45:坪単価での比較は要注意!
家を建てたいと思ったとき、最も大きな問題は予算です。
この予算でどれくらいの家が建つだろうと考えたときに、便利なのが「坪単価」という指標です。
この坪単価とは、建築費をその家の延べ床面積で割った金額のことを言います。
つまり、1坪あたりの建築費のことです。(1坪=3.3㎡です)
ここで、「坪」という単位ですが、これは畳2枚分、つまり2畳の広さを言います。もし、20坪の住宅ならその広さは40畳ということになります。
日本人であれば、畳に換算したほうが広さを把握しやすいのではないでしょうか。
それでは、坪単価を計算してみましょう。
家を建てる予算が3000万円だったとして、ある工務店もしくはハウスメーカーの坪単価が、70万円だったとします。
そうすると、その会社で建てるとすると、3000万円/70万円=42.8坪となり、43坪程度の家が建つということがわかります。
このようにして、各社を比較検討していけば、自分の思っている広さの住宅が予算内に建てることができそうな会社を選ぶことができます。
実に便利な指標に思えますが、
しかしながら、実際にはそんなに単純な話ではないのです。
ここに「坪単価」という指標の落とし穴があります。
今回は、この「坪単価」についてのお話です。
目次
■坪単価での比較は要注意!
坪単価とは、建築費/延べ床面積で計算できます。
しかしながら・・・・
坪単価には正式な統一基準がない
そうです。坪単価という指標には正式な統一基準がないのです。
どういうことか、もう少し詳しく見ていきます。
建築費について
建築かかる総予算は一般的には次のように分類されます。(%の数字は目安ですので、建物によって数値は変わります)
本体工事費
建物本体にかかる工事費ですが、ここにはキッチン、ユニットバス、トイレなど最低限の設備が含まれています。ハウスメーカーでは一式として金額が表示されていることが多いです。
別途工事費(付帯工事費)
建物本体以外の工事で、屋外電気工事、屋外給排水工事、電気、水道引き込み工事、冷暖房工事、照明器具、カーテン、外構工事、地盤が弱い場合には地盤改良工事などがあります。付帯工事費という場合もあります。
特に屋外の電気、給排水工事、引込工事、外構工事、地盤改良工事はその土地の広さ、地域によって大きく変わってしまうため、別途工事になっています。
諸経費(諸費用)
これは、諸費用と言い換えたほうがわかりやすいかもしれませんが、建築工事とは別に、登記費用、火災保険料、不動産取得税、引っ越し費用などの費用です。そのほか、設計事務所に依頼する場合は設計料も必要となってきます。
このように分類はされてはいますが、実際には本体工事費と別途工事費はそこに含まれる工事内容が会社によって違いがあります。
ある会社では別途工事費に含まれていた内容が、別の会社では本体工事費に入っているということもあります。
例えば、別途工事費の一部(照明器具、冷暖房設備、カーテンなど)を含めて本体工事費とするケースもあります。
これは坪単価に対する、建築コストに関して統一した基準がないからだといえます。
一般的には、坪単価の建築費は本体工事費のことを言います。
延べ床面積について
坪単価を算定するうえでのもう一つの要素である延べ床面積についても、基準がありません。
確かに建築基準法では延べ床面積の算定の方法は明確に規定されています。
そこでは玄関ポーチ、バルコニー、吹き抜けといったスペースは面積には算入しないことになっています。
しかしながら、実際にはそれらのスペースはあるわけで、コストもかかります。
そこで「施工床面積」という考え方が出てきます。
これは坪単価を算定する場合に、先ほどの玄関ポーチ、バルコニーなど実際に施工する面積も含めて、施工床面積として算出するものです。(これは法的に定められたものではありません)
そして、ここで施工床面積に算入する項目も各社によって考え方が変わります。
さらに言うならその面積の算定方法も各社で違うこともあるのです。
というのは、玄関ポーチやバルコニーには、外壁がほぼありません。また吹き抜けでは床がありません。ということは少し安くなることになります。
そこで、それらの面積を算定する場合に、安くなる分を0.5とか0.4などの係数をかけて、面積とするという方法を採用する会社もあります。
一方で、すべての面積をそのまま算入する会社もあるわけです。
延べ床面積が大きいと坪単価は安くなり、延べ面積が小さいと坪単価は高くなります。
このように、坪単価を計算するうえで必要な本体工事費と延べ床面積の算定基準が、各社で異なるため、単純に坪単価でけで比較してもあまり意味のないものになってしまうわけです。
本体工事一式というブラックボックス
ハウスメーカーに多いのですが、建築本体工事は、一式 〇〇円という表記になっている場合が多いです。
一式の怖いところは、工事費に何が含まれているのか、どんな仕様か、どんなグレードかということが全く分かりません。
多くの場合は、標準仕様ということでしょうが、その標準仕様が気に入らない場合に仕様を変更するとオプション扱いとなり、最終的にはずいぶんと坪単価の高いものになってしまったということにもなりかねません。
また、断熱仕様がどれほどのレベルか、屋根、外装材の耐久性がどれほどなのかによって、ランニングコスト、メンテナンス費用に違いが出てきます。
坪単価が安くても、長い年月で見たときにランニングコスト、メンテナンスコストがかかってしまい、結果的には高い買い物になってしまったということもあります。
見積書に本体工事一式と書いてあった場合には、内外装の仕様、設備仕様、断熱仕様などその内訳を確認しておく必要があると思います。
坪単価で比較するには
これまでご説明してきたように、坪単価には統一した基準がないため、各社ばらばらです。
理想は、施主側で建築コストに含める項目、延べ面積の算定方法などの統一基準を作って、それに基づいて出してもらうのがベストですが、これは素人にはハードルが高すぎるため、現実的でありません。
坪単価という指標は、あくまでも施工会社を絞るための一つの目安程度にとどめとておくことが大前提となります。
そのうえで、以下の点を確認して比較するようにしてみてください。
- 坪単価に何が含まれ、何が含まれてないか
- 延べ面積にはどこまで含まれているのか(面積については基準法上の延べ床面積に統一して出してもらったほうが比較しやすいでしょう)
- 屋根・外壁の仕様な何か
- 内装の仕様はなにか
- キッチン、ユニットバス、トイレ等設備仕様のグレード
- 断熱グレードはどれくらいか
上記のような内容を勘案しながら、どの会社を選ぶか検討してくみてださい。
坪単価だけでは建築の総予算は決まらない
ここまで坪単価についてご説明してきましたが、坪単価がわかれば総予算が決まるわけではありません。
例えば、30坪の家を坪70万円で建てるとすると、2100万円で家ができると思いがちですが、ちょっと待ってください。
最初のほうに建築費の内訳をご説明しましたが、建築費は
本体工事費・・・約70%
別途工事費(付帯工事費)・・・約20%
諸経費(諸費用)・・・約10%
という割り振りでした。
坪単価はあくまでも本体工事費なので、家を建てるにはさらに別途工事費と諸経費が必要です。
さらに消費税もかかります。
このことを理解して予算組することがとても重要です。
それでは総予算と希望面積から建築可能な坪単価を逆算してみましょう。
以下の条件で考えてみます。
総予算:4000万円
希望面積:30坪
まず、消費税を除いた実質の予算を計算します。
4000万円/1.1=3636万円
次に本体工事費を計算します。
本体工事費=3636万円*0.7=2545万円
最後に本体工事に使える坪単価を計算します。
坪単価=2545万円/30坪=84.8万円
という結果になりました。
あくまでも目安ですが、この坪単価で、自分の気に入る仕様で建築できる会社を選び、詳細に詰めていけばよいかと思います。
もし、グレードアップして、予算が厳しくなれば、面積を減らすという選択肢もあります。
面積を減らしても、優秀な設計士であれば、きっと良いプランを提案してくれると思います。
まとめ
- 坪単価とは1坪あたりの建築費のことをいい、1坪は畳2枚分の広さ(3.3㎡)です。坪単価=建築費/延べ床面積で計算できます。ただし、統一した算定基準はありません。
- 坪単価の建築費は建築本体工事費のことをいい、ここに含まれる工事内容は施工会社によって違いがあります。違いを把握しておきましょう。
- 坪単価の面積は延べ床面積ですが、施工床面積で計算する会社もあり、基準がかわってしまいます。比較する場合はどちらかに統一したほうが良いでしょう。
- 坪単価で比較する場合は、坪単価に含まれる内容、内外装の仕様、設備機器の仕様、断熱グレードなどは確認して各社の違いを把握して検討したほうが良いでしょう。
- 坪単価だけでは家を造るための総予算は決まりません。建築本体工事費のほかに敷地によって変動する別途工事費、諸経費などが必要になります。
- 総予算から逆算して、建築本体工事に使える坪単価を出し、希望に見合う施工会社を選定して、詳細を決めていきましょう
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