51:怖い内部結露!発生のメカニズムとその対策
日々の生活の中で、結露の問題をよく耳にします。
冬場には窓ガラスやサッシ枠、そして押し入れやクローゼット内などによく結露が発生したりします。
この結露ですが、昔の古い家ではほとんど発生していませんでした。というのも、昔の家は隙間風が入り、断熱材も無く、室温も外気とそれほど差がなかったため、結露の発生要因である「温度差」が無かったためです。
それに対し、現代の住宅はそれなりに断熱材が施工され、窓もアルミサッシになるなどして、断熱化、気密化が進んだ結果、結露という問題が起きるようになってきました。
結露には先ほどのサッシ枠やガラス面に発生するような表面結露と、壁内に発生する内部結露の2つがあります。
特に、内部結露は目に見えないところで発生するため、気づかないでいると家の耐久性にも影響するほど大きな問題になってしまいます。
今回は、この怖い内部結露についてのお話です。
目次
■怖い内部結露!発生のメカニズムとその対策
結露とは
結露の仕組みは、決して難しいものではありません。
私たちの廻りの空気には多かれ少なかれ、水蒸気を含んでいます。
そしてこの空気には面白い性質があり、暖かい空気ほど多くの水蒸気を含むことがき、その量は温度によって決まっているというのです。
もしこの暖かい空気が何らかの要因で、温度が下がった場合はどうなるかというと、温度が低いわけですから、この空気内に含むことのできる水蒸気の量が減りますので、あまった水蒸気は保持しきれなくなり、水という液体の状態に戻ってしまいます。この現象が結露現象なのです。
冬場に、窓ガラスが結露するのは、室内の暖かい空気が、冷たい窓ガラスに触れることによって冷やされ、保持できる水蒸気の量が少なくなった結果、余った分が結露として発生するわけです。
ちょっとここで水蒸気についてご説明します。
水蒸気というと、沸騰したヤカンのくちから噴き出している湯気のようなものと思えてしまいますが、ちょっと違います。
水蒸気とは水が完全に気体になったもので、目には見えません。一方湯気は、水蒸気が冷えて凝結して小さな水滴になったもので、白くもやのように見えます。
水蒸気とは目に見えない気体であることを頭に入れておいてください。
そしてこの水蒸気はほとんどの建築材料を通過してしまいます。直感的に理解しづらいですが、厚いベニヤ板があっても、水蒸気はそこでとどまらず通過してしまう性質があります。
結露を理解するうえで、この水蒸気の性質の理解が大切です。
内部結露の発生メカニズム
1.冬季の結露
内部結露とは、壁の中、床下、屋根裏など家の中からも外からも見えないところに発生する結露のことで、壁内結露という場合もあります。
結露を起こすのは空気中の水蒸気のしわざですが、この水蒸気には次の性質があります。
- 透湿抵抗の高いほうから低いほうへ移動する
- 温度の高いほうから低いほうへ移動する
これらの性質を踏まえて内部結露のメカニズムをご説明します。
一般的な外壁は下図のような仕組みになっています。
柱と柱の間に断熱材が充填され、室内側には石膏ボードが張られて、塗装なりクロスなりの仕上げをします。
一方外部側には、構造用合板といわれる面材を張り、その外に透湿防水シートを張ります。
この透湿防水シートは、水蒸気は通し、水は通さない性質があり、雨水の侵入を防ぎます。
透湿防水シートの外側には通気層という隙間を設けて、熱や水蒸気を排出する役目をします。
(この通気層も内部結露を防ぐ役割をします。)
そして通気層の外に外装材が張られる仕組みとなっています。
さて、結露のメカニズムですが、難しいものではありません。
冬場に暖かい室内の水蒸気は外壁内に侵入し、断熱材を通過して、温度の低い外気側の構造用合板にまで侵入します。
構造用合板は外気に接していますので、侵入してきた水蒸気はここで急激に冷やされ、結露を起こすわけです。
これが内部結露という現象です。
この内部結露を防ぐには、室内からの水蒸気を外壁内に侵入させないようにすればよいわけです。
先ほど、水蒸気はほとんどの建築材料を通過するとご説明しましたが、材料にはどれだけ水蒸気を通過させるかという、透湿抵抗という指標があります。
水蒸気を通さないためには、この透湿抵抗の数値の高い材料を張ればよいことになります。
そこで、下図のように、室内の下地ボード(セっこうボード)の裏に、透湿抵抗の高い防湿シートといわれるポリエチレンフィルムを張ります。
こうすることで、室内の水蒸気が壁内に侵入することを防げますので、内部結露が発生を抑えることができるわけです。
2.夏季の結露
結露というと、どうしても冬季に起きるものと考えがちですが、実は夏季にも起きる可能性があります。
その原因は、水蒸気の侵入を防ぐために設けた防湿シートが、夏季には逆に水蒸気が抜けないために結露を引き起こしてしまうのです。
夏場には、高温多湿な外気が、冷房されている室内側に侵入しようとします。
このとき、室内側には防湿シートが張ってあるため、水蒸気は室内に抜けることができず、そのまま冷えた内壁に接し、壁の中で結露してしまいます。
これを夏型結露といいます。
このように結露とは、なかなか厄介ではありますが、実はこの夏型結露も防ぐ方法もあります。
室内側に張っていた防湿シートを、可変透湿気密シート(調湿シート)という特殊なシートにすれば、夏型結露は防げます。
この可変透湿気密シートとは、簡単にいうと湿気をコントロールする「湿気の調整役」といえます。
冬は通常の防湿シートのように湿気を通さず、夏は壁体内が高温多湿になり結露が発生しそうになると湿気を通し、通年を通して壁体内を良好に保つように機能するシートです。
その仕組みは下図のとおりです。(VCLスマートが調湿シートです)
註)デュポンHPより
内部結露のもつ危険性
内部結露には次のような危険視が潜んでいます。
- 内部結露により、カビが発生しやすくなり、カビが増殖することでカビを餌にするダニも発生します。このダニは様々なアレルギーを引き起こし、暮らす人の健康面に影響を及ぼす危険性があります。
- 結露によって断熱材が水分を含んでしまい、特にグラスウールの場合には、その重さで沈んでしまいます。その結果、断熱性能に重要な空気層がつびれてしまい、著しく断熱性能を低下させてしまいます。
- 結露により構造体の土台、柱などの木材を腐らせてしまい、家の耐久性が低下してしまいます。その結果、耐震性が劣化し地震時の倒壊につながりかねません。
結露には、以上のような危険性があり、特に内部結露は目に見えないところで発生するため、非常に怖いといえます。
また、内部結露を防ぐために室内側に防湿シートや可変透湿シートなどを施工したとしても、隙間なく丁寧な施工をしないとちょっとした隙間から湿気が侵入してしまい、内部結露につながってしまいます。
特にシートの継ぎ目、コンセント、スイッチ廻り、配管廻りの施工が重要です。
内部結露の対策
ここまで、内部結露のメカニズムと危険性についてみてきました。
最後に内部結露を防ぐための対策についてまとめてみます。
4つの対策があります。
すでに「内部結露の発生メカニズム」のところでも触れましたが、
1)室内側に「防湿シート」もしくは「可変透湿シート(調湿シート)」を張り、壁内に水蒸気を侵入させないようにする。さらに隙間をつくらないように、適切な施工を行う。
これがが基本です。
また、次のように施工に注意を要する防湿シートを施工しなくても内部結露を防ぐ方法もあります。
2)透湿抵抗の高い断熱材を使用する
一般的には、防湿シートは以下に示すような透湿抵抗が低い断熱材の場合に必要となります。
- グラスウール
- ロックウール
- 吹付硬質ウレタンフォームのうちA種3のもの
反対に透湿抵抗の高い断熱材を使用すれば、水蒸気の侵入を防げますので防湿シート等は不要とすることができるわけです。
その断熱材は以下の通りです。
- 吹付硬質ウレタンフォーム(A種1、A種2等)
- フェノールフォーム
- 押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
- セルロースファイバー
但し、これらの断熱材を使用しても、どんな場合でも不要というわけではありません。
特に、寒冷地などでは機構条件により、防湿シートが必要になるケースもありますので、基本的には結露計算をして判断するのが良いと思います。
3)室内に入り込んだ湿気を早く排出するために外壁側に通気層を設ける
4)断熱材を隙間なく施工する
以上が内部結露を防ぐための対策です。
最後に、内部結露は怖いというお話をしてきましたが、防湿シートなどの施工で、少しでも隙間があれば即内部結露を起こすというものではありません。
といいますのも、自然環境は結露する条件をいつまでも維持し続けてはいなくて、常に変化しています。
例えば外気が冷たくても、外壁がすぐ外気に順応するわけではありません。また外気のほうも温度が上がったり、湿度なども変化しています。
こうしたことから、内部結露が頻繁に起こるわけではないといえるのです。
しかしながら、内部結露のリスクは常にあるわけですから、その対策はきちっとしておくべきだと思います。
また、夏型結露ですが、実際には晴天時の日中にしか発生しない現象で、この結露水も微量なため、木材が腐朽したという報告はないと、東大の教授が語っておられるようです。
そのため、省エネ基準では夏型結露には、その防止のための特段の規定を設けてないとのことです。
夏型結露に対しては、あまり心配をしなくても良いかもしれませんね。
Categorised in: 建築設計あれこれコラム