53:日射取得!その重要性と冬の暖房費節約
省エネを考えるうえで、日射取得、日射遮蔽は重要な要素です。
原則は、夏は日射を遮り、冬は日射を取り入れることです。
特に冬の日射取得は、太陽のエネルギーというコスト0円の自然エネルギーで、暖房費を節約できるわけですから、とてもありがたいものだといえます。
今回は、この日射取得でどれほどの節約ができるのか、考えてみたいと思います。
■日射取得!その重要性と冬の暖房費節約
暖房に必要なエネルギーの求め方
外気温に比べて室内の温度のほうが高いと、家本体から外へ熱が逃げていきます。
これを熱損失といいます。
註)住宅省エネルギー技術講習テキストより
上図で、屋根、開口部、壁、床から逃げる熱及び換気により失われる熱の合計が熱損失です。
家の断熱性が高ければ、逃げる熱の量が少なくなりますから、この熱損失は小さくて済むわけです。
温度差が1℃の時、1㎡あたりの床・壁・天井・窓から逃げる熱を熱貫流率(U値)といいます。
このU値にそれぞれの面積をかけると、逃げる熱量(U値 X 面積)が計算されます。
そして、この値に換気で逃げる熱を加えた合計が、内外の温度差が1℃の時に住宅全体から逃げる熱量になり、これを総熱損失係数(Qa)といいます。
家全体の総熱損失は、総熱損失係数(Qa)に内外の温度差をかけると計算できます。
家全体の総熱損失 = 総熱損失係数(Qa) X 温度差
一方で、家には窓があり、さらに人が生活するうえで電気器具やガス器具を使うため、それによっても熱が放出されます。
これらを供給熱といいます。
熱損失と供給熱を比べると、寒い日では損失のほうがずっと大きく、その差が必要な暖房エネルギーとなります。
暖房に必要なエネルギー = 総熱損失(Qa X 温度差)ー供給熱(E)
ここで、供給熱には日射取得による太陽熱も入っていますので、この熱量が大きいほど暖房エネルギーが少なくてすむことがわかります。
それでは、具体的な例で、どれほど暖房エネルギーが削減できるか試算してましょう。
日射取得による暖房エネルギーの削減量
試算する家の条件は次の通りです。
延面積:98㎡
熱損失係数(Q値):1.62
断熱等級6(Ua値):0.44
室内温度:20℃
外気温:4℃
ここで、熱損失係数(Q値)とは、前項で出てきました総熱損失係数(Qa値)を床面積で割った値です。
ということは、熱損失係数(Q値)に「床面積」と「温度差」をかければ、家全体の総熱損失がわかるということになります。
総熱損失 = 熱損失係数(Q値) X 床面積 X 温度差
それでは、この家の総熱損失を計算してみます。
総熱損失 = 1.62(Q値) X 98㎡(床面積) X (20℃ー4℃) = 2540W
この家の総熱損失は2540Wという結果でした。
これはどういうことかといいますと、1時間に2540Wの熱量を投入しないと室温20℃を保てないということです。
さて、ここで家には供給熱というものがありました。
供給熱とは、人間が出す熱や、生活で使った電気、ガスの使用で発生する熱及び窓から入ってくる太陽熱を加えたものです。
総熱損失から供給熱を引いたものがこの家に必要な暖房エネルギーです。
暖房に必要なエネルギー = 総熱損失(Qa X 温度差)ー供給熱(E)
供給熱を詳しく見ていきます。
人間が出す熱や、生活で使った電気、ガスの使用で発生する熱などを内部発熱といいます。
ということは
供給熱 = 内部発熱 + 窓からの太陽熱(日射取得熱)
となります。
一般的に内部発熱は、1㎡あたり約5Wです。
そこで、この家の内部発熱量を計算すると
内部発熱量 = 5W X 98㎡ = 490W
となります。
そうすると、暖房に必要なエネルギーは、2540Wー490w=2050Wとなりました。
さて、ここで本題の日射取得熱が、どれほど暖房に必要なエネルギーを削減してくれるのかの試算に入ります。
条件は次の通りです。
南面の窓の大きさ:幅1.8m、 高さ2m これが2か所あります
窓(Low-E硝子)の日射取得率:0.64
名古屋市の冬場の南面日射量:139W/㎡
窓からの日射取得熱は
日射取得熱 = 139W X 0.64 X (1.8mX2.0m X 2か所) = 640W
となります。
暖房に必要なエネルギーが2050Wでしたから、日射取得熱はその30%を賄うことができることになります。
日射取得による削減率:30%
この数値は窓の大きさが大きくなればさらに高くなります。
この結果から、いかに日射取得熱が暖房に寄与するかが良くわかりました。
省エネ住宅をつくるには、日射取得熱を最大限利用する計画をしたいものです。
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