「高気密高断熱の家でも結露する?|見落としがちな湿気と換気の落とし穴」

高気密・高断熱の家って、「冬でもあたたかくて、結露しにくい」というイメージがありますよね。実際、断熱性能の高い住宅では、外の寒さが室内に伝わりにくいため、結露のリスクはグッと下がります。
でも…「うちは高断熱だから大丈夫」と思っていたら、窓に水滴がびっしり。なんていう話、もあります。
「どうして?」と驚かれるかもしれませんが、実は高性能な住宅だからこそ、湿気がこもりやすくなる落とし穴もあるんです。
結露は、ただ寒いから起こるのではなく、室内にたまった湿気が原因で発生する現象。とくに冬は、外が冷え込む一方で、室内ではお風呂や料理、洗濯物の室内干しなどで大量の水蒸気が発生します。そして気密性の高い家では、その湿気が外に逃げにくくなってしまうんですね。
このコラムでは、高気密・高断熱の家でなぜ結露が起こるのか?という疑問にお答えしながら、見落としがちな湿気対策と換気のポイントについて、設計者の視点からわかりやすく解説していきます。
せっかく性能のいい家を建てたのに、「窓や壁の結露に悩まされる」なんてことにならないように。家づくりを考えるうえでぜひ知っておきたいポイントを、わかりやすくご紹介します。
なお、結露について詳しくは、「怖い内部結露!発生のメカニズムとその対策」をご覧ください。
■ 高気密高断熱でも結露は起こる?その理由とは
「高気密・高断熱の家にすれば、もう結露の心配はない!」
そんなふうに思っている方も多いかもしれません。たしかに、断熱性能が高い家では、外の冷たい空気の影響を受けにくく、室内の温度が安定しやすいため、結露が起こりにくい環境が整っているのは事実です。
でも実は、それだけでは安心できません。高性能な家でも、結露が起こるケースはあるのです。
では、なぜ結露が起きてしまうのでしょうか?
そもそも結露というのは、空気中に含まれている水蒸気が、温度の低い物体(たとえば窓ガラスや壁など)に触れたとき、冷やされて水滴に変わる現象のことです。冬の朝、窓にびっしりと水滴がついているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
ここで注目すべきなのは、「水蒸気がどこから来るのか?」という点です。
実は、私たちの暮らしの中では、思っている以上にたくさんの湿気が発生しています。
- お風呂やシャワーを使う
- 調理中の蒸気や炊飯器の湯気
- 洗濯物を室内に干す
- 寝ている間の呼吸や汗 など…
こうした日常の行動で発生する水蒸気が室内にたまり、それが逃げ場を失った状態になると、冷たい部分に触れたときに一気に結露となって現れるのです。
特に高気密の住宅は、外気とのすき間がほとんどないため、湿気が外に出にくい構造になっています。これは「暖かさを保つ」にはとても有利な特性ですが、逆にいうと、一度こもった湿気がなかなか抜けにくいという側面もあるんですね。
さらに、室内の空気が十分に循環していなかったり、換気が適切に行われていなかったりすると、湿度がどんどん高くなり、結露のリスクがぐっと高まります。
特に注意したいのが、以下のような状況です。
- 湿度が高くなりがちな部屋(脱衣所、寝室、北側の部屋など)
- 空気がよどみがちな場所(家具の裏や収納の奥)
- アルミサッシなど、熱を通しやすい部材を使った窓まわり
このような場所では、断熱性能が高くても、条件がそろえば結露は十分に起こるのです。
つまり、「高気密高断熱=絶対に結露しない」というのは、少し誤解を含んだイメージなんですね。
大切なのは、住宅の性能だけに頼るのではなく、「湿気をコントロールするしくみ」や「換気の設計」もしっかり整えること。
そうすれば、住まい全体の快適性や耐久性も、ぐんと高めることができます。
■ 見落としがちな湿気の発生源とは
「湿気」と聞くと、梅雨時のジメジメや夏の蒸し暑さをイメージする方が多いかもしれません。けれど実は、湿気は季節を問わず、しかも私たちの暮らしの中から毎日発生しているんです。
たとえば、こんな何気ない日常の動作が、室内の湿度をぐんと上げています。
- 朝晩の洗顔や手洗いで使う水
- お風呂やシャワーの湯気
- キッチンでの煮炊きや炊飯中の蒸気
- 洗濯物の室内干し
- そして、就寝中の人の呼吸や汗 など…
特に家族が多い家庭や、室内干しの機会が多い冬場は、思っている以上にたくさんの水蒸気が家の中に発生しているのです。
冬になると、寒さや花粉、PM2.5などの影響もあって、なかなか窓を開けての換気がしづらくなりますよね。そうなると、家の中にこもった湿気は逃げ場を失い、壁のすき間や窓まわりなど少しでも温度の低い場所に集まって、結露となってあらわれることがあります。
そしてここで気をつけたいのが、高気密住宅の特性。すき間が少なく、外の空気がほとんど入ってこない構造は「寒さに強い」という大きなメリットがありますが、同時に、一度こもった湿気が逃げにくいというデメリットにもつながるのです。
また、最近では室内の快適さを保つために、無垢材の床や珪藻土の塗り壁など、調湿効果のある自然素材を使った家も増えています。たしかにこれらの素材は、空気中の余分な湿気を吸ってくれたり、乾燥時には少し放出してくれたりと、湿度の調整に役立ちます。
でも、いくら優れた素材を使っても、それだけで湿気を完全にコントロールできるわけではありません。とくに冬のように、家の中で水蒸気がどんどん発生し続ける環境では、素材だけに頼っていては追いつかないこともあります。
だからこそ大切なのが、「湿気を出さない工夫」だけでなく、「湿気をきちんと逃がすための設計や設備、暮らし方」を考えること。
たとえば、
- 24時間換気システムの正しい使い方
- 洗濯物を干す場所と時間帯の工夫
- 閉め切りがちな部屋の空気の流れを作るレイアウト
- 湿度の見える化(湿度計の設置)など…
こうした小さな工夫や配慮が、快適で結露のない暮らしにつながっていきます。
■ 換気不足がもたらす落とし穴|24時間換気は万全ではない?
「うちは24時間換気がついてるから、湿気や結露の心配はないはず」と思っていませんか?
実は、それだけでは十分な換気ができていないケースも意外と多いんです。
2003年以降、新築住宅には24時間換気システムの設置が義務づけられており、今の家には必ず何らかの換気装置が入っています。けれど、そのシステムがちゃんと働いているかどうかは別問題。次のような理由で、思うように換気できていないことがあるのです。
● フィルターの目詰まりや掃除不足
給気口や排気ファンのフィルターは、ホコリや花粉、外のゴミなどで少しずつ目詰まりしていきます。半年〜1年掃除しないままでいると、空気の流れが悪くなり、換気量が大きく落ちてしまうことも。
意外と見落としがちですが、定期的なメンテナンスがとても重要です。
● 換気経路の設計ミスや、経年による劣化
換気は「空気の入口(給気)」と「出口(排気)」のバランスがとれていて、はじめて効果を発揮します。でも、設計段階で空気の流れをしっかり考えられていなかったり、経年でダクトにホコリがたまったりすると、一部の部屋に空気が流れない状態になることもあります。
また、気密性能が低いと、そもその換気が計画したように働いていない可能性が非常に高いのです。
この換気が満遍なく働かないと、湿気を家から排出することができずに、結果、結露につながってしまうのです。
● 家具の配置による気流の停滞
大型の収納や背の高い家具を部屋の角や壁際に置いていませんか? 空気は目に見えませんが、意外と通り道に敏感です。給気口や排気口をふさぐように家具が配置されていたり、空気の流れ道が遮られていたりすると、換気の効果が大きく低下します。
● 換気方式によっても、性能や効果は異なる
換気システムにはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。
- 第1種換気:給気も排気も機械で行うタイプ。温度交換機能(熱交換)があるものもあり、室温を保ちながら換気できます。初期コストやメンテナンスの手間は増えますが、最も性能が安定している方式です。
- 第3種換気:給気は自然にまかせ、排気のみ機械で行うタイプ。コストを抑えられる一方で、外気温や風の影響を受けやすく、冬は冷たい空気が直接入ってくることも。
つまり、換気システムは「ついていればOK」ではなく、その家に合った方式を選ぶことがとても大切なんですね。
■ 結露・カビを防ぐための湿気対策のポイント
高気密・高断熱の住宅は、外の暑さ寒さをしっかり防ぎ、快適な空間をつくってくれます。でも、だからこそ湿気がこもりやすいという一面も。
ここでは、そんなお家で「結露やカビを防ぐために、できること」を4つの視点からご紹介します。
① 計画換気と連動した間取り設計
「換気システムはあるけど、なぜかこの部屋だけジメジメする…」ということ、ありませんか?
実はそれ、間取りと換気の設計がうまく噛み合っていないことが原因かもしれません。
たとえば、湿気がたまりやすいのは以下のような場所:
- 脱衣所や洗面室
- 寝室(夜間の呼吸で湿度が上がりやすい)
- 押入れやウォークインクローゼット
こうした空間には、空気の「出口(排気口)」を設けることや、扉の下にすき間を設けて空気が流れるようにするなど、細かな設計の工夫が効果的です。
家づくりの時点で、「湿気がどこに発生するか」を意識した間取り計画ができると、後々とても快適に過ごせますよ。
② 調湿性能を持つ素材の活用
空間の快適性を高めるために、自然素材の力を借りるという方法もおすすめです。
たとえば、
- 無垢の木材(床や天井など):空気が湿っている時は水分を吸い、乾燥している時には湿気を少し放出してくれます。
- 珪藻土や漆喰などの塗り壁:細かい孔(あな)が湿気を吸ったり吐いたりして、室内の湿度を穏やかに保ってくれます。
もちろん「素材の力だけで完璧に調湿できる」わけではありませんが、換気や生活習慣と組み合わせることで、湿度の急な変化を和らげてくれる心強い味方になります。
③ 生活習慣の見直し
家の性能や素材に気を配っても、日々の暮らし方が湿気をため込んでしまっては本末転倒。でも、少しの工夫で改善できるポイントがたくさんあります。
たとえば:
- 洗濯物の室内干しは、換気扇の近くや風の通り道に置く
- 加湿器は必要な時だけ使い、湿度計を見ながらON/OFFを調整
- お風呂上がりには、浴室のドアをしっかり閉めて換気扇を回す
こうしたちょっとした習慣の見直しが、結露やカビの防止につながります。
家族みんなで「湿気をこもらせない暮らし方」を意識できると良いですね。
④ 計測とメンテナンス
「湿度って体感だけじゃよくわからない…」という方も多いかもしれません。
そこでおすすめなのが、湿度計の設置です。リビング、寝室、洗面所などに1つずつ置いておけば、湿気がたまりやすい場所を「見える化」できます。
また、見落としがちなのが換気システムのメンテナンス。
フィルターにホコリがたまっていたり、給気口・排気口がふさがれていたりすると、せっかくの換気機能が働きません。
- 年に1〜2回は、フィルターやファンの掃除
- 吸気口のまわりに家具やカーテンがかぶっていないかチェック
- 換気システムの説明書を見て、運転モードを見直す など
こうしたちょっとした手間をかけることが、結果的に快適な空気環境につながります。
■ 高性能住宅を快適に保つために|設計段階で考えるべきこと
「高気密・高断熱の家=いつでも快適」
そう思ってしまいがちですが、実はただ断熱性能を上げるだけでは、本当に住み心地のよい家にはならないんです。
性能の高い家は、たしかに冷暖房の効きもよく、夏も冬も過ごしやすくなります。
でもその一方で、空気がこもりやすくなるという性質もあります。だからこそ大切なのが、「空気の流れ」をきちんと考えた家づくりなんです。
「空気の流れ」まで設計する、という発想
高性能住宅で結露やカビが発生してしまうケースの多くは、換気がうまく機能していないことが原因です。
たとえば…
- 換気口の位置と部屋の使い方が合っていない
- 湿気がたまりやすい脱衣所や収納に排気がない
- 家具の配置によって空気の通り道がふさがれている
こうした問題は、設計の段階であらかじめ考えておくことで予防できます。
「この部屋は湿気がこもりやすいかも?」「ここには自然と空気が抜けるようにしよう」――そんな視点を持つだけでも、家の快適性はぐんとアップします。
設計士との会話で「空気の話」もしてみよう
家づくりを進めるとき、多くの人が気になるのはデザインや間取り、収納、キッチンの仕様など。でも、ぜひそこにもうひとつ加えてほしいのが、「空気の流れや湿気のこと、ちゃんと考えられていますか?」という視点です。
実際に暮らし始めてから、
- 「なんだかこの部屋だけカビっぽい…」
- 「冬になると窓がびっしょり曇る…」
といった悩みが出てきてしまうのは、「目に見えない空気環境」がうまく整っていなかったせいかもしれません。
設計士や工務店と打ち合わせする際には、以下のようなことを話題にしてみてください:
- 換気の方式はどうなっているか?
- 湿気がこもりやすい場所への対策はあるか?
- 空気の通り道をどう設計しているか?
- 結露が起きにくい窓や建材の選び方は?
ちょっと専門的に感じるかもしれませんが、プロに質問すればちゃんと説明してくれますし、それによってあなたの家づくりの質が大きく変わります。
■ まとめ|高性能住宅でも「湿気対策」は油断禁物!
「高気密・高断熱の家にすれば、結露の心配はなくなる」――そう思っていた方も多いかもしれませんね。
でも実は、いくら性能の良い家でも、湿気がたまれば結露は起こってしまいます。
特に最近の家は気密性が高く、外気が入りにくいため、暮らしの中で自然と発生する水蒸気がこもりやすくなる傾向があります。
たとえば、料理をしたりお風呂に入ったり、室内干しをしたり…どれも毎日のことですが、これらが積もり積もって湿気となり、結露やカビの原因になるんですね。
ではどうすればいいのかというと――
「湿気をためこまない工夫」が家づくりには欠かせません。
- 換気システムがきちんと働くように間取りを工夫する
- 湿気を吸収してくれる自然素材を使う
- 室内干しの場所を換気しやすいスペースにする
- 湿度計を置いて、目に見える形で湿気を管理する
こうしたちょっとした工夫を積み重ねていくことが、快適で長持ちする家づくりのポイントなんです。
そしてなにより大切なのは、断熱性能や省エネ性能だけでなく、「空気の流れ」を意識した設計をすること。
目には見えない部分ですが、そこにこそ本当の住み心地が左右される大事なポイントがあります。
これから家を建てる方も、今の住まいを見直したい方も、ぜひ「湿気」や「換気」にも目を向けてみてくださいね。
結露やカビに悩まされない、健やかで気持ちのいい暮らしにつながっていきますよ。
高気密・高断熱の家は、間違いなくこれからの住まいのスタンダード。
でも、その性能をしっかり活かすためには、「空気の流れ」や「湿気とのつき合い方」をきちんと考えることが欠かせません。
私たち[足立和太建築設計室]では、「夏涼しく、冬暖かい」だけでなく、「結露しにくく、気持ちのいい空気が流れる家」を目指して設計しています。
見えない部分にも丁寧に向き合いながら、住まう人の暮らしに寄り添った住まいをご提案しています。
- 高気密・、高断熱の家に興味のある方
- 自然素材を取り入れた快適な家に興味がある方
など、お悩みやご希望があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
「なんとなく気になる」くらいでも大丈夫です。
まずは一度、お話をお聞かせください。
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