40:袋入りグラスウール、コスパは良いが、施工は要注意!
パラマウント硝子工業HPより
断熱材で、最も一般的で、最もコスパが良いのがグラスウールです。
特に広く使われているのが、袋入りグラスウールです。
この袋入りグラスウールは袋の片側が防湿ポリエチレンフィルムになっていて、湿気を防ぐ役割をします。
この断熱材は、壁面の中に隙間なくしっかり詰め込み、さらに内部結露防止のため、室内の水蒸気が内壁を通って、外壁側まで侵入しないようにしっかりこのグラスウールの防湿ポリエチレンフィルムでガードしなければなりません。
袋入りグラスウールはこの施工がなかなか難しいのです。
今回は、この袋入りグラスウールのお話です。
目次
■袋入りグラスウール、コスパは良いが、施工は要注意!
袋入りグラスウールとは?
グラスウールとは、珪砂、石灰石、長石、ソーダ灰などの原料を溶かして繊維状にしたものに接着剤を吹き付けて加熱成型したっものです。
グラウウールには透湿性があるために、壁や天井に使った場合は、内側に防湿層が必要になります。
そして、初めから防湿層がついた袋入りのものがあり、これが袋入りグラスウールです。
パラマウント硝子工業HPより
断面形状は下図のようになります。
図にあるように、室内側が防湿ポリエチレンフィルムとなっています。
そして、左右に耳幅30mmとありますが、この位置に間柱があり、タッカーで止めて固定をします。
グラスウールはそのほかに、板状のもの、粒状のもの、袋無しのものなどいろいろあります。
袋入りグラスウールは、正しい施工をすればきちっと断熱もでき、防湿もできます。
次に、袋入りグラスウールの施工で何が問題かを見ていきましょう。
袋入りグラスウールの施工で何が問題か
袋入りグラスウールの施工で問題は、このグラスウールを施工するのが、誰かということです。
発砲ウレタンですとか、セルロースファイバーなどの断熱材は専門業者の施工となり安心できますが、グラスウールはほとんどの場合が大工さんが施工します。
大工さんは、断熱の専門家ではありませんので、よほど意識の高い方、あるいは元請の工務店からしっかり教育を受けている方でない限り、施工に対して不安が残ります。
さらに、断熱した壁には多くの場合、コンセントあるいはスイッチが付きます。
このコンセント、スイッチは電気屋さんが取り付けます。
電気屋さんも大工さんと同様の断熱に対して不安が残ります。
もし、きちっとした施工がされなかった場合には、どんな問題が起きうるかを考えてみましょう。
壁内の断熱材が、きちっと充填されていなければ、「断熱欠損」が起き、期待した断熱効果が発揮できません。
また、さらに怖いのは、防湿層がしっかり形成されていなければ、室内の水蒸気が壁に侵入して、それが外壁まで到達した場合には、条件によっては内部結露が起きます。
その結果、木材の腐れや、カビなど被害が出てしまいます。
正しい施工がいかに重要ということがよくわかります。
それでは、袋入りグラスウールの正しい施工方法と、その注意事項を見てみましょう。
これについては硝子繊維協会の「充填断熱施工マニュアル」からご説明します。
袋入りグラスウールの正しい施工方法
ここでは、すべてをご説明できませんので、壁の施工とコンセント廻り、筋交い廻りを例にしてご説明します。
壁の施工方法
壁の施工については、「充填断熱施工マニュアル」では、下記のように説明されています。
袋入りグラスウールの基本は、防湿フィルムを30mm重ねて、胴縁、梁、床等に止付けていきます。
これがなかなかきれいにできなく、ある現場では下の写真のように、床に対して30mmの重ねが取れていません。
これでは、床面と壁面が防湿シートでしっかり密閉されていませんので湿気が壁内に侵入してしまいます。
コンセント・スイッチ廻りの施工方法
コンセント・スイッチボックス廻りの施工方法は「充填断熱施工マニュアル」では下図のように説明されています。
ちょっとわかりずらいかもしれませんが、コンセントボックスは、ただ取り付けただけでは、壁の防湿性が担保できず、湿気が壁内に入ってしまいます。
これを防ぐにはコンセント廻りの気密性を確保する専用部材でバリアーボックスを使うと良いと思います。
形状は下の写真のようなものです。
日本住環境HPより
このバリアーボックスにコンセントを納め、部材の4周に耳が出ていますが、この耳と防湿シートを気密テープを使ってしっかり密閉するわけです。
正式には、壁の袋入りグラスウールの表面の防湿シートをいったんカットして、コンセントとバリアーボックスを取り付け、コンセントの裏側にもしっかりグラスウールを通し、そのうえで防湿シートをバリアーボックスの大きさに合わせてカットし、バリアーボックスと防湿シートを気密テープで一体化させることでしっかり密閉され、防湿性も確保できます。
多くの現場では、下の写真のように取り付けられているかと思います。
このような施工では、防湿シートが柱にきちっと止付けれれていないため、湿気が壁内に侵入してしまいますし、断熱もコンセントボックスの裏側までしっかり充填されているとは言えません。
日本住環境さんの説明画像でご説明します。
下の画像はバリアーボックスの施工前と施工後です。
施工手順は次のようになります。
筋交い廻りの施工方法
次に筋交いですが、筋交いとは柱と柱の間に斜めにかかる部材で、耐震上重要な働きをします。
ただ、断熱材を充填する場合は注意が必要です。
この筋交いもコンセント時と同様に、筋交いの裏側にしっかりと断熱材を充填し、かつ防湿シートで密閉しなければなりません。
その手順が「充填断熱施工マニュアル」にあります。
いかがでしたでしょうか。
袋入りグラスウールの正しい施工方法についてみてきましたが、非常に手間がかかる仕事です。
しかし、ご説明したように手間をかけて施工しない限り、断熱性も防湿性も確保できません。
このように正しい施工をされている工務店さんというのは、会社の方針として、高気密、高断熱を重視されているか、高品質の住宅を提供するのだという使命感のある会社だと思います。
建築の難しいところは、素人である施主さんには、施工している工務店さんの技術力がどれくらいのレベルなのかがわからず、お任せするしかないところだと思います。
今の時代、ホームページなどで調べて、設計施工で建築をお願いをするなら、技術力のしっかりした会社を選ぶか、信頼できる設計事務所に設計監理を依頼し、しっかり技術的な監理をしてもらうかが大切だと思います。
さて、袋入りぐグラスウールの施工が難しいとわかったところで、どうしたらよいでしょうか。
次に、私の個人的な見解として、お勧めな施工について考えてみます。
グラスウール、お勧めな施工方法は?
私の考えとしては、袋入りグラスウールでも、きちっとした施工ができるのであれば、全く問題ないと思いますが、工事の大前提として、難しい仕事を施工者にさせないというのが一番良い方法だと思います。
袋入りグラスウールで難しいのは、湿気の侵入を防ぐための防湿シートがグラスウールと一体のため、シートをはがしたり、もとに戻したり、扱いがとても煩雑で、一つの壁面として防湿性を確保するのはなかなか大変です。
さらに厄介なおが、コンセント・スイッチ廻りです。
とにかく、防湿シートを切ったり、貼ったりが大変なんですね。
そこで、お勧めは、袋入りグラスウールを使うのではなく、袋無しの裸のグラスウールを使い、防湿性は別に防湿気密シートを張り込む方法です。
裸のグラスウールは下の画像のようなものです。
パラマウント硝子工業HPより
施工するとこんな感じです
さらに防湿気密シートを施工すると
こんな感じです。
裸のグラウウールは施工性もよく、防湿シートも定尺のシートを重ねて張っていきますので、面として防湿気密性が確保しやすいです。
ただ、コンセントやスイッチなどの施工は普通であれば、袋入りグラスウールと同様に、この防湿シートを破って、バリヤーボックスを取り付けて気密テープで密閉する方法となります。
しかし、それでは、工務店に難しい仕事をさせることになってしまいます。
とにかく気密シートをカットしたり貼り付けたりすることを避けたいのです。
そのためには、裸のグラウウールの内側に張った防湿気密シートのさらに内側に30もしくは45ほどの木製の胴縁といわれる桟を打ちつけ、その上にボードを張ります。
そうすると、防湿シートと仕上げボードとの間に胴縁(桟)の分だけ隙間ができます。
この隙間を利用して、配線をしたり、コンセントを付けたりすればよいのです。
こうすればグラウウールや防湿シートを傷めることなく工事ができます。
問題点は、胴縁(桟)の分だけ、室内が狭くなってしまいますが、断熱性、防湿性が確保できますので、良しとしてもよいのではないでしょうか。
まとめ
断熱材で最も一般的でコスパが良いのが袋入りグラスウールです。
この袋入りグラウウールの働きは、断熱性の確保と内部結露を防ぐための防湿性の確保です。
しかし、この袋入りグラスウールは施工上注意を要します。
きちっとした施工をしない限り、上記の性能を発揮できません。
施工上、最も注意すべきことは、断熱欠損が起きないように、しっかり充填し、さらに袋入りグラスウールの表面の防湿ポリエチレンフィルを使って、しっかり防湿層を形成することです。
そのためには、壁面では上下左右に30mmの袋の耳を使って固定し、コンセント・スイッチ廻りでは取り付けのために防湿ポリエチレンフィルムをいったんカットし、ボックスの裏までグラスウールをしっかり廻し、さらにバリヤーボックス等を使って、再度気密テープなどで密閉しなければなりません。
また筋交い部分でも、同様に防湿ポリエチレンフィルムをカットして、断熱材を筋交いの裏までしっかり廻し、その上で再度防湿ポリエチレンフィルムを張らなければなりません。
このように防湿ポリエチレンフィルムをカットしたり気密テープで密閉したりの仕事が煩雑で、仕事が難しいわけです。
このようなことを考えたときに、最もお勧めな工法が下記の工法です。
1)グラウウールは袋無しのグラウウールを使う。
2)防湿層は、別途防湿気密シートで確保する。
3)配線、コンセント、スイッチなどは、配線用の胴縁を防湿シートの内側に設けて、その隙間を利用して行う。
このように設計上で配慮すれば、工務店に難しい仕事をさせずにしっかりと断熱性、防湿性を確保した工事ができるわけです。
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