同じ“建築士”でもこんなに違う!設計事務所・ハウスメーカー・工務店の特徴を比較

家づくりを考え始めたとき、多くの人が「建築士に相談しよう」と思います。しかし、同じ“建築士”という資格を持っていても、働く場所や立場によって、家づくりに対するアプローチは大きく異なります。
例えば、設計事務所に所属する建築士は、家の間取りやデザイン、性能にこだわりながら、施主一人ひとりのライフスタイルに合わせた完全オリジナルの家を設計するのが得意です。一方、ハウスメーカーの建築士は、標準プランや規格住宅をベースに効率よく設計し、工期や費用の明確さを重視します。工務店の建築士は、地域密着で施工と設計を一括で対応できる柔軟さが強みですが、規模や経験によって提案力に差が出ることもあります。
このように、同じ「建築士」といっても、それぞれの得意分野や進め方には違いがあります。せっかくの家づくりで失敗しないためには、自分の暮らしや希望に合った建築士を選ぶことが大切です。
この記事では、設計事務所・ハウスメーカー・工務店の建築士それぞれの特徴をわかりやすく比較しながら、特に設計事務所に依頼するメリットについて詳しく解説します。家のデザインや性能、暮らしやすさにこだわりたい方にとって、参考になる内容になっています。
そして最後に、建築士だからわかる建築士 選びに対する注意事項をまとめておきます。このことが一番重要かもしれません。
建築士の種類と特徴
設計事務所の建築士
設計事務所に所属する建築士は、家づくりにおける自由度が最も高く、施主一人ひとりの生活スタイルや好みに合わせたオリジナル設計が可能です。間取り、動線、収納、インテリアデザイン、外観まで、細部にわたってこだわることができます。また、高断熱・高気密や耐震性など、住宅性能の面でも柔軟に対応できるため、快適で長く住める家を実現できます。
特徴
- 完全自由設計で、家族構成やライフスタイルに合わせた間取り・動線・収納を設計できる
- 高断熱・高気密、耐震性などの性能を、予算や希望に応じて最適化できる
- 工務店の施工を監理者として確認しながら工事を進めるため、建物の品質や仕上がりも高い水準で確保可能
- 設計段階から細かく打ち合わせを行うため、完成後の満足度が非常に高い
向いている人
- デザインや暮らしやすさに妥協したくない方
- 家の性能や快適性を重視したい方
- 予算はある程度柔軟に考え、長く愛せるオリジナルの家を建てたい方
- ハウスメーカーのような早い施工ではなく、しっかり丁寧に作り込んで建てたい方
ハウスメーカーの建築士
ハウスメーカーの建築士は、規格住宅や標準プランをベースに設計することが多く、効率よく家を建てられるのが特徴です。標準仕様やパッケージ化された工法を使うため、工期が短く、価格も明確になっています。大手ハウスメーカーの場合、施工後の保証やアフターサービスが充実している点も安心材料です。
特徴
- 標準仕様や規格プランに沿った設計が中心で、工期が比較的短い
- 設計の自由度は制限されるが、施工の安定性や品質は確保されている
- 大手ならアフターサービスや保証が充実しており、建てた後も安心
向いている人
- 家づくりの費用や工期を最優先に考える方
- 標準プランや規格住宅で十分満足できる方
- 安定した施工と保証を重視する方
工務店の建築士
工務店の建築士は、地域密着型の家づくりを得意とし、設計から施工まで一貫して担当できる場合が多いです。地域の気候や施工事情を熟知しているため、細かな調整や柔軟な対応が可能です。ただし、工務店の規模や経験によって提案力や施工力に差が出ることもあります。
特徴
- 地域に根ざした工務店で、施主の希望に柔軟に対応可能
- 設計と施工を一括で担当できるため、連携がスムーズ
- 経験や規模により、デザイン力や施工品質に差がある
向いている人
- 地域に密着した相談しやすい工務店で建てたい方
- 設計の自由度と施工の安心感を両立したい方
- 自分の要望に柔軟に応えてくれる建築士を希望する方
設計事務所に依頼するメリット
設計事務所に住宅設計を依頼すると、ハウスメーカーや工務店では得られない多くのメリットがあります。ここでは、特に注目すべきポイントを詳しく解説します。
1. 暮らしに合わせた完全オリジナル設計
設計事務所では、家族構成や生活スタイル、趣味や好みに合わせた完全オリジナルの設計が可能です。たとえば、子育て世代なら「子どもが遊びながら家事を見守れる動線」、共働き夫婦なら「帰宅後すぐに手を洗える洗面の配置」、高齢者世帯なら「段差の少ないバリアフリー設計」など、日々の暮らしを想定した間取りや収納を作り込むことができます。
一番の特徴は、住う方が希望しているであろう「家」を、丁寧な打ち合わせの中から咀嚼して「家」として具体化してくれるということでしょうか。
標準プランに頼らず、一つひとつの空間を施主の生活に合わせて調整できるため、完成後に「こうしておけばよかった」と後悔する可能性が低くなります。
2. 性能とデザインの両立
設計事務所はデザイン性だけでなく、住宅性能にもこだわった設計が可能です。
- 断熱・気密性:冬暖かく、夏涼しい快適な住まいを実現
- 耐震性・耐久性:地震や長期使用にも安心
- 空間の使いやすさ:光や風の取り入れ方、家具配置も考慮
さらに、インテリアや外観のデザインも自由に計画できるため、機能と美しさを両立した家を作れます。例えば、外観の素材や色、リビングの窓の形や位置までこだわることが可能です。設計段階から性能とデザインの両立を考えることで、見た目も暮らしやすさも満足できる住まいになります。
完成した時には、周辺の家々とはちょっと違うぞという、「佇まい」になります。
3. 完成後の満足度が高い
設計事務所では、施工前の打ち合わせやプラン検討の段階で、施主の暮らし方や希望を細かくヒアリングします。例えば、収納の量や位置、家事動線、光や風の入り方、空調計画、照明計画などを徹底的に確認しながら設計するため、完成後に「生活してみたら使いにくい」と感じることが少なくなります。
また、家族の将来の変化(子どもの成長や高齢化など)も考慮して設計できるため、長く快適に住める家になります。
一方、細かな打ち合わせ、決定事項が多くなるため、楽しみである反面、大変でもあります。
4. 施工における安心感
設計事務所は、設計図をもとに見積もりを取り、適正な工務店を施主と一緒になって選定します。そして工務店が決まれば、その施工を担当する工務店や専門業者と協議しながら家を建てるため、施工品質も高く保たれます。設計士が現場を確認しながら進めることで、図面通りに正確に施工され、細かい調整やトラブル対応も迅速に行えます。
つまり、「設計の自由度」と「施工の安心感」を両立できるのが、設計事務所に依頼する大きなメリットです。
ハウスメーカー、工務店の家づくりとの決定的な違いは、「建築のプロの施工者」対「素人の施主」という施主にとって少し心細い形が、施主側にも「建築のプロ」が入り、適正に物事を判断し、施工が進むということです。ちょっとした「用心棒」といったイメージでしょうか。
まとめ
建築士は同じ資格を持っていても、所属する組織や立場によって得意分野や進め方が大きく異なります。それぞれの特徴を理解することで、自分たちの暮らしに合った建築士を選ぶ判断材料になります。
設計事務所の建築士
- 自由設計が可能:家族構成やライフスタイル、趣味や好みに合わせて間取りや動線、収納まで自由に設計できる
- 性能とデザインの両立:高断熱・高気密、耐震性などの性能を確保しつつ、外観や内装のデザインも希望に沿ったプランが作れる
- 完成後の満足度が高い:設計段階で生活動線や将来の暮らし方まで考慮するため、住んでからの快適さや利便性が高い
こんな方におすすめ
- 家のデザインや暮らしやすさに妥協したくない
- 長く快適に住める高性能な家を希望している
- 家族のライフスタイルに合わせた完全オリジナルの家を建てたい
ハウスメーカーの建築士
- 価格や工期が明確:規格プランや標準仕様に沿った設計が中心のため、費用や工期が予測しやすい
- 施工の安定性:施工方法や仕様が標準化されており、大手であれば保証やアフターサービスも充実
- デザインの自由度は限定的:間取りや外観、内装の自由度は制限される
こんな方におすすめ
- 工期や予算を最優先に家づくりを進めたい
- 標準仕様の住宅でも満足できる方
- 安心感のある保証やアフターサービスを重視する方
工務店の建築士
- 地域密着で柔軟な対応:土地や気候に合わせた設計や施工が可能で、細かい要望にも応えやすい
- 設計と施工の一貫体制:設計士と施工担当が連携して家を建てるため、現場での調整がスムーズ
- 提案力や施工力に差がある:規模や経験によって得意分野や対応力に違いがある
こんな方におすすめ
- 地域に根ざした工務店で相談しやすさや柔軟性を重視したい
- 設計の自由度と施工の安心感をバランスよく求めたい
- 小規模でも丁寧な家づくりを希望する方
家づくりの判断ポイント
家づくりで失敗しないためには、自分たちの優先順位を整理することが大切です。
- デザインや間取りの自由度を重視するか
- 価格や工期を優先するか
- 施工の安心感や地域密着性を重視するか
これらを踏まえるて、もし、「自分たちの暮らしにぴったりの家を建てたい」と考える方にとっては、設計事務所に相談することが最も満足度の高い選択肢になります。まずは希望やライフスタイルを設計士に伝えて、オリジナルの家づくりをスタートすることをおすすめします。
建築士だからわかる建築士選びでの注意事項
さて、建築士は専門職であるため、その人の能力がどれほどのものなのかということが、素人の方の目には判断しづらいという問題があります。
病院に行った時に、担当のお医者さんが「名医」なのか、「ヤブ」なのかわからないこととちょっと似ています。
しかし、家をつくるにおいて、ハウスメーカーにしろ、工務店にしろ、担当する建築士の能力がもっとも重要です。
最後に、建築士に必要とされる能力について深掘りしてみます。
資格を持っているからといって、設計がうまいとは限らない
建築士には木造建築士、2級建築士、1級建築士の3つの資格があります。
最も取得の難易度が高い資格が1級建築士です。
一般の方から見ると、1級建築士だったらきっと、設計の万能選手のように、どんな建物も素晴らしい設計をしてくれるのではないかと思われるのではないでしょうか。
しかし、実際は違います。資格はただの資格で、設計のうまさ、能力を示すものではありません。
もし、資格が設計のうまさを保証するものでしたら、世の中の建物はもっともっとかっこいいものになっているはずです。
実際は、たとえ1級建築士でも、図面の書けない人、プランニングの下手な人、デザイン性の全くない人、専門知識のない人、などいろいろな方が入り混じっています。
設計事務所にしろハウスメーカー、そして工務店にしろ、住宅を依頼する場合には、設計を担当してくれる建築士が、資格は当然のこととして、その建築士がどんな住宅を設計してきたかその実績を見ることがとても大切です。
繰り返しお伝えしますが、「建築士」であればみなが「良い設計」ができるわけではありません。
資格を持っているからといって、十分な知識・能力があるわけではない
住宅を設計する上で、どんな知識・能力が必要とされるか考えてみます。
構造的な知識
特に木造の住宅をつくる上で、基本的な構造の知識は必要不可欠です。
と言いますのは、鉄骨造とかRC造の場合はほぼ構造設計の専門家が入ります。しかし、木造においては構造の専門家が入る場合も当然ありますが、入らなくても設計は可能です。
特に工務店などの設計施工の場合に、構造設計が入らず担当の建築士が構造まで設計する場合に注意が必要です。その方が優秀な場合は問題ありませんが、そうでない場合には、木造の構造的なルールから逸脱して計画されたり、あるいは無理した架構でつくられたり、合理的でない構造計画で、予算が余計にかかったりといった問題が起きがちです。
平面計画の能力
平面計画は家づくりで最も基本的な要素ですが、これは千差万別。正解はありませんが、住う方の希望が反映されなければなりません。
特に住う方は建築の素人ですから、プロとして最も適切な平面計画を提案しなければなりません。
しかし、これができる建築士は、あまり多くはないのではないかと思います。
デザイン能力
建物をつくるということは、必然的に外観ができ、内部空間ができ、仕上げができてきます。
これらの要素をバランスをとりながら、住みやすく、使いやすく、空間的にも広がりを持ち、かつ景観的にも寄与するようなデザインとして、まとめきらなけらばなりません。
できあがったデザインは、好みの別れるところでもあり、デザイン的な相性も大切です。
納まりに対する知識
建築は基礎、柱、梁、屋根、外壁など様々な部材の組み合わせでできています。この組み合わせを「納まり」といいます。
これらを組み合わせるには、通気といって、空気の流れや、止水といって、雨が入らないように様々な「納まり」を工夫します。
この「納まり」に対する知識が不足していると、雨漏り、結露などのトラブルにつながっていきます。
性能に対する知識
昨今の住宅は、耐震性、断熱性、気密性など性能に対しても要求が高まっています。
断熱性能を考えるときには省エネ計算をしてシミュレーションをします。しかし、建築士によってはこの省エネ計算ができない人もいます。
さらに気密については、注意深い施工が要求され、どんなところに注意すべきかの知識も必要となります。
一方、建築士によっては、性能より、デザインということで、性能をあまり重視しない人もいます。
担当する建築士が性能に対して、どのような考えを持っているか、確認することも重要ですね。
空調に対する知識
ハウスメーカーや工務店では、エアコンは別途となっているケースもあるようですが、本当に住み良い家をつくるなら、エアコンは設計に含んで計画すべきです。昨今の高断熱高気密の家では、なおさらです。
エアコンの能力はカタログの畳数で決めてはいけません。カタログで選んでしまうと、間違いなく過剰能力となります。やはりしっかりと負荷計算をして適切な能力のエアコンを適切な施工方法で施工すべきでしょう。
設計する上では概ね上記のような知識・能力が必要とされます。これら全てを兼ね備えている建築士に設計を依頼するのが理想だと思います。
設計を担当される建築士の方が、どれほどの知識・能力を持っているか見極めることは、なかなか難しいとは思いますが、少なくとも建築士に必要とされる能力が多くあり、すべての建築士がその能力を持っているとは限らないということだけは理解していただけたらと思います。
ここまでご紹介したように、建築士にはそれぞれ特徴がありますし、能力にも幅があります。
もし、設計事務所にご興味がおありでしたら、間取りのアイデアやデザインの希望、住宅性能に関する疑問など、どんなことでもお気軽にご相談ください。
家づくりは、話を聞くだけでも具体的なイメージが広がり、理想の家に近づく第一歩です。まずはお気軽にお問い合わせください。
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