55:断熱グレードで冷暖房費はどう変わる?

2024年12月16日

最近の猛暑の夏は夜も昼もエアコンなしでは暮らせません。

 

冬は冬でやはり寒いです。

 

日本の住宅は寒いとよく言われます。

 

確かに、30年以上前に建てられた家の多くは、断熱材が申し訳程度に入っているか、あるいは全く入っていません。

 

そのため、とても寒いです。

 

一方、最近の新しい家は、少なくとも国の推奨する省エネ基準(断熱等級4)は満たしているものが多いのではないかと思いますが、寒さはずいぶんと改善されていると思います。

 

 

それでは、夏と冬の冷暖房費は、こうした断熱のグレードによってどれほど違うのか。

 

 

今回は、新住協のQPEXというソフトを使ってシミュレーションしてみたいと思います。

 

 

■断熱グレードで冷暖房費はどう変わる?

 

 

 設定条件 

 

 

S邸(木造・3階建て・面積30坪)をモデルにして、次の3つのケースでシミュレーションしてみます。

 

  1. 断熱無し
  2. 断熱等級4(省エネ基準)
  3. 断熱等級6

 

なお地域は名古屋市の6地域とします。

 

設定条件は

  • 冷房時期は5月中旬から9月末まで、暖房時期は11月中旬から4月中旬まで
  • 設定温度:夏27℃、冬20℃
  • 運転時間:全館連続運転

 

 

 

 シミュレーションの内容 

 

 

今回のシミュレーションの項目は冷暖房費だけでなく、次の項目も行ってみます。

 

  1. 各月の平均外気温にたいして、自然室温の変化
  2. 室温分布イメージ
  3. 冷暖房費(冬季・夏季合計)

 

 

 シミュレーションの結果 

 

 

シミュレーション結果の見方

  • Q値:熱の逃げやすさを床面積あたりで表した指標で、値が小さいほど断熱性が高い
  • UA値:建物の外壁、窓、屋根、床などの外皮部分からどれだけ熱が出入りするかを表し、値が小さいほど断熱性能が高い。
  • ηAc値:冷房期の平均日射熱取得率で、この値が小さいほど住宅内に入る日射が少ない。

 

1)各月の平均外気温と平均室温のグラフの意味

  • 緑色の折れ線グラフ:月別の平均外気温
  • オレンジ色の折れ線グラフ:月別の自然室温で、暖冷房を行わなくても、日射熱や生活熱によって自然に上昇する室温
  • グラフ上、ピンク色のべた塗り部分は暖房の設定温度と室温の差で、この面積が暖房する必要量を示し、水色部分は冷房の必要量をしめす

 

2)室温分布イメージ

  • 冬季室温予測で、6:00~23:00まで暖房し、その後停止したときに外気温がー1.5℃のときの翌朝5:00の各室温予測

 

3)冷暖房費

  • 全館を連続運転で冷暖房したときの年間の冷暖房費

 

 

 

1)無断熱の場合

 

 

省エネ基準の家のUA値は0.87なので、無断熱の家のUA値3.05がいかに大きいかよくわかります。

 

 

 

無断熱の家は冬季には、外気温より平均3℃~4℃程度室内のほうが暖かく、夏季は外気温より平均3.6℃~4℃程度涼しい。

 

 

 

 

  • 左側の家の図は省エネ基準住宅(断熱等級4)の場合の室内温度は前日の23:00に暖房を停止して室温が20℃の時、翌朝5:00に室温が何度になったかを示します。どの部屋も10度以上を保っています。
  • 右の家の図は無断熱の場合を示します。どの部屋も3℃以下で、せっかく暖房しても翌朝にはしっかり冷えてしまい、いかに寒いかがよくわかります。

 

 

 

一般的に家庭の冷暖房費は、電気代の20%」から30%程度ですから、この20万円を超える冷暖房費はいかに高いかがわかります。

もっとも、無断熱の家は、全館冷暖房などはせず、必要な部屋だけを冷暖房しますから、こんな金額にはなりませんが、冷暖房していない廊下、トイレ、洗面脱衣などは非常に寒く、ヒートショックの危険性があります。

 

 

 

2)省エネ基準住宅(断熱等級4)の場合

 

 

 

省エネの基準となる断熱等級4のUa値は0.86です。

 

 

断熱等級4の家は冬季には、外気温より平均4.5℃~5℃程度室内のほうが暖かく、夏季は外気温より平均4.3℃~4.7℃程度涼しい。

 

 

 

 

無断熱に比べるとずいぶんと安くなっています。

 

 

 

 

 

 

 

3)断熱等級6の場合

 

 

 

 

 

断熱等級4の家は冬季には、外気温より平均5.7℃~6.1℃程度室内のほうが暖かく、夏季は外気温より平均5.5℃~5.8℃程度涼しい。

 

 

 

 

省エネ基準住宅よりさらに4割ほど安くなっています。

この金額で、連続運転できるわけですから、水分と快適な生活が送れます。

 

 

 

 

 

前日の23:00に暖房を停止しても、翌朝5:00に外気がー1.5℃でも室内温度が15℃程度を保ってくれるのは大変ありがたいですね。

 

 

 

 

 まとめ 

 

 

今回、無断熱、断熱等級4,断熱等級6の3つのパタンでシミュレーションしました。

 

断熱等級を上げても、自然室温の変化はそれほど大きく差はありませんでした。

 

一方、冷暖房した場合は、断熱等級が高いほど、エアコンを停止しても、室温を保ってくれる割合が高いです。

 

これは断熱によって、家全体が魔法瓶のようになっているため、当然ながら断熱等級が高いほど熱損失が少ないからですね。

 

また、冷暖房を連続運転しても、熱損失が少ないので、断熱等級が高いほど、冷暖房費は低く抑えられます。

 

今後、家をつくるのであれば、やはり断熱等級6は目指したいところです。

 

 

 

 

 

 

 

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