48:屋根・外壁・窓 断熱改修するならどこから?

2024年10月26日

日本の家はとても寒いといわれています。

 

今でこそ、断熱等級が話題になり、断熱性能の高い家がつくられるようになりましたが、以前の家は本当に寒いものでした。

 

今でもまだまだたくさんの寒い家があります。

 

寒い家は、ヒートショックの危険性であったり、寒さにストレスを感じたり、いいことは何もありません。

 

そんなお家にお住まいの方が、断熱改修をしたいと考えたとき、限られた予算のなかでどこから手を付けたらよいか、今回はその問題を考えてみたいと思います。

 

 

目次

■屋根・外壁・窓 断熱改修をするならどこから?

 

 

 各部位の熱損失から考える 

 

 

建物は冬場、屋根、外壁など外気に面しているあらゆる部位から熱が逃げていきます。

 

その割合を示したものが下の図です。

 

但し、この図は断熱等級4レベルでの熱損失ですので、条件によって数値は変わりますが、一つの目安にはなります。

 

 

註)住宅省エネルギー技術講習テキストより

 

 

これを見ると開口部、つまり窓からの熱損失が一番大きくなっています。

 

その次に外壁、床、屋根の順番となっています、(今回は建物部位で比較していますので換気は除いて考えます)

 

この結果から、まず改修すべきは窓となります。

 

その次は外壁ですが、外壁の断熱改修は外からやるにしても、内側からやるにしても手間とコストがかなりかかってしまいます。

 

大規模に改修する場合は、外壁の改修をすべきですが、そうでない場合は外壁は改修工事からはずして考えるか、断熱改修する部屋を絞って部分改修として行うのが良いかと思います。

 

そうしますと、次にすべきは床、そして屋根の順番になります。

 

また、屋根も外壁も防湿シートが必要となり、連続させる必要があります。そう考えると屋根の断熱改修は外壁の改修と一体的に考えたほうが良さそうです。

 

断熱改修の順番は、比較的簡単にできる窓と床を行い、予算に応じて、全面改修か、部分改修かの違いは出てきますが、外壁、屋根の順番になりそうです。

 

個別にもう少し詳しくみていきましょう。

 

 

 

 各部の断熱改修方法 

 

 

窓の断熱改修方法

 

コストを抑えて断熱効果を高めるには、既設サッシの内側に樹脂製のインナーサッシを取り付ける方法が一般的です。

 

そうすることで、既設サッシとの間に空気層ができ、断熱効果や遮音効果が生まれます。

 

参考までにLIXILのインプラスの資料を添付します。

 

 

 

硝子表面の温度がずいぶん高くなっていることがわかります。

 

もし、外壁まで改修する場合は、既設サッシを撤去して、新たに樹脂サッシを設置するのが良いでしょう。

 

また、西面、東面、北面に窓が多い場合は、撤去して埋めてしまうことも考えられます。

 

 

 

床の断熱改修方法

 

一般的な住宅の床下は外と全く同じ環境です。

 

土台下の基礎に床下換気口という開口が所々設置され、下図のように空気が流れるようになっているためです。

 

 

 

ということは、1階の床下に断熱材が無いと足元がとても寒いことになります。

 

昔の家は気密性も悪いので、冬場にいくら暖房をしても、暖かい空気は天井面から抜けてしまい、その抜けた分の空気が床下から入ってきます。

 

そのため、いくら暖房をしても足元が寒いのわけですね。

 

床のつくりは下図のように、土台に根太という部材がかかり、その上に床材が張られています。昔の家は気密という考え方がなく、図のように床下から壁に外気と同じ隙間風が侵入する構造となっています。

 

 

 

 

そこで、床の断熱を行う場合はまずこの隙間を埋めて、そのうえで床下に断熱材を入れ込みます。

 

 

 

 

 

隙間を埋める材料を気流止めといい、今回のように既設の床下に行う場合は、施工性を考えると袋入りグラスウールを折り曲げて隙間を埋めるのが良いと思います。

 

この気流止めの効果はかなり大きく、外壁廻りと間仕切り壁廻りを全面的に行うのがよいでしょう。

 

そして、床下の根太間に断熱材入れ込んでいきます。

 

この時の断熱材は、スタイロフォームもしくは発砲ウレタンがよいかと思います。

 

特に発砲ウレタンであれば、細かな隙間を埋めることもできますので、お薦めです。

 

 

 

外壁の断熱改修

 

 

次は外壁の断熱改修です。

 

外壁は一般的には下図のような構造となっています。

 

 

室内側の仕上げ材の下に防湿フィルムを張り、湿気が壁内に入るのを防ぎます。

 

そして、外部側には通気層を設けて、万が一湿気が壁内に侵入しても、この通気層から排出できるようになっています。

 

しかし、古い家は、こうした通気層という工法が一般化する前にできていますので、下図のような構造になっています。

 

 

 

室内側の防湿シートも外部側の通気層もありません。

 

このようなときに外壁の断熱改修には2通りの方法が考えられます。

 

1つは既設外壁を撤去して改修するような場合に採用できる方法で、外張断熱工法です。

 

 

 

図のように壁の外側に断熱材を張り、その外に透湿防水シート、通気層を設けて、外壁を張ります。

 

これはコストはかかりますが、新築と全く変わらない工法です。

 

次に、コストを抑える場合には、既設外壁はそのままとして、内壁をはがし、既設の壁内に断熱材を入れたうえで、防湿シートを張って仕上げ材を張る工法です。

 

 

 

 

いずれにしても、外壁廻りの断熱改修はコストがかかってしまいますので、全面改修ではなく、部分的に居間、食堂など生活の中心になる部屋廻りを断熱改修する方法が良いのではないかと思います。

 

但し、注意点は外部側に通気層がありませんので、万が一壁内に湿気が侵入した場合には、湿気が排出されず外壁側で壁内結露してしまう恐れもあります。

 

これを避けるには、あらかじめ結露計算をして結露しないような断熱材及びその厚みを決める必要があります。

 

 

 

屋根の断熱改修方法

 

 

屋根の断熱方法は、文字通り屋根面に行う屋根断熱と、天井面に行う天井断熱の2通りあります。

 

屋根断熱とは下図のように屋根面のすぐ下に断熱材を張ります。

 

また、湿気が屋根裏に侵入しないように天井面で防湿シートを張り、壁の防湿シートと連続させます。

 

本来であれば、外壁と同様に断熱材の外側に通気層を設けますが、改修の場合は無しでもやむをえないでしょう。(屋根材を撤去して大改修する場合はもちろん可能です)

 

 

 

この工法であれば、屋根裏も断熱されていますので、天井裏を室内的に使用することも可能となります。

 

しかしながら、古い家の改修の場合はそもそも天井裏の気密性が悪いので、気密工事も並行して行わない限り、屋根断熱は有効に働きません。

 

ただ、屋根断熱は、部分的にやることが難しいため全面改修の時に採用し、その折に気密工事までできるのであれば有効な工法となります。

 

この場合も外壁と同様に、屋根面に通気層がありませんので、結露のリスクを避けるため、結露計算をして適切な断熱材と厚みを検討する必要があります。

 

 

次に天井断熱ですが、これは天井のすぐ裏に断熱材を敷き込む方法で、部分断熱でも対応ができます。

 

ここでも天井面に防湿シートを張り、壁面の防湿シートと連続させます。

 

 

 

 

この工法の注意点は、断熱材を載せるだけですから、比較的簡単な工事ですが、天井面の下地やら、ダウンライト等の器具があったりして、なかなか隙間なく敷き込むことが難しい点です。

 

また、間仕切り壁の上部、下部に気流止めを入れることも忘れないようにしなければいけません。

 

丁寧な施工が求められます。

 

 

 

 まとめ 

 

古い木造住宅で断熱改修する場合には断熱効果の高い部分かつコストのかからないところから改修するのが良いでしょう。

 

その順番は以下のようになります。

 

1)窓の断熱改修

 

  • インナーサッシを設けるか、外壁まで改修する場合は樹脂サッシに取り換える。

 

2)床の断熱改修

 

  • 外壁廻り、間仕切り廻りの足元部分の気流止めをする
  • 根太間にスタイロフォームもしくは発砲ウレタンで断熱施工する

 

3)外壁の断熱改修

 

  • 既設外壁を撤去して全面的に改修する場合は、外張断熱工法とする
  • 予算を抑える場合は、部屋を限定して部分改修とし、その場合は既設壁内に断熱材を充填する

 

4)屋根の断熱改修

 

屋根面の断熱改修は、屋根面で断熱する屋根断熱と天井面で断熱する天井断熱の2通りあります。

 

  • 外壁を全面改修するような場合は、屋根断熱工法、天井断熱工法どちらでも施工可能です。
  • 予算を抑える場合は、部屋を限定して天井断熱とします。

 

 

壁と屋根もしくは天井の断熱改修では、防湿フィルムを張り、壁と屋根面、もしくは天井面と連続させる必要がありますので注意が必要です。

 

 

 

 

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