60代からの注文住宅|老後の安心を叶える資金計画と家づくりのコツ

60代になって、子育てもひと段落し、これからは「自分たちらしい暮らしを大切にしたい」と思うようになった方も多いのではないでしょうか。
最近では、「老後を見すえた家を建てたい」と考える60代のご夫婦も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
とはいえ、「この年齢で家を建てるのってどうなんだろう?」「老後資金とのバランスは大丈夫かな…」と、不安もたくさんありますよね。
さらに、「ローンは組める?」「将来介護が必要になったらどうしよう?」など、考えることはたくさんあるはずです。
この記事では、
- 老後資金と住宅費のバランスのとり方
- 60代にぴったりな間取りや設備の工夫
- 家を建てる以外の選択肢(建て替えやリノベーション)まで、
わかりやすくご紹介します。
「これからの暮らしを、もっと心地よく整えたい」。
そんな方に、ぜひ読んでいただければと思います。
60代から家を建てるという選択|注文住宅は本当にアリ?
セカンドライフの住まいを考えるタイミング
60代って、人生のひと区切りを迎える時期ですよね。
お仕事を退職されたり、お子さんが独立してふたり暮らしに戻ったりと、生活のスタイルが大きく変わるタイミングです。
「これからの暮らしを、もっと自分たちらしく心地よいものにしたい」
[子供の自立して、今の家では広すぎる」
そう思い始める方も多く、実際に住まいを見直すご夫婦も増えています。
とくに、「まだ元気なうちに、将来も安心して暮らせる家に住み替えたい」と考えて、注文住宅を選ばれる方も少なくありません。
今のうちに住環境を整えておけば、この先20年、30年を見すえた“セカンドライフ”もずっと快適になりますよ。
注文住宅を選ぶ60代夫婦が増えている理由
「せっかく家を建てるなら、自分たちにぴったり合った暮らしやすい家にしたい」
そんな思いを叶えてくれるのが、注文住宅です。
間取りも仕様も自由に考えられるから、たとえば…
- 家の中は段差をなくして、バリアフリーにしたい
- 夫婦ふたりだから、小さくて掃除がラクな家にしたい
- 将来介護が必要になったときも安心できる間取りにしたい
…といったご希望も、ひとつひとつカタチにしていけます。
最近は「平屋で、すべての生活が1階で完結する家にしたい」といったご要望もよくありますし、断熱性の高い素材を使って「冬でもあったかい家」にするのも人気です。
ご夫婦の暮らし方に合わせて、無理なく・心地よく過ごせる住まいをつくれるからこそ、60代で注文住宅を選ぶ方が増えているんですね。
持ち家 vs 賃貸:老後の安心感をどう得るか
老後の暮らしって、できるだけ不安を減らして安心して過ごしたいですよね。
そのためには「住まいをどうするか?」がとても大切になってきます。
たとえば賃貸の場合、毎月家賃を払わないといけません。
年金だけの生活になったとき、「家賃がちょっと負担に感じる…」という心配も出てくるかもしれません。
しかも、年齢が上がると、新しく賃貸物件を借りにくくなることもあるんです。
その点、持ち家があれば「この家で、ずっと安心して暮らせる」という気持ちになれますし、毎月の家賃に悩むこともなくなります。
将来、体の状態に合わせてリフォームすることもできますし、「自分の家」だからこその自由さがあります。
もちろん、注文住宅はある程度の資金が必要になるので、すべての方に向いているとは言いきれません。
でも、「これからの暮らしを安心して過ごしたい」と考える方にとっては、選択肢のひとつとしてしっかり検討してみる価値があると思います。
注文住宅にかかる費用と老後資金の考え方
注文住宅の費用ってどのくらいかかるの?
注文住宅って「高そう…」というイメージ、ありますよね。
実際のところ、建物だけの費用でだいたい2,000万円〜3,000万円くらいがひとつの目安になります(※広さや仕様によって幅はあります)。
ただし、それだけでは終わりません。
たとえば…
- 設計・監理費(建築士に依頼する場合)
- 地盤改良や上下水道の引き込み工事
- 登記や火災保険などの諸費用
- 駐車場・塀・庭まわりといった外構工事
こういった「付帯費用」も数百万円単位でかかってくることが多く、トータルでは3,000万円〜4,000万円前後になるケースもよくあります。
なので、「建物だけの価格」ではなく、全体の予算を見ながら計画を立てることが大切なんです。
60代の家づくり、ローンはアリ?ナシ?
「ローンを組んででも建てるべき? それとも現金で?」
このあたり、悩まれる方も多いですよね。
結論から言うと、60代の方の場合は、可能であれば“現金払い”がベストです。
住宅ローンは年齢によって制限がある金融機関も多く、仮に借りられたとしても、返済期間が短くなることで月々の支払いが多くなりがちです。
たとえば、10年ローンだと月10万円以上の返済になるケースも…。
これでは、せっかくの年金生活が圧迫されてしまいますよね。
もちろん、手持ちの資金だけでは足りないという場合もあると思います。
そのときは、「退職金の一部を充てる」「少額だけローンを組む」など、将来の生活に支障が出ない範囲での資金計画を考えるのがポイントです。
老後資金と家づくり、どうバランスをとる?
家にどれだけお金をかけられるかは、「老後資金とのバランス」で考える必要があります。
老後にはこんな出費も考えられます:
- 医療費(検診や入院など)
- 介護費用(施設に入る・自宅介護のための設備)
- 車や旅行、趣味などの娯楽費
- 万一に備えた予備費
こうした支出も踏まえて、「家にいくらまで使えるのか」を逆算することが大切です。
おすすめなのは、「老後資金のざっくりシミュレーション」をしてみること。
たとえば、夫婦ふたりで90歳まで暮らすと想定して、月の生活費×残り年数で計算してみると、「最低限これだけは残しておきたい」という金額の目安が出てきます。
ここでは、人生100年時代、70歳まで働くと言う前提で考えてみます。
そのうえで、「この金額なら、無理なく家づくりに回せそう」という予算をシミュレーションしてみます。
前提条件
項目 | 前提 |
---|---|
世帯 | 60代夫婦世帯(夫:会社員→再雇用、妻:専業主婦またはパート) |
退職金 | 平均1,700万円(総務省 家計調査より) |
貯蓄額 | 平均2,300万円/中央値1,400万円 |
公的年金 | 月額 約22万円(夫:厚生年金+妻:国民年金) |
老後の生活費 | ゆとりある生活:月30万円(年間360万円) |
再雇用収入 | 月15万円程度×5年(65〜70歳)→ 約900万円の収入追加 |
老後の生活費シミュレーション(65〜90歳、再雇用あり)
条件 | 年金収入 | 生活費 | 年間差額 | 25年合計(65〜90歳) |
---|---|---|---|---|
基本生活(23万/月) | 約264万円 | 約276万円 | ▲12万円 | ▲300万円(不足) |
ゆとり生活(30万/月) | 約264万円 | 約360万円 | ▲96万円 | ▲2,400万円(不足) |
再雇用分(月15万×5年) | +約900万円の収入追加 | →差額縮小 | 600万円〜▲1,500万円→不足額が大きく圧縮 |
→ つまり、ゆとりある生活を希望しても、再雇用収入が加わることで老後の不足額は大幅に縮小します。
追加でかかる可能性の老後費用(予備資金)
項目 | 金額目安 | 備考 |
---|---|---|
医療・介護費 | 約500〜1,000万円 | 自宅介護・施設利用などを想定 |
趣味・旅行など | 約200〜400万円 | 趣味・車・旅行など |
緊急予備費 | 約300万円 | 修繕・入院・子への支援など |
👉 合計で 1,000〜1,700万円 程度の備えがあると安心。ここでは1,000万円を見込みます。
家づくりに回せる予算(再雇用分を反映)
世帯状況 | 総資産(貯蓄+退職金+再雇用) | 必要老後資金(生活費+予備費) | 残る住宅予算 | 適した家づくりの形 |
---|---|---|---|---|
平均的(貯蓄2,300万+退職金1,700万+再雇用900万) | 約 4,900万円 | ▲2,500万円(生活+予備費) | 約2,400万円 | 小さな注文住宅 |
中央的(貯蓄1,400万+退職金1,200万+再雇用900万) | 約3,500万円 | ▲2,500万円 | 約1,000万円 | 部分的なリノベーション |
ゆとり層(貯蓄3,000万+退職金2,300万+再雇用900万) | 約6,200万円 | ▲2,500万円 | 約3,700万円 | 広めの注文住宅/性能とデザインにこだわった家 |
ポイントまとめ|70歳まで働く前提での現実的な家づくり
- 再雇用の収入を老後資金の不足分に充てることで、家に回せる予算が増える
- 「ゆとりある老後生活+快適な家」の両立も、現実的な選択肢となる
- 60代は「完全リタイア」ではなく、「再設計と準備の時期」として考えるのが◎
- 家にお金をかけすぎず、性能・管理・将来性を重視した家づくりが主流に
60代夫婦に適した間取りと設計の工夫
ワンフロアで完結する間取りが人気の理由
年齢を重ねると、「階段の上り下りがしんどくなってきたな…」と感じること、ありますよね。
そんな理由から、60代以降の家づくりでは「平屋」や「1階で暮らしが完結する間取り」がとても人気なんです。
たとえば、リビング・キッチン・寝室・お風呂やトイレがすべて1階に揃っていれば、日常生活で階段を使う必要がなくなり、体への負担がグンと減ります。
さらに将来的に、万が一介護が必要になった場合でも、
「寝室からトイレが近くて移動しやすい」
「段差が少なくて、車いすでも動きやすい」
といった安心感にもつながります。
もちろん、「平屋だと土地が広くないと建てられないのでは?」と思う方も多いのですが、最近では“1階完結型”の2階建てにすることで、土地の広さに合わせた工夫も可能ですよ。
ヒートショックを防ぐ、断熱・気密性能の大切さ
60代以上の方が安心して暮らすには、「家の性能」もとっても大事。
特に注目したいのが、断熱性と気密性です。
たとえば冬の寒い日に、暖かいリビングから急に冷えた脱衣所やトイレに行ったときに、血圧が急上昇して倒れてしまう「ヒートショック」のリスクがあること、ご存じでしょうか?よくテレビで特集されてますよね。
これは実際に、家庭内で起こる事故としてとても多いケースです。
だからこそ、家じゅうの温度差をできるだけ少なくすることがとても大切。
高性能な断熱材や、窓の断熱性能が高いサッシ(たとえばLow-E複層ガラスなど)を使うことで、どの部屋にいても快適な室温を保つことができます。
エアコンの効きもよくなるので、光熱費の節約にもつながります。
将来を見すえた、バリアフリー&柔軟な間取り
今はまだ元気でも、「この先もずっと、この家で安心して暮らせるかな?」という視点も忘れずに持っておきたいですよね。
たとえば…
- 廊下やトイレに手すりをつけておく
- お風呂や玄関などの段差をなくす
- トイレや洗面所のスペースを車いすでも使いやすい広さにしておく
こうした“先回りの配慮”を設計に組み込んでおけば、将来的に身体の状態が変わっても、安心して住み続けられます。
また、「今は使っていないけど、将来親と同居するかも」「夫婦どちらかがひとりになった後も住みやすい家にしたい」といったライフステージの変化に備えて、間仕切りが少なくて可変性のある間取りにしておくのもおすすめです。
たとえば、いまは広いLDKとして使っている空間を、将来は仕切って1部屋増やす…なんてことも柔軟に対応できますよ。
家づくりは「今の自分たち」に合ったものをつくることも大切ですが、
「10年後、20年後の自分たちにも優しい家になっているか?」という視点もとても重要です。
ほんの少しの工夫で、将来の暮らしがもっと安心で、もっと快適になります。
そんな視点を大切にしながら、ご夫婦らしい住まいを形にしていきましょう。
60代からの家づくりの詳しくは「60代から始める老後の家づくり:安心・快適な暮らしを実現する5つのポイント」をご覧ください。
住み替え?建て替え?リノベーション?——60代からの住まい選び
60代は、「これからの暮らしに合った家にしたいな」と思い始める方が増える時期。
いざ考え始めると、「今の家をどうしよう?」「建て替える?それとも住み替える?」と、いろんな選択肢が出てきますよね。
ここでは、それぞれのパターンについてメリット・デメリットを交えながら、わかりやすくご紹介していきます。
今の家をどうする?建て替えという選択肢
「今の家、年季は入ってるけど立地は気に入ってるんだよね」
そんな方にとって、建て替えはひとつの有力な選択肢です。
古くなった建物をいったん解体し、同じ土地に新しい家を建てるので、住み慣れた地域にそのまま住み続けられるのが大きな魅力。
インフラ(上下水道や電気・ガスなど)はすでに整っているので、その点のコストは抑えられる場合もあります。
ただし注意したいのが、工事中に住む「仮住まい」が必要になること。
引っ越しの手間や解体費、仮住まいの家賃、荷物の出し入れなど、費用と労力がそれなりにかかります。
また、古い住宅地では「再建築不可」の土地もありますので、事前に建築の可否や制限をよく調べておくことが大切です。
賢くコストダウンするなら「中古住宅+リノベ」も
「なるべく費用は抑えたいけど、快適に暮らせる家がいい」
そんな方には、中古住宅を購入してリノベーションするという方法もおすすめです。
最近は、「断熱・気密・耐震」をしっかり向上させる性能向上リノベーションが注目されていますが、全体をリノベーションする場合は、結構費用がかかってしまいます。
費用を抑えるなら、生活の中心になる部屋だけをリノベーションする、部分的なリノベーションが良いと思います。
たとえば…
- LDK,洗面脱衣、浴室の壁・床・窓に断熱材を追加して、寒さ・暑さに強い家に
- 使いづらい間取りを、ゆったりとしたワンルーム風に変更
- 古い水回りを、最新の省エネ設備に入れ替え
といった工夫で、快適さを手に入れながら、費用は抑えられるのが魅力です。
また、物件選びの段階で「バス停やスーパーが近い」など、老後の暮らしやすさを基準にできるのもポイント。
中古+リノベなら、「立地」と「コスト」のバランスをとりやすくなります。
「小さく建てて、豊かに暮らす」という発想
60代からの家づくりで最近増えているのが、「コンパクトだけど快適な家」というスタイル。
子どもが独立して、今はご夫婦ふたり暮らしという方には、
「今の家、大きすぎて掃除も管理も大変…」という声が少なくありません。
そこで注目されているのが、「無理に広さを求めず、ちょうどいいサイズで建てる」という考え方。
たとえば…
- 20〜25坪くらいの平屋
- 無駄をそぎ落とした動線重視の間取り
- 収納や水回りを集中させて、移動もラクに
- 高性能な断熱材や自然素材を取り入れて、心地よく暮らす
「小さい家=質素」ではなく、“質を高めて、手間を減らす”という豊かさが感じられる暮らし方なんです。
しかも、コンパクトな家は冷暖房効率も良く、光熱費も安く済むことが多いので、老後の家計にもやさしいというメリットもあります。
あなたに合った選択肢は?
住み替え、建て替え、リノベーション、それぞれに良さがあります。
大切なのは、「自分たちの暮らし方」や「将来の安心感」に合っているかどうか。
- 今の土地に愛着があるなら建て替え
- 予算を抑えつつ快適さを求めるなら中古+リノベ
- 掃除も維持もラクにしたいならコンパクトな新築
そんなふうに、ご自身の考えや価値観に照らし合わせて、じっくり選んでみてくださいね。
住み替え、建て替えについて詳しくは「住み替え?建て替え?60代からの「終の住処」の選び方【戸建てorマンションも解説】」をご覧ください。
まとめ|安心・快適な老後を叶えるために、今できる家づくり
60代からの家づくりは、「若い頃とはちょっと違った視点」が大切になります。
体力や生活スタイルの変化を見すえながら、これから先の20年・30年をどう過ごしたいかをじっくり考えるタイミングです。
そのうえで大切なのが、「暮らしやすさ」と「安心感」。
- 毎日の移動がラクになる間取り(ワンフロア・コンパクト動線など)
- ヒートショックを防ぐあたたかな室内環境(断熱・気密のしっかりした家)
- 介護や体の変化にも対応できるバリアフリー設計
- 将来の支出も見据えた無理のない資金計画
こういった要素を、最初の段階からきちんと考えておくことが、老後の暮らしをぐっとラクに、豊かにしてくれます。
「今だからこそ、自分たちにちょうどいい家をつくる」
そんな家づくりは、これからの人生をもっと心地よく、前向きに過ごすための大きな一歩になるはずです。
人生の節目を迎えるこの時期に、「本当に暮らしやすい家とは?」を一度考えてみてはいかがでしょうか?
私たちは、60代からの家づくりや住み替えに関するご相談も承っています。
老後資金とのバランスや、将来を見据えた間取りの工夫など、気になることがあればどんなことでもご相談ください。
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