鉄骨造と木造、断熱・気密性能で有利なのはどっち?構造別に徹底比較

家を建てるとき、住宅の構造に迷われる方も多くいらっしゃるかと思います。特に「鉄骨造にするか、木造にするか」という選択は、家の見た目や間取りだけでなく、暮らしの快適さにも大きく関わります。

その中でも特に重要なのが、断熱性能と気密性能です。断熱性とは、家の中の温かさや涼しさを外に逃がさない力のことで、気密性とは、隙間風や外気の侵入を防ぐ力のことを指します。つまり、この二つの性能が高い家は、冬は暖かく、夏は涼しく、光熱費も抑えられる快適な家になります。

一方で、「鉄骨造は寒い」「木造は暖かい」といった話を耳にしたことがある方も多いでしょう。しかし、実際にはどちらの構造が本当に快適なのでしょうか?

  • 鉄骨造は見た目がスタイリッシュで大空間を作りやすいけど、冬は冷えやすい?
  • 木造は温かみがあって断熱しやすいけど、大きな窓を作ると暑くなることもある?

家の快適さは単に構造の違いだけで決まるわけではありません。設計や施工、使う断熱材の種類や施工精度も大きく影響します。

この記事では、鉄骨造と木造の住宅を断熱・気密性能の観点からわかりやすく比較し、それぞれのメリット・デメリットや、後悔しないためのチェックポイントを解説します。これから家を建てる方が、「自分の暮らしに合った快適な住宅」を選ぶための参考にしていただける内容です。

1. 鉄骨造と木造、そもそもの構造の違い

住宅の構造は、大きく分けて「鉄骨造」と「木造」と「RC造」に分類されます。構造の違いは見た目やデザインだけでなく、耐久性や間取りの自由度、そして断熱性・気密性にも影響します。「RC造」については別の機会にして、まずは、「鉄骨造」「木造」のそれぞれの特徴をわかりやすく確認してみましょう。

鉄骨造とは

鉄骨造の住宅は、柱や梁など主要な構造部分に鉄を使った建物です。鉄骨の強度が高いため、広いリビングや大きな窓を設けた家などを建てやすいのが特徴です。

鉄骨造には主に2種類あります。

  • 軽量鉄骨造
    主に2階建ての住宅に使われる構造です。比較的コストを抑えられ、施工も短期間で済むため、都市部の住宅で多く採用されています。木造を似た造りとなります
  • 重量鉄骨造
    3階以上の住宅や大空間の住宅向け。鉄骨の厚みや強度が高く、耐震性・耐久性に優れています。大きな吹き抜けや広いリビング、屋上なども作りやすく、デザインの自由度が高いのも魅力です。

ただし、鉄骨は熱を伝えやすい性質があります。そのため、適切な断熱材や気密施工を行わないと、冬は外の冷気を家の中に伝えてしまい、室内が寒く感じることがあります。

木造とは

木造住宅は、柱や梁に木材を使った建物です。代表的な工法には在来工法(柱・梁の組み合わせで建てる伝統的工法)や2×4工法(面で支える構造)があり、それぞれの特徴を生かして建てられます。

木造住宅の大きな特徴は、木材が熱を伝えにくく、調湿性に優れていることです。そのため、室内の温度や湿度を安定させやすく、冬でも暖かく、夏は比較的涼しい快適な環境を作りやすいというメリットがあります。また、木材は加工しやすいため、細かな間取り変更やデザイン性の高い内装も実現しやすいです。

構造の違いが断熱・気密性に与える影響

鉄骨造と木造は、どちらも耐震性や耐久性に優れていますが、断熱性や気密性の取りやすさには違いがあります

  • 鉄骨造は熱伝導率が高いため、断熱材や気密施工の工夫が必要です。
  • 木造は木材自体が熱を伝えにくく、断熱材を隙間なく入れやすいため、施工精度さえ守れば高い断熱・気密性能を出しやすいです。

次の章では、鉄骨造住宅の断熱・気密性能の特徴について詳しく見ていきます。

2. 鉄骨造住宅の断熱・気密性能の特徴

鉄骨造の住宅は、柱や梁に鉄を使っているため、鉄の熱伝導率が非常に高いという特徴があります。つまり、鉄自体が熱をよく伝えるため、外の冷気や熱が家の中に伝わりやすくなります。この性質が原因で、断熱効率が下がったり、場合によっては結露を起こす心配があります。この現象は「熱橋(ヒートブリッジ)」と呼ばれ、断熱性能を考えるうえで注意が必要です。

鉄骨造の断熱の課題

  • 熱橋の発生
    鉄骨は熱を伝えやすいため、柱や梁など、断熱材でしっかり覆ってしまう必要があります。
  • 施工精度の影響が大きい
    特に重量鉄骨造は部材が大きく、柱と梁の取り合いが複雑で、断熱材を隙間なく入れる施工が少し難しくなります。施工の丁寧さによって、室内の温かさや気密性に大きな差が出るのです。

鉄骨造でも快適にする工夫

しかし、鉄骨造だからといって冬が寒くなるわけではありません。設計や施工で工夫することで、十分快適な室内環境をつくることができます。

  • 外断熱の採用
    壁や屋根の外側に断熱材を取り付ける「外断熱」を行うと、鉄骨が直接室内の温度に影響しにくくなります。鉄骨の熱橋も大幅に軽減できます。
  • 気密施工の徹底
    鉄骨造は気密を保つのが難しい構造ですが、外断熱にすることで、隙間を丁寧に塞ぎ、窓や開口部の気密性を高めることで、隙間風や冷気の侵入を防ぐことができます。

デザイン面のメリットと注意点

鉄骨造の魅力は、大空間や大きな窓、吹き抜けなど自由な間取りを作りやすいことです。開放感のあるリビングや光の入りやすい空間は、生活の満足度を高めます。しかし、断熱・気密性能を確保するためには、設計段階で断熱材や外断熱の位置、窓の大きさや配置を考慮することが重要です。設計段階で細部まで配慮することで、鉄骨造でも冬は暖かく、夏は涼しい快適な住宅を実現できます。

3. 木造住宅の断熱・気密性能の特徴

木造住宅は、柱や梁に木材を使った建物です。木は鉄に比べて熱を伝えにくい性質を持っており、室内の温度が外気の影響を受けにくいというメリットがあります。このため、冬は暖かく、夏は比較的涼しい環境を作りやすく、断熱性に優れた住宅をつくりやすい構造です。

木造の断熱性の特徴

  • 熱橋になりにくい
    鉄骨造のように鉄材が熱を逃がす「熱橋」になりにくく、柱や梁が断熱性能を損なうことが少ないのが特徴です。
  • 断熱材を充填しやすい
    木造住宅は柱と柱の間に断熱材をきれいに入れやすく、施工次第で高い断熱性能を確保できます。特に在来工法や2×4工法では、壁・天井・床に断熱材を隙間なく配置することで、室内全体を均一に暖めやすくなります。

木の持つ調湿性

木材は自然の吸湿性があるため、室内の湿度を調整する効果があります。

  • 冬は乾燥しすぎず、夏は湿気を吸収して快適な空気環境を保ちやすい
  • 結露が発生しにくく、カビやダニの発生リスクも低減

この特性により、木造住宅では快適さと健康的な住環境が得やすくなります。

気密性の重要性と施工の影響

木造住宅は構造自体が断熱に有利ですが、施工精度が性能に直結します。

  • 隙間があると冷気や湿気が入りやすくなるため、気密シートやテープを使って丁寧に施工する必要があります。
  • 隙間を少なくすることで、暖房効率が高まり、冬でも室内を均一に暖められます。
  • 室内の空気を一定に保つことで、光熱費の節約にもつながります。

木造のメリットと注意点

木造住宅は設計次第で高い断熱・気密性能を出しやすく、鉄骨造よりも快適な温熱環境を実現しやすい構造です。さらに木材の自然な温かみや香りは、住み心地の面でも大きな魅力となります。

一方で、施工精度が低いと断熱性能や気密性が十分に発揮されません。また、大きな開口部や吹き抜けを多く設ける場合は、断熱材や窓の性能にも注意が必要です。設計段階で断熱・気密のバランスを考えながら間取りを決めることが、快適な住まいづくりのポイントです。

4. 断熱・気密性能で比較するとどちらが有利か

住宅の快適さを左右する断熱性能と気密性能。鉄骨造と木造を単純に比較すると、木造住宅の方がやや有利と言えます。その理由は主に以下の点です。

木造が断熱・気密で有利な理由

  1. 熱伝導率の低さ
    木は鉄に比べて熱を伝えにくいため、冬でも外の冷気が室内に伝わりにくく、夏も外の熱を取り込みにくい構造です。柱や梁の部分が熱橋になりにくいため、家全体を均一に暖めたり冷やしたりするのに有利です。
  2. 断熱材の充填がしやすい
    木造は柱と柱の間に断熱材を隙間なく入れやすく、施工精度次第で高い断熱性能を確保できます。丁寧に施工された木造住宅では、鉄骨造よりも少ないエネルギーで室温を快適に保てることがあります。
  3. 調湿性のある自然素材
    木は湿気を吸ったり吐いたりする性質があるため、冬場の乾燥や夏場の結露を抑えやすく、住環境の快適さに直結します。

鉄骨造でも工夫次第で快適にできる

一方で、鉄骨造は木造ほど断熱・気密の施工方法が確立しているわけではありませんが、知識のある設計者によって、しっかりとした設計と施工の工夫次第では快適な住宅は十分可能です。たとえば、以下の対策があります。

  • 外断熱の採用:鉄骨部分を断熱材で包み、室内の温度に影響を与えにくくする。
  • 気密施工の徹底:隙間を丁寧に塞ぐことで、冷気や隙間風の侵入を防ぐ。

これらの工夫を設計段階から取り入れることで、鉄骨造でも冬に足元が冷えにくい暖かい家や、光熱費を抑えた省エネ住宅を実現できます。

まとめ

鉄骨造と木造の住宅には、それぞれメリットと注意点があります。

  • 木造住宅は、木の熱伝導率が低く断熱材を隙間なく入れやすいため、施工精度が高ければ高い断熱・気密性能を発揮しやすいです。また、木材の調湿性により室内の空気が安定し、冬でも暖かく夏も過ごしやすい快適な住環境を作りやすいという特徴があります。
  • 鉄骨造住宅は、鉄の熱伝導率が高いため熱橋ができやすく、施工や設計の工夫が欠かせません。しかし、外断熱や高性能断熱材、丁寧な気密施工を取り入れれば、木造と同等の快適さを実現することも可能です。さらに、大空間や大きな窓、自由度の高い間取りなど、デザイン面での魅力も大きいのが特徴です。

結局のところ、住宅の快適さを決めるのは、構造もさることながら、設計・施工の精度や断熱・気密の工夫が最も重要です。家族のライフスタイルや間取りの希望に合わせて、どちらの構造がより適しているかを見極めることが重要です。


家づくりで快適な住まいを実現するためには、構造の選び方だけでなく、設計や施工の工夫、住まい手に合った間取りの提案が重要です。鉄骨造・木造のどちらが適しているか迷ったときや、断熱・気密性能を確保しながら理想のデザインを実現したいときには、信頼できる設計士に相談することが一番の近道です。

私たち足立和太建築設計室では、性能の高い住宅をベースに、家族の暮らし方やライフスタイルに合わせた間取り・断熱計画を一緒に考えています。

そんなご希望に寄り添いながら、設計から完成まで丁寧にサポートします。

家づくりに関する疑問や不安がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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