木造住宅の耐震補強ガイド|必要な家の特徴・工法・費用・補助金まで解説

近年、日本各地で震度6以上の大きな地震が相次いでおり、地震による住宅被害のニュースを目にするたびに、
「うちの家は本当に大丈夫だろうか?」
と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

特に、築40年以上が経過した木造住宅にお住まいの方にとって、「耐震性の見直し」は避けて通れない大切なテーマです。
古い住宅の中には、現在の耐震基準を満たしていない「旧耐震基準」で建てられたものも多く、倒壊のリスクを減らすための「耐震補強」が強く推奨されています

とはいえ、

  • どんな家に補強が必要なのか?
  • 実際にどんな補強方法があるのか?
  • 費用はどれくらいかかるのか?
  • 補助金制度は利用できるのか?

など、分からないことが多くて、なかなか一歩が踏み出せない方も多いのではないかと思います。


この記事では、木造住宅における耐震補強の必要性・判断基準・具体的な補強方法と費用相場・補助金制度の活用方法までを、わかりやすく解説します。

目次

木造住宅の耐震性、心配していませんか?

日本は世界有数の地震大国です。大きな揺れによって建物が倒壊したり、住まいが損傷したりするリスクは決して他人事ではありません。

特に、築40年以上が経過した木造住宅にお住まいの方は、住まいの「耐震性」について一度は見直してみることをおすすめします。というのも、1981年(昭和56年)以前に建てられた住宅は、旧耐震基準で設計されており、現代の大地震には対応しきれない構造になっている可能性が高いからです。


■ 1981年に何が変わったのか?——「新耐震基準」とは

1981年6月、建築基準法の構造規定が大きく改正されました。これが、いわゆる「新耐震基準」の誕生です。

新基準では、建物に求められる耐震性能が明確に定められました。特に注目すべき点は以下の2つです:

  • 震度6強〜7程度の大地震でも倒壊しないこと
  • 中規模地震(震度5程度)で損傷しないこと

つまり、新耐震基準に適合した建物は、「命を守るための構造設計」が前提となっているのです。

一方、それ以前の「旧耐震基準」では、

  • 中規模地震で倒壊しないこと

という比較的緩やかな基準しか定められておらず、大規模地震を想定した構造計算が義務付けられていませんでした。


■ 実際の地震被害でも旧耐震住宅は倒壊リスクが高い

過去の大地震でも、旧耐震基準で建てられた木造住宅が数多く倒壊・全壊する被害が出ています。

たとえば:

  • 1995年 阪神・淡路大震災
     → 死亡者の8割以上が「建物の倒壊・家具の転倒」による圧死。特に旧耐震の木造住宅に被害が集中しました。
  • 2016年 熊本地震
     → 1回目の地震では持ちこたえた旧耐震住宅が、2回目の大きな揺れで多数倒壊しました。

これらの事例からも分かるように、古い基準の住宅は、大地震に耐える力が根本的に不足していることがわかります。


■ 築年数だけで判断してよい?

1981年6月以降に建築確認を受けた建物が「新耐震基準」とされますが、工事の施工精度や質のバラツキによって差がある場合もあります。

また、1981年以降の建物でも、経年劣化やシロアリ被害、リフォームの影響で構造的に弱くなっている可能性もあります。

そのため、「築年数だけでは判断しきれない」というのも事実です。


■ まずは「耐震診断」から始めましょう

自分の家が安全かどうかを知るには、まず専門家による耐震診断を受けることが第一歩です。耐震性を数値化した上で、どこをどう補強すべきか、どの程度の工事が必要かが見えてきます。

多くの自治体では、診断費用を一部または全額補助してくれる制度もありますので、「我が家は大丈夫だろうか…」と感じた方は、気軽に活用してみてください。

耐震補強が必要な家とは?

すべての木造住宅が一律に耐震補強を必要とするわけではありません。しかし、構造的に地震に弱い特徴を持つ家は、万が一の大地震に備えるために、早めの診断・対策が求められます。
以下のような項目に当てはまる場合、専門家による耐震診断の実施を強くおすすめします。


■ 築40年以上経っている(1981年以前)

前章でも触れた通り、1981年以前の木造住宅は旧耐震基準で建てられており、大きな地震の想定がなされていない設計になっています。
また、築年数が40年以上になると、構造材そのものの劣化や緩みも進行していることが多く、設計上の弱さに加えて“経年劣化”というリスクも重なります。


■ 壁が少なく、大きな一室空間になっている

リビングとダイニングをひとつの空間にまとめた広いワンルーム構造は、開放感が魅力的な反面、耐力壁(地震の力に耐える壁)の量が不足しやすくなります。

壁が少ないと、建物全体のバランスが悪くなり、地震の力を受けたときに「ねじれ(捩じれ)」が発生しやすくなるため、倒壊リスクが高まります。


■ 1階部分にガレージやピロティがある

1階が車庫、2階が居住スペース」といったピロティ構造の住宅も注意が必要です。これは、1階に壁が少なく、柱だけで上階を支えているため、地震の際に1階部分が潰れてしまう「ソフトストーリー倒壊」のリスクがあるためです。

特に古い木造住宅の場合、鉄骨補強などがされておらず、構造的に非常に不安定なケースも多く見られます。


■ 老朽化が進み、構造材に劣化や腐食が見られる

築年数の経過とともに、木材は乾燥によるひび割れ、接合部の緩み、金物の錆びなど、少しずつ耐力を失っていきます。
また、雨漏りなどの影響で構造材が腐朽している場合、地震の揺れによってその部分から壊れ始める危険性が高くなります。

見た目にはわかりにくいこともあるため、天井裏や床下などの点検調査が重要です。


■ シロアリの被害を受けている

シロアリに食害された柱や土台は、見た目がそのままでも中身がスカスカになっていることがあり、強度が大きく低下しています。

耐震補強工事の際に土台や柱を調査した結果、耐震以前に構造の再構築が必要だったというケースも少なくありません。
シロアリ対策と耐震補強は、同時に行うことで効率的かつ効果的です。


■ まずは耐震診断で現状を知ることが第一歩

これらのリスクを抱えた住宅でも、すべてが即座に危険というわけではありません。
大切なのは「今の住まいの耐震性を正しく知ること」です。

  • 自分の家がどれくらいの耐震強度を持っているのか
  • どこに弱点があるのか
  • どのような補強をすれば安全性を高められるのか

こうした点を明らかにするために、まずは専門の耐震診断を受けることが非常に重要です。
補助金制度を利用すれば、費用負担を抑えて診断を受けることも可能です。

耐震補強の主な方法と費用の目安

耐震補強の方法は、建物の築年数、構造、劣化状況などに応じて最適な工法を選ぶ必要があります
すべての家に同じ補強を施すわけではなく、「どこに弱点があるか」を診断で把握した上で、その箇所に適切な対策を施していきます。

以下に、代表的な補強方法とその内容、費用の目安をご紹介します。


補強方法内容費用目安
筋交いの追加柱と柱の間に斜め材(筋交い)を入れて、壁の強度を高める方法。主に壁の耐力不足を補う目的で用いられます。10〜30万円/箇所
耐力壁の新設・補強壁に構造用合板やモイス、ダイライトなどの面材を貼ることで、横からの揺れに強い壁を作る工法。既存の壁の内側から補強するケースもあります。20〜50万円/箇所
金物による接合部の強化柱・梁・土台などの接合部に耐震金物(ホールダウン金物や筋交いプレート)を追加し、部材同士のズレや抜けを防ぎます。小規模ながら効果的な補強の一つ。5〜15万円/箇所
基礎の補強ひび割れや鉄筋のない「無筋基礎」の場合、増し打ち補強や布基礎の巻き立てなどを行って、建物を支える土台そのものを強化します。施工範囲が広いとコストが高くなります。50〜150万円前後
屋根の軽量化瓦屋根の重さは、建物の揺れを大きくする要因に。金属屋根やスレート屋根など軽量な素材に葺き替えることで、耐震性を向上させることができます。断熱・防水性能の改善にもつながる場合があります。約100万円〜

■ 耐震補強にかかる総費用の目安

上記の工法を組み合わせて行うのが一般的で、補強範囲や建物の広さによっても費用は変わります。

  • 最低限の補強(2〜3カ所の補強):100万円前後
  • 一般的な一戸建ての耐震補強(5〜8カ所):200〜300万円程度
  • 大規模な補強・断熱改修と併用:400万円以上になることも

ただし、耐震補強は「数をこなすこと」ではなく、「本当に必要な場所に正しく補強を行うこと」が大切です。


■ 専門家による診断と設計が不可欠

補強内容や費用は、設計士や建築士、耐震診断士のアドバイスを受けながら慎重に検討しましょう。
特に補強の優先順位を間違えると、費用をかけても効果が薄いという事態にもなりかねません。

たとえば:

  • 耐力壁を強化したのに、土台がシロアリで弱っていた
  • 接合部を強くしたが、屋根が重く揺れが大きいまま

といったように、建物全体のバランスを見て判断することが重要です。


■ 補助金制度も活用できる

耐震補強には、自治体の補助制度を利用できるケースが多くあります。

  • 耐震診断費用の補助
  • 補強設計・工事費の補助(上限100〜200万円など)

市区町村によって制度や申請条件が異なるため、工事前に確認しておきましょう。

耐震診断と補助金制度について

耐震補強工事に取りかかる前に、必ず行いたいのが「耐震診断」です。
耐震診断とは、建物の構造・劣化状況・地盤条件などを調べたうえで、「今の建物がどれくらいの地震に耐えられるか」を数値で評価する調査です。

特に、1981年以前に建てられた木造住宅や、過去に大きな改修をしていない家は、必ず診断を受けて現状を正確に把握することが重要です。


■ 耐震診断でわかること

耐震診断では、以下のようなポイントが確認されます。

  • 壁の量や配置が適切か(偏っていないか)
  • 接合部や金物の状態
  • 基礎のひび割れや劣化状況
  • 屋根の重さや形状
  • シロアリなどによる構造材の被害

診断の結果は「上部構造評点」という数値で表され、目安として以下のように判断されます。

上部構造評点判定基準
1.5以上一応倒壊しない
1.0以上1.5未満倒壊する可能性がある
1.0未満倒壊する可能性が高い

この数値が1.0未満の場合は、耐震補強の必要性が高いとされ、補助金の対象にもなりやすくなります。


■ 愛知県内でも利用できる耐震診断・補助制度

多くの自治体では、耐震診断や補強設計、耐震工事に対して補助金を支給しています。

例えば愛知県内の多くの市町村では、以下のような支援が受けられるケースがあります。

  • 耐震診断費用の全額補助(上限5万円程度)
  • 補強設計費の一部補助(上限10〜20万円)
  • 補強工事費の1/2補助(上限100〜120万円など)

自治体によって制度の内容は異なり、以下のような条件が設けられている場合もあります。

  • 1981年以前に着工された住宅であること
  • 耐震診断を受けて、評点が1.0未満であること
  • 個人が所有し、現に居住している住宅であること
  • 工事は登録業者または認定設計士が行うこと

■ 手続きや注意点

補助金を利用するには、事前に申請手続きが必要です。
工事後の申請では補助が受けられない場合が多いため、必ず着工前に手続きを行いましょう。

また、予算の上限に達すると受付が締め切られることもあるため、早めの情報収集と準備がカギになります。

  • 自治体の住宅課や建築指導課などに問い合わせる
  • 自治体の公式サイトから要綱や申請書類を確認する
  • 地域の建築士や設計事務所に相談する(申請代行も可能な場合あり)

■ 専門家との連携が安心です

補助金の活用を含めた耐震診断・補強をスムーズに進めるには、信頼できる設計士や建築士に相談することが大切です。
補助制度に詳しい専門家なら、診断から補強工事、申請まで一貫してサポートしてくれるため、不安なく進められます。

耐震補強と一緒に考えたい「断熱リフォーム」

耐震補強を行う際は、壁や床の一部を解体する工事が発生します。
このタイミングは、通常のリフォームでは手が届きにくい断熱性能の向上を図る絶好のチャンスです。

特に1980年代以前に建てられた木造住宅は、断熱材が入っていない、または不十分なことが多く、耐震性と同様に住まいの快適性に課題を抱えています。
せっかく家の中を壊して補強するのであれば、「地震に強く、しかも冬暖かい・夏涼しい家」を一緒に目指しましょう。


■ 耐震補強+断熱改修でできること

耐震補強の工事に合わせて、以下のような断熱・気密改修が可能です。

改修内容概要効果
壁の断熱材の追加・交換グラスウールや高性能ウレタンボードなどを新たに充填冬の寒さ・夏の暑さをやわらげ、冷暖房効率がアップ
床・天井の断熱強化床下や天井裏の断熱材を入れ替え足元の冷えや屋根からの熱気を抑える
サッシの交換(ペアガラス・Low-Eガラス)単板ガラス→複層ガラス・アルミ→樹脂サッシへ窓からの熱の出入りを大幅に抑制、結露対策にも有効
気密性の向上隙間を防ぎ、外気の流入・漏気を抑える断熱効果を引き出し、室内の温度を安定化

■ 長期的な快適性と光熱費の削減にもつながる

断熱性が向上すると、冷暖房にかかるエネルギーが減るため、毎月の光熱費も削減できます。
また、部屋間の温度差やヒートショックのリスクも低下し、健康にもやさしい住まいになります。

耐震補強は「命を守る工事」ですが、断熱リフォームは「快適と安心を両立させる工事」。
どちらも家の性能を大きく底上げする重要な要素であり、一度の工事で一緒にやることで費用対効果も高くなります


■ 補助金の対象になる場合も

自治体によっては、断熱改修に対する補助金制度や、省エネリフォーム支援策(例:先進的窓リノベ、こどもエコすまい支援事業など)を併用できる場合があります。
耐震補強+断熱改修を一体で計画することで、トータルコストを抑えることも可能です。


■ 設計士や専門家とセットで検討を

性能向上リフォームを成功させるには、建物全体を見渡して、「どこをどう変えるべきか」を正しく判断することが重要です。
経験豊富な設計士に相談すれば、耐震と断熱のバランスを見ながら、暮らしの質を高める最適な提案が得られるはずです。

設計事務所に相談するメリット

耐震補強工事というと、「構造を強くするだけの工事」と思われがちですが、実際は暮らしの快適さや見た目の美しさも含めて考える必要があります。
必要な補強をしながら、住まいの使い勝手やデザインをどう保つか―― そのバランスを取るのが難しく、ここで設計事務所の力が発揮されます


■ 「ただ強くする」ではなく、「暮らしを守る補強」を計画できる

設計事務所では、まず建物全体の構造を多角的に診断し、その上で「どこを補強すれば全体が安全になるか」「どこは現状でも十分なのか」を判断します。
これにより、必要最小限で効果的な耐震補強が可能になります。無駄な補強工事を避けることで、費用を抑えつつ確実に耐震性を高めることができるのです。


■ 性能向上リフォームとして、断熱・省エネ改修もトータルで提案

壁を壊す工事に合わせて、断熱材の入れ替えや窓の改修などを同時に行えば、家の性能が大幅にアップします。
設計事務所なら、耐震と断熱のバランスを取りながら、長期的に快適な住まいを実現するリノベーション計画が立てられます。
見た目もすっきり、空間の使いやすさも損なわず、デザイン性にも配慮できるのが特徴です。


■ 予算に応じて「どこから優先的にやるか」を整理してくれる

すべてを一度に工事するのが難しい場合でも、設計事務所は予算に応じた優先順位を提案できます。

  • まずは命に関わる部分(1階の耐震補強)から
  • 将来に備えて断熱改修は段階的に
  • 劣化の激しい部分から先行して工事 など

限られた予算でも、最大限の効果が出るよう工夫された提案してくれると思います。



■ 工務店任せでは難しい「全体最適」を実現

工務店に直接相談すると、「構造だけ強くする」「工事がしやすいところから補強する」といった対応になりがちです。
一方で設計事務所は、暮らしの質・安全性・見た目・コストのバランスを総合的に考慮し、長期的に満足できる住まいを目指して計画します。


■ 長く安心して暮らすために、まずは相談から

耐震補強は“命を守る工事”であると同時に、“これからも安心して暮らし続けるための工事”でもあります。
「補強の方法に不安がある」「補助金を使いたいけど複雑そう」「ついでに断熱リフォームも考えている」――そういった悩みこそ、設計事務所に相談することで最適な道が見えてきます

まとめ|安全・快適な住まいづくりの第一歩を

木造住宅の耐震補強は、ただ建物を「強くする」だけの工事ではありません。
それは、家族の命と暮らしを守るための備えであり、これから先の人生を安心して過ごすことができます。

そして、耐震補強は家の壁や床を一度壊すことが多いため、断熱性の向上や間取りの見直しなども、あわせて検討する絶好の機会になります。
「地震に強い」だけでなく、「夏涼しく冬あたたかく、快適に暮らせる住まい」へと一新することも可能です。


耐震・断熱・デザインをバランスよく両立

足立和太建築設計室では、愛知県を中心に、耐震性・断熱性・デザイン性をトータルで考えたリフォームやリノベーションのご相談を承っています。

  • どこを優先して補強すべきか
  • 断熱改修とあわせて性能をどう高めるか
  • 助成金をどこまで使えるか
  • デザインや使い勝手を損なわない計画にするには?

など、お客様ごとの住まいの状況やご予算に応じて、一つひとつ丁寧にアドバイスいたします。


「何から始めればいいか分からない」という方へ

「築年数が古くて地震が心配…でもどこに相談すればいいのか分からない」
「耐震診断や補助金のことを誰かに教えてほしい」
「ついでに断熱や間取りの改善もできたらいいな」
——そんな方は、まずは無料相談から始めてみませんか?

はじめの一歩を一緒に考えることから、住まいの未来は動き出します。
私たちは、設計の力で安心と快適を両立させるお手伝いをいたします。

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