住宅に雨戸は必要?|アルミ・シャッター・木製の違いと選び方

家づくりを考えるとき、意外と悩むのが「雨戸をつけるべきかどうか」という点です。昔の日本の住宅では当たり前のように雨戸が設置されていましたが、近年は断熱性や防犯性に優れた窓が普及したこともあり、雨戸を省略する住宅も増えています。
しかし、台風や強風の多い地域では「窓ガラスが割れたらどうしよう」と不安になることもありますし、防犯面でも「雨戸があると安心感が違う」と感じる方も少なくありません。さらに雨戸は、夏の日射遮蔽や冬の断熱補助、遮音性といった効果も期待でき、暮らしの快適性に関わる要素にもなります。
一方で、雨戸にはアルミ製・シャッター式・木製といった種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。「防犯性を重視するなら?」「台風対策に強いのは?」「デザインとの相性は?」と、選び方で悩む方も多いでしょう。
本記事では、まず「そもそも住宅に雨戸は必要なのか」という疑問を整理し、そのうえで代表的な3つの種類(アルミ・シャッター・木製)の特徴を比較します。さらに、住宅タイプ別のおすすめや設置の注意点も解説し、あなたの家づくりに合った雨戸の選び方をわかりやすくご紹介します。
住宅に雨戸は必要?つける理由と不要な場合
雨戸をつけるメリット
雨戸には、昔から続く日本の住まいの知恵が詰まっています。近年は窓自体の性能も上がっていますが、それでも雨戸をつけることで得られるメリットは少なくありません。代表的な効果を整理してみましょう。
- 防犯性の向上
窓ガラスは住宅侵入の大きな弱点のひとつです。雨戸を閉めていれば、外から窓を直接触られることがなくなるため、ガラスを割って侵入されるリスクを大幅に下げられます。空き巣にとって「侵入に時間がかかる住宅」は敬遠されやすく、心理的な抑止力にもつながります。 - 台風や強風から窓を守る
台風時に怖いのは、風圧そのものよりも「飛来物によるガラス破損」です。瓦や看板、庭の植木鉢などが飛んで窓を直撃すれば、割れたガラスから雨風が室内に吹き込み、大きな被害につながります。雨戸は物理的な盾となり、窓を守ってくれる安心感があります。 - 断熱・遮熱効果
雨戸は「窓の外側にもう1枚の層を加える」役割を持ちます。冬は冷気を遮断して暖房効率を高め、夏は直射日光を防いで室温上昇を抑えてくれます。特に大きな掃き出し窓がある住宅では、雨戸の有無が体感温度に影響することもあります。 - 遮音性のアップ
雨戸を閉めると、外からの車の走行音や人の声などを軽減できます。深夜や早朝の静かな環境を確保したいときに役立つ機能です。
このように、防犯・災害・快適性の面で雨戸は心強い存在です。特に台風常襲地域や郊外の住宅、防犯対策を強化したい家庭では、雨戸の安心感は大きなものがあります。
雨戸をつけなくてもよいケース
一方で、すべての住宅に雨戸が必要というわけではありません。近年の住宅性能や立地条件によっては、雨戸を省略しても大きな問題がない場合もあります。
- 窓ガラスが強化仕様になっている場合
防犯合わせガラスや防犯シートを貼ったガラスなどを採用している住宅では、ガラス破損や侵入リスクが大幅に低減されています。このような窓には雨戸を加えなくても十分に安全性を確保できるケースがあります。 - 都市部で隣家が近い場合
密集地では、強風で大きな飛来物が窓に直撃するリスクは比較的低いです。さらに、防犯上も人目が多いため、空き巣が雨戸の有無で侵入を決める可能性は少なくなります。 - ライフスタイル的に使わない場合
雨戸は閉めてこそ効果を発揮しますが、実際には「閉めるのが面倒」「使わないまま数年経った」というケースも少なくありません。特にシャッタータイプ以外は毎日の開閉が手間に感じられるため、暮らし方次第では「結局使わなかった」という可能性もあります。
このような場合、雨戸にかける予算を断熱性能の高い窓や太陽光パネルなど、他の設備投資に回す方が合理的と言えるでしょう。
現代住宅における雨戸の役割の変化
かつての住宅では、雨戸は「必須の設備」でした。窓ガラスは薄く割れやすく、断熱性能も低かったため、雨戸がなければ台風や冬の寒さに耐えにくかったのです。
しかし現在は、サッシやガラスの性能が飛躍的に向上し、雨戸がなくても一定の安全性や快適性が確保できるようになっています。そのため、現代の雨戸は「必ず必要なもの」ではなく、安心感やプラスアルファの快適性を与える設備としての性格が強くなりました。
つまり、これからの家づくりでは「雨戸をつけるのが当たり前」ではなく、
- 住む地域の気候・災害リスク
- 防犯意識の強さ
- 暮らし方や開閉の手間をどう考えるか
といった条件を踏まえて「自分たちに必要かどうか」を判断するのが現代的な考え方です。
雨戸の種類と特徴
雨戸とひとくちに言っても、代表的なものは「アルミ製雨戸」「シャッター式雨戸」「木製雨戸」の3種類。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあり、選ぶタイプによって日常の使い勝手やメンテナンスの負担が大きく変わってきます。
アルミ製雨戸の特徴
メリット
- 軽量で開閉しやすい
アルミは鉄よりも軽く、毎日の開け閉めがしやすい素材です。女性や高齢の方でも力をかけずに扱えます。 - 錆びにくく耐久性が高い
アルミは腐食しにくい金属なので、長期間にわたって安定した性能を保てます。海沿いなど湿気や塩害がある地域でも安心です。 - メンテナンス性が良い
基本的には水拭きで十分で、特別な手入れが不要です。
デメリット
- デザインが無機質になりがち
金属製なので「工業的な見た目」になりやすく、和風住宅や木の質感を重視した住宅では違和感を持たれる場合があります。 - 断熱性はそれほど高くない
アルミ自体は熱を通しやすい素材のため、断熱性能を強く期待するなら工夫が必要です。
シャッター式雨戸の特徴
メリット
- 室内から開閉できるタイプも多い
近年は窓を開けずに室内側から操作できる手動・電動シャッターが普及しています。雨の日や台風接近時に濡れずに閉められるのは大きな利点です。 - 高い防犯性・防災性
シャッターは窓全体を覆うため、飛来物や不審者からの物理的な防御力が高く、安心感があります。 - 電動タイプならさらに快適
ボタンひとつで開閉できる電動タイプなら、毎日の操作も手間がなくなります。
デメリット
- 設置費用が高め
アルミ製雨戸に比べると初期費用は高額になりがちです。特に電動式はさらにコストがかかります。 - 故障リスクがある
シャッターは部品や開閉機構が複雑なため、年数が経つとモーターやレール部分の修理・交換が必要になることがあります。 - 外観が重く見えるたり、デザインが無機質になりがち
シャッターがあるため、外壁から出っ張り、とってつけたようなイメージになりやすい。また、無機質で閉鎖的なイメージになりがちです。
下の写真は、雨戸シャッターがつくことによる、無機質感や、出っ張り感をなくすために、木枠で囲って和風の外観との調和を図っています。

木製雨戸の特徴
メリット
- 自然素材ならではの風合い
木の質感がそのまま生きるため、和風住宅や自然素材を多用したデザイン住宅と相性抜群です。外観の一部として美しく見せることができます。 - 断熱性に優れる
木は熱伝導率が低いため、アルミに比べて断熱効果が期待できます。冬の冷気対策にも効果的です。 - 経年変化を楽しめる
定期的に手入れをすれば、年月を重ねるごとに味わいが出るのも木製ならではの魅力です。
デメリット
- 雨や紫外線による劣化が早い
塗装や防腐処理を怠ると、反り・ひび割れ・腐食が起きやすくなります。 - 定期的なメンテナンスが必須
3〜5年ごとの塗り直しが必要になることもあり、維持には手間と費用がかかります。 - 重さがある場合も
種類によっては開閉に力が必要で、高齢者には扱いづらいケースもあります。
下の写真の建物は、無機質な金属の外壁に対して、木製の枠、雨戸を設けることで、建物の表情をやわらげています。

費用感とメンテナンス性
- アルミ製雨戸:比較的安価で導入しやすく、日常のメンテナンスはほぼ不要。コストパフォーマンスが高い。
- シャッター式雨戸:導入費用は高めだが、防犯・防災面での安心感は抜群。電動タイプはさらに高価だが利便性が高い。定期的な部品交換や点検は必要。
- 木製雨戸:初期費用はやや高めだが、塗装などのメンテナンス費用を含めると長期的には最もコストがかかる。ただし外観の価値を高めたい住宅では十分検討の価値がある。
どの雨戸を選ぶべき?住宅タイプ別おすすめ
雨戸はどれも一長一短がありますが、住んでいる地域の環境や、暮らし方で選び方が変わります。ここでは、代表的な3つの観点からおすすめのタイプを整理してみましょう。
台風や強風が多い地域
→ シャッター式雨戸が安心
台風が多い地域や、沿岸部・山間部など強風が吹きやすい場所では、飛来物から窓を守る力が重要になります。シャッター式は窓を面全体で覆うため、飛んできた枝や瓦などの衝撃に強く、ガラス破損のリスクを大きく減らせます。
さらに、室内から操作できるタイプを選べば、暴風雨の中で外に出て閉める必要がありません。電動式ならボタンひとつで操作でき、急な天候の変化にもすぐに対応できます。
「安心感を第一にしたい」というご家庭には、シャッター式が最適です。
防犯対策を強化したい住宅
→ アルミ製またはシャッター式がおすすめ
住宅の侵入被害は「窓ガラスを割られて入られるケース」が多いといわれています。雨戸を閉めていれば窓に直接触れられないため、侵入に時間がかかり、犯行を諦めさせる効果が期待できます。
- アルミ製雨戸は、手軽に導入できて開閉も簡単。夜間だけ閉める、長期不在時に閉めるなど、日常的に使いやすい点が魅力です。
- シャッター式雨戸は、ロック機構が付いている製品ならさらに防犯性が高く、こじ開けられにくい構造になっています。特に1階部分の掃き出し窓や人目につきにくい裏側の窓に有効です。
「侵入をできるだけ防ぎたい」「長期不在のときの安心感がほしい」という方には、この2タイプが適しています。
断熱性・デザイン性を重視する住宅
→ 木製雨戸が魅力的
自然素材の木製雨戸は、断熱性能に優れており、冬場の冷気を防ぎやすい特徴があります。また、木の質感は外観デザインに大きく寄与し、和風住宅やナチュラルデザインの住宅に美しく馴染みます。雨戸を閉めた状態でも「家の顔」として景観を損なわないのは、木製ならではの魅力です。
ただし、定期的な塗装やメンテナンスが欠かせません。維持管理を楽しめる方や、外観デザインを最優先に考える方にとっては、十分に選ぶ価値のあるタイプです。
まとめ
- 台風・強風対策 → シャッター式雨戸
- 防犯強化 → アルミ製 or シャッター式
- 断熱性・デザイン性重視 → 木製雨戸
雨戸選びは「どんなリスクを優先的に防ぎたいか」と「どんな暮らし方をしたいか」で答えが変わります。
迷ったときは、立地条件や窓の配置を踏まえて、設計段階で専門家に相談すると最適な選択がしやすくなります。
雨戸をつける際の注意点と設計の工夫
雨戸は「備えあれば憂いなし」の設備ですが、設置の仕方や選び方を誤ると、使い勝手が悪かったり外観を損ねたりすることもあります。ここでは、雨戸を導入する際に気をつけたいポイントと、設計上の工夫について整理してみましょう。
開閉のしやすさ・生活動線への影響
雨戸は毎日必ず使うものではありませんが、台風や防犯対策など、必要なときにスムーズに操作できることが重要です。
- 設置場所の動線:雨戸を閉める際に、植栽や室外機、フェンスなどが邪魔にならないように計画しておくことが大切です。特に庭やテラスに面した窓は、生活動線との兼ね合いを考えましょう。
- 高さや重さ:大きな窓に取り付ける場合、重量が増すため操作が負担になることも。軽量なアルミ製や電動シャッターを検討すると安心です。
- 緊急時の操作性:暴風雨の中で外に出るのは危険です。室内から操作できるシャッター式を選ぶと、実際の使用時にストレスが少なくなります。
外観デザインとの調和
雨戸は閉めていないときも住宅の「顔」の一部として常に視界に入るため、デザインの調和は軽視できません。
- 素材選び:外壁がモダンなデザインならアルミ製、ナチュラルや和風なら木製が相性良いといえます。
- 色の工夫:外壁やサッシの色に近い色を選ぶことで、存在感を抑えられます。逆にアクセントカラーとしてあえてコントラストをつける方法もあります。
- 収納時の見え方:シャッター式は巻き上げて収納されるため、外観上はすっきりしますが、シャッターボックスが目立つケースもあります。設計段階で配置や大きさを検討しておくと仕上がりがきれいです。
後付けリフォームで取り付ける場合
新築時に検討しなくても、後から「やっぱり雨戸が必要」と思うケースは少なくありません。ただし、既存住宅に取り付ける場合にはいくつかの制約があります。
- 窓の形状・サイズ:掃き出し窓や腰窓など、標準的な形状なら取り付けやすいですが、特殊サイズや出窓には対応できないことがあります。
- 外壁の構造:モルタル壁やサイディングなど、外壁材によって施工方法や可否が異なります。特に気密・断熱性能を損なわないよう施工方法に注意が必要です。
- 費用と工期:後付けの場合、窓の入れ替えや外壁補修を伴うことがあり、想定よりコストがかかるケースも。設置可能かどうかを業者に現地調査してもらうことが不可欠です。
まとめ|雨戸は必要性と暮らし方に合わせて選ぶ
雨戸は昔の住宅では「必須」の設備でしたが、近年の住宅では窓ガラスやサッシの性能向上により、必ずしも全ての家に必要というわけではありません。必要性は立地やライフスタイル、住宅の構造や窓の性能によって大きく変わります。
- 立地条件で判断する
台風や強風が多い地域、沿岸部や山間部では防災目的として雨戸があると安心です。一方、都市部で周囲の建物に守られ、風や飛来物のリスクが低い場所では、必須とは言えません。 - 暮らし方・ライフスタイルで判断する
日常的に雨戸を開け閉めできるか、家族の使いやすさや高齢者の操作性を考慮しましょう。シャッター式なら室内から操作でき、利便性と安全性を両立できます。アルミ製なら軽量で手軽、木製ならデザイン性と断熱性を重視できます。 - 目的に合わせて素材を選ぶ
- 防犯重視 → シャッター式やアルミ製
- 台風・災害対策重視 → シャッター式
- デザイン性・断熱性重視 → 木製
- 費用とメンテナンスも考慮する
初期費用だけでなく、長期的なメンテナンスの手間やコストも選択の判断材料になります。木製雨戸は美しさと断熱性が魅力ですが、定期的な塗装が必要です。アルミ製は耐久性が高くメンテナンスは少なめ、シャッター式は便利ですが部品交換や点検が必要です。 - 迷ったときは専門家に相談する
住宅の立地や窓の配置、外観との調和などは、素人判断だけでは見落としやすいポイントです。設計士や施工会社に相談することで、自分たちの暮らし方に合った最適な雨戸を選ぶことができます。
雨戸を導入するかどうか、どの種類を選ぶかは、「必要性」と「使い勝手」「デザイン」のバランス」がポイントです。
家族の安心・快適さを優先しながら、暮らしに合った最適な雨戸を選ぶことが、後悔のない家づくりにつながります。
雨戸の必要性や種類、設置のポイントを理解すると、「自分の家にはどの雨戸が合うのか」を具体的にイメージできるようになります。しかし、実際の住宅では立地条件や窓の配置、外観とのバランス、家族の暮らし方などによって最適な選択は変わります。
「台風や防犯に強い雨戸にしたいけれど、外観も損なわないようにしたい」
「暮らしやすさとメンテナンスのしやすさのバランスを見ながら選びたい」
こうしたお悩みは、設計の専門家に相談することで、最適なプランが見えてきます。
足立和太建築設計室では、家族の暮らし方や住宅の特性に合わせた設計のアドバイスを行っています。台風・防犯・断熱性などの性能面と、デザイン性の両立を重視した家づくりをサポート可能です。
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