理想形”とも言えるのです。

とはいえ、難しい専門用語や数値を前にすると、ちょっと構えてしまう方もいるかもしれません。
大切なのは、「どんな暮らしがしたいか」「どんな空間が心地よいと感じるか」という、あなたの気持ちを設計者にしっかり伝えることです。

そのうえで、性能・デザイン・予算のバランスを一緒に考えてくれるパートナーと出会えれば、
「夏は涼しく、冬はあたたかく」――そんな住まいは、決して夢ではありません。

これから家づくりを始める方は、まずは性能にもきちんと目を向けながら、設計段階でできる工夫をひとつずつ考えていくこと
それが、長く快適に暮らせる住まいへの、最初の一歩になるはずです。

「自分たちに合った快適な家ってどんなだろう?」と思ったら…

ここまで読んでくださって、「うちの場合はどうなるんだろう?」「どこから考え始めたらいいのかな?」と、具体的なイメージが湧いてきた方もいらっしゃるかもしれません。

家づくりには、正解がひとつではありません。
ご家族のライフスタイルやご希望、ご予算、そして土地の条件によって、“快適な住まい”のかたちは変わってきます。

私たち足立和太建築設計室では、「夏涼しく冬暖かい家」をテーマにした住まいづくりを、設計から丁寧にお手伝いしています。
これまで手がけてきた事例も、性能と暮らしやすさを両立させたものばかりです。

「なんとなく家づくりを考え始めたばかり」という方も、
「土地はあるけどどう建てればいいか迷っている」という方も、
まずはお気軽にご相談ください。

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