住み替え?建て替え?60代からの「終の住処」の選び方【戸建てorマンションも解説】

60代に入ると、暮らし方や体の変化に合わせて「この家に一生住み続けられるだろうか?」と考える方が多くいらっしゃいます。
子どもが独立して使わない部屋が増えたり、階段の上り下りがしんどくなったり、寒い冬の浴室がつらくなったり…。こうした日常の小さなストレスは、「終の住処」を考えるきっかけになります。
では、老後の暮らしやすさを考えるなら「住み替え」と「建て替え」、どちらを選ぶべきなのでしょうか?
また、住み替えを選ぶなら「一戸建て」と「マンション」、どちらが快適なのでしょうか?
この記事では、設計事務所としての経験と専門的な視点から、60代からの住まい選びについて解説していきます。
住み替えと建て替え、どちらを選ぶ?それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説
60代を迎えると、多くの方が今の住まいについて「このままで本当に安心か?」と見直しを始めます。
選択肢としてよく挙がるのが「住み替え」と「建て替え」です。
それぞれの選択肢には、将来の暮らしを大きく左右するポイントがあり、家族構成や健康状態、経済的な余裕、地域との関係などによって最適な選択が異なります。
ここでは、住み替え・建て替えのメリットとデメリットを、詳しくご紹介します。
住み替えのメリット
1. バリアフリー仕様の住まいを手に入れやすい
新築や築浅の住宅・マンションでは、段差が少ない、引き戸が多い、浴室やトイレが広く設計されているなど、バリアフリー設計が標準化されつつあります。
特にマンションではワンフロアでの生活が可能なため、将来の足腰の不安にも対応しやすくなります。
2. 今の家の老朽化や管理負担から解放される
築年数が経った住宅では、雨漏り・断熱不足・給排水設備の老朽化など、修繕費用がかさんでくる時期です。
住み替えをすることで、今後の大規模修繕の不安や、庭や屋根などの外部メンテナンスからも解放されます。
3. 間取りがコンパクトになり、掃除や動線が楽に
夫婦二人暮らしや単身の場合、今の家が「広すぎる」と感じることも。
住み替えで間取りを見直すことで、必要な部屋だけに絞り、生活動線を短くでき、日々の掃除や移動の負担が軽減されます。
4. 環境を変えることで心機一転できる
これまでの生活に一区切りをつけて、新しい地域や街での暮らしをスタートできるのも、住み替えの魅力。
趣味を楽しむ、買い物や通院がしやすい駅近エリアに移るなど、ライフスタイルに合った環境を選びやすくなります。
住み替えのデメリット
1. 地域とのつながりを手放す可能性がある
長年暮らしてきた地域には、ご近所との信頼関係や、土地への愛着がある方も多いでしょう。
住み替えによって、そうした人間関係を一度リセットせざるを得ないこともあります。
2. 物件探し・引っ越しの手間とコスト
住み替え先の選定、購入手続き、引っ越し、手続き関係など、体力と時間を要する作業が発生します。
また、新築マンションや一戸建ては物件価格が高くなりがちで、中古でもリフォーム費用がかかるケースもあります。
3. 自由度の低さ(特に中古住宅)
中古物件では、希望の間取りや設備が合わないことも。
リフォームで対応できる範囲には限界があり、断熱や耐震などの性能面を一から改善するには多くの費用がかかります。
建て替えのメリット
1. 今の土地で暮らし続けられる安心感
慣れ親しんだ地域で、近所付き合いや生活基盤をそのまま保てるのは、大きな安心につながります。
年齢を重ねるほど、病院・スーパー・駅までの距離や、顔なじみのご近所の存在は、生活の質に大きく関わってきます。
2. 自由な設計が可能
一から家をつくり直せるため、間取り・動線・収納・採光・断熱性など、すべてを「これからの暮らし」に最適化できます。
たとえば、将来を見据えて寝室を1階に設けたり、車椅子でも使える広いトイレを確保したりといった工夫が自在にできます。
3. 性能面を大幅に向上できる
断熱・気密・耐震といった性能をゼロから見直せるため、「寒い」「地震が心配」「音が響く」といった不安を解消しやすくなります。
高性能住宅にすれば、冬の暖房費・夏の冷房費も大きく節約できることから、長期的な視点でもメリットは大きいです。
建て替えのデメリット
1. 仮住まいが必要
建て替え中は、数ヶ月から半年程度の仮住まいに住む必要があります。
引っ越しが2回になるため、体力面や費用面での負担は避けられません。
2. 費用が高くなりやすい
建て替えは、解体・設計・施工・仮住まい・引っ越しなどを含めると、新築以上の費用がかかることもあります。
ただし、自分の希望に合った終の住処を手に入れられるという価値は、費用以上と考える方も多くいらっしゃいます。
3. 周辺環境の変化による影響も
建て替え中や完成後に、周囲の建て替えや開発が進むこともあります。
隣地の建物が変わることで、日当たりや風通しに変化が出る場合もあるため、将来の環境の変化も視野に入れて設計する必要があります。
このように、住み替えと建て替えにはそれぞれ明確なメリット・デメリットがあります。
重要なのは、「老後の暮らしで何を優先したいのか」をご自身の価値観やご家族と話し合い、整理してから選択することです。
一戸建てとマンション、老後に向いているのはどちら?
老後の住まいを考える際、「一戸建てに住み続けるか、それともマンションに移るべきか」という問いは、多くの方が直面する大きなテーマです。
どちらにもそれぞれの魅力と注意点があり、ご自身のライフスタイルや健康状態、家族構成などによって適した選択が異なります。
ここでは、一戸建て・マンションそれぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
一戸建ての特徴と老後におけるメリット
1. 庭や駐車場が自由に使える
一戸建て最大の魅力のひとつは、「土地の自由度」です。
家庭菜園やガーデニングを楽しんだり、来客用の駐車スペースを確保したりと、自分のペースで空間を活用できます。
ペットを飼いたい方にも、近隣に気兼ねなく飼育できるという利点があります。
2. 上下階の騒音を気にせず暮らせる
マンションでは上下階や隣室との生活音が問題になることもありますが、一戸建てであればその心配はありません。
特に高齢になって生活リズムが変わった際にも、周囲に気を使わずに自分のペースで暮らせるのは大きな安心材料です。
3. 間取り変更やリフォームの自由度が高い
将来的に必要になったときに、トイレの拡張、スロープの設置、浴室のバリアフリー化など、柔軟に改修が可能です。
特に注文住宅で建てた家であれば、構造的にも改修しやすい計画がなされている場合が多く、住みながら調整しやすいのが特徴です。
一戸建てのデメリットと注意点
1. 定期的なメンテナンスが必要
屋根や外壁の塗装、雨樋の掃除、庭木の手入れなど、外部の維持管理には体力と時間、費用がかかります。
高齢になると自力での管理が難しくなることもあり、業者に依頼する費用も想定しておく必要があります。
2. 冬の寒さや段差が負担になることも
築年数が古い戸建てでは断熱性能が低く、冬は家の中でも寒さを感じやすい傾向があります。
また、玄関ポーチや階段、トイレなどの段差が多い間取りの場合、足腰に不安が出てきたときに暮らしづらさを感じることも。
そのため、リフォームや建て替えを通じて段差をなくし、断熱性・気密性の向上を図ることが大切です。
一戸建てが向いている人は?
- 庭仕事や趣味を楽しみたい方
- ご近所付き合いを大切にしたい方
- 自分のペースで自由に暮らしたい方
- 将来的に家をリフォームしながら住み継ぎたい方
マンションの特徴と老後におけるメリット
1. ワンフロアで移動が楽、バリアフリーが基本仕様
最近のマンションはバリアフリー設計が標準で、室内に段差がなく、エレベーターで階段を使わずに玄関まで移動できます。
玄関から居室・トイレ・浴室までフラットな動線でつながっているため、足腰に不安がある方でも安心して暮らせます。
2. 管理人やセキュリティ体制が整っている
共用エントランスのオートロックや管理人の常駐により、防犯性が高く、女性の単身住まいや高齢世帯でも安心です。
宅配ボックスやコンシェルジュサービスなど、生活の利便性を高める設備も充実しています。
3. メンテナンスの負担が少ない
外壁や屋上、防災設備の点検など、共用部の維持管理は管理組合が行うため、自分で管理する手間が少なく済みます。
室内設備のメンテナンスだけに集中できる点は、高齢者にとって大きなメリットです。
マンションのデメリットと注意点
1. 管理費・修繕積立金など月々の費用が発生する
戸建てに比べて毎月一定の費用(管理費+修繕積立金)がかかり、長期的に見ると意外な負担になることもあります。
また、大規模修繕の際には追加負担が発生するケースもあるため、管理状況を事前に確認しておくことが重要です。
2. 間取り変更の自由度が低い
構造上の制限が多く、大きな間取り変更や水回りの移動は難しい場合があります。
必要に応じたリフォームが思うようにできないことも、将来的な住み替えを考える要因になります。
3. 近隣住民との距離感が課題になることも
音の問題や管理組合との関係など、人間関係のストレスを感じる方も。
特に上下階の生活音に対する感覚は人それぞれで、トラブルに発展することもあります。
マンションが向いている人は?
- 階段の上り下りや段差が不安な方
- 生活の利便性やセキュリティを重視したい方
- 一人暮らしまたは夫婦二人暮らしで広さを重視しない方
- 駅や病院、スーパーに近い立地で暮らしたい方
ライフスタイル別・終の住処のおすすめパターン
60代以降の住まい選びにおいて大切なのは、「自分たちがどんな暮らしを望んでいるのか」を一度、見つめ直すことです。
老後の暮らしは、若い頃と違って体力や考え方が変化します。だからこそ、ライフスタイルに合った住まいの形を選ぶことで、暮らしやすさも、安心感も大きく変わってきます。
以下では、よくあるライフスタイルの例に応じて、どんな住まい方が向いているのか、ご紹介します。
1. 今の地域でご近所づきあいを続けたい人 → 建て替え(戸建て)
◎理由:生活基盤を変えず、設計の自由度も高い
「これまで長く暮らしてきた地域を離れたくない」「近所との関係も大切にしたい」という方には、建て替えという選択肢が最も自然です。
現在の土地にそのまま住み続けることで、買い物や通院ルートも変わらず、ご近所付き合いや地域活動も続けやすいのが利点です。
また、建て替えなら「高断熱・高気密」「バリアフリー設計」「太陽光発電や蓄電池」など、これからの暮らしに必要な性能を取り入れた家づくりができます。
2階建てから平屋への変更も視野に入れれば、より安心・快適な住環境が整います。
2. 夫婦2人で身軽に暮らしたい人 → 住み替え(マンション)
◎理由:生活動線が楽で、管理の手間がかからない
子育てを終えて夫婦2人の生活になった場合、広すぎる家の管理や掃除、庭の手入れが負担になることがあります。
そうした場合は、生活がシンプルになるコンパクトなマンションへの住み替えが適しています。
マンションは基本的にバリアフリー構造で、段差もなく移動がスムーズ。買い物や病院が徒歩圏内にある立地なら、車に頼らず暮らせる安心感もあります。
また、修繕や清掃などの管理を管理組合に任せられるため、日々の負担が大きく軽減されます。
終の住処として選ぶ際は、「エレベーター付き」「駅やバス停まで徒歩10分圏内」「災害リスクの少ない立地」など、将来の安全性や利便性も重視すると良いでしょう。
3. 趣味や庭いじりを楽しみたい人 → 平屋への建て替え
◎理由:庭との一体感、動線の短さ、バリアフリー性が高い
ガーデニングやDIY、家庭菜園など、外とつながる暮らしを楽しみたい方には、庭と一体化した平屋が最適です。
すべての生活空間がワンフロアでつながるため、屋内外の移動がスムーズで、屋外作業のあともすぐに洗面や浴室へアクセスできます。
また、平屋は将来的な介護のしやすさにも優れており、段差がないことで転倒リスクを軽減できるなど、安全面でも安心。
設計の工夫で中庭やウッドデッキを設ければ、屋内にいながら自然を感じることができ、心の豊かさにもつながります。
ライフスタイルに合った選択が、暮らしの質を決める
「老後の暮らしにふさわしい住まい」とは、一律の正解があるわけではありません。
むしろ、自分らしい暮らし方を叶えられる住まいを選ぶことこそが、快適で安心できる毎日につながります。
たとえば…
ライフスタイル | おすすめの住まい方 | 選び方のポイント |
---|---|---|
地域のつながりを維持したい | 建て替え(戸建て) | 設計でバリアフリーや断熱性能を強化 |
身軽で便利な暮らしをしたい | 住み替え(マンション) | 駅近・段差なし・管理が楽な物件を選ぶ |
自然や趣味と暮らしたい | 平屋への建て替え | 庭とのつながり、シンプルな動線 |
60代は、今後の暮らしを見直す大きなタイミングです。
家の性能や間取りを最適化することで、「快適さ」や「安心感」は驚くほど変わります。
ご家族の意向や健康状態も踏まえて、ライフスタイルに合った住まい方をじっくり考えてみてください。
設計事務所の視点から見る「後悔しない住まい選び」のポイント
私たちは、60代からの「終の住処」を考える際、単に間取りや設備を整えるだけではなく、これからの人生を安心して、そして心地よく過ごすための“環境”を整えることが最も大切だと考えています。
「これなら、ずっとこの家で暮らしていける」
そう思える家には、以下のような“設計の視点”がしっかりと組み込まれています。
1. 将来の身体の変化に合わせた バリアフリー設計
60代の今は元気でも、10年後、20年後には足腰が弱る、車いすが必要になるといった可能性も想定しておくべきです。
設計段階からその変化を見据え、
- 玄関や浴室、トイレの段差をなくす
- 廊下や出入口を広めにとる
- 将来的に手すりが設置できる下地を仕込んでおく
といった配慮をすることで、介護が必要になったときにも慌てずに済みます。
また、2階建ての場合には「寝室や水まわりを1階に集約しておく」といった工夫も、将来への安心につながります。
2. 光や風、断熱性を考えた 快適な住環境
老後の生活は家で過ごす時間が増える分、室内環境の快適さが健康や気持ちの明るさにも直結します。
- 冬でも室内の温度差をなくす高断熱・高気密設計
- 南からの自然光を取り込む窓配置
- 夏に涼しい風が抜ける通風計画
といった「パッシブデザイン」を取り入れることで、冷暖房に頼りすぎず、体にやさしい住まいを実現できます。
特に高齢になると「ヒートショック」や「熱中症」のリスクが高まるため、住宅の温熱性能は命に関わる重要な要素です。
3. 維持管理のしやすさを見据えた 素材・工法の選定
終の住処を建てたあと、できるだけ手間や費用をかけずに快適に暮らしたい──
そのためには、メンテナンスの手間がかからない素材や構造を選ぶことが大切です。
例えば、
- 外壁材は耐久性が高く、塗り替えの頻度が少ないものを
- 屋根は雨仕舞いがよく、点検しやすい形状に
- 床材は掃除しやすく、足腰への負担が少ない素材に
など、見た目だけでなく“長く使えるか”という視点で素材を選ぶことが重要です。
4. 「使いやすさ」だけでなく、「居心地の良さ」まで設計する視点
老後の住まいは、“便利”であるだけでは満足できません。
毎日の暮らしに「気持ちよさ」や「安らぎ」があることが、長く快適に暮らすための鍵になります。
- 自然素材に包まれたぬくもりのある空間
- 庭の緑が窓から見える視線設計
- 家族や来客との距離感を心地よく保てる間取り
こうした「五感」や「感情」に寄り添った設計が、住まいの“居心地の良さ”をつくり出します。
終の住処は、「これからの人生を楽しむステージ」
家は、ただ雨風をしのぐ箱ではありません。
老後の住まいは、「これからの人生をどう暮らすか」をかたちにする場所です。
目先のコストや立地の便利さも大切ですが、それ以上に、
「この家で、どんな日々を過ごしたいか」という思いを大切にしてください。
設計事務所として、私たちはそうした思いに寄り添いながら、
後悔のない、心から納得できる住まいづくりをお手伝いしています。
ご自身やご家族の将来を見据えて、住まいについてすこし考えてみませんか?
まとめ|「終の住処」は、人生後半を豊かにするための大切な選択
60代からの住まい選びに“絶対の正解”はありません。
住み替えか建て替えか、また一戸建てかマンションか――どの選択にもそれぞれのメリットと注意点があります。
重要なのは、単に建物や場所の条件だけで決めるのではなく、「これからの人生をどう過ごしたいか」というあなた自身やご夫婦のライフスタイル、価値観に寄り添った選択をすることです。
例えば、趣味や家族との時間を大切にしたいのか、動線や管理のしやすさを優先したいのか。
また、将来の身体の変化に備えた安全性や快適性を重視するかどうか。
こうした視点を持つことで、「ただ住むための家」ではなく、人生の後半を豊かで安心に、心地よく過ごせる場所を選ぶことができます。
私たちは、そうした一人ひとりの想いにしっかり耳を傾け、あなたの終の住処づくりを全力でお手伝いします。
家づくりは大きな決断ですが、私たちと一緒にじっくり考え、後悔のない選択を目指しましょう。
人生の新しいステージにふさわしい住まいを、一緒に形にしていきましょう。
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