60代から始める老後の家づくり:安心・快適な暮らしを実現する5つのポイント

はじめに|60代からの住まい見直しが、セカンドライフを豊かにする
60代は、仕事をリタイアしたり子育てを終えたりと、暮らしのステージが大きく変わる節目の年代です。
「これから先の人生を、どう過ごしたいか」を考えたときに、多くの人が直面するのが「家」の問題です。
これから始まる“セカンドライフ”は、まさに人生の第二章。だからこそ、その暮らしに合った住まいについて考えることが、今とても大切です。
- 古くて寒い家に住み続けて大丈夫?
- 2階建ての階段は将来も上り下りできる?
- 光熱費の負担がつらくなってきた…
- 子供が巣立った今、家が広すぎて、将来一人になった時にちょっと怖いわ
老後の住まいは、ただ“コンパクトにする”だけではなく、将来を見据えた工夫も大切です。
このコラムでは、このような不安を解消し、セカンドライフを快適で安全にするための家づくりのポイントを、わかりやすく解説します。
1.平屋建てのメリットと間取りの工夫
老後の住まいとして最も人気が高いのが「平屋住宅」です。
● なぜ平屋が老後の暮らしに適しているか?
平屋建ては、ワンフロアで生活が完結するという大きな特徴があります。
60代以降の暮らしでは、段差や階段の上り下りといった身体的な負担をなるべく減らすことが大切です。
主なメリットは次の通りです:
◎ 移動がラクで安全
生活空間がすべて一階にまとまっているため、階段の上り下りによる転倒リスクを避けられます。夜間のトイレ移動なども安心です。
◎ メンテナンスがしやすい
外壁や屋根などの点検・修繕もしやすく、将来的な維持費の面でもメリットがあります。自分たちで草むしりや掃除もしやすく、長く自立した暮らしができます。
◎ 家族や来客とのつながりが生まれやすい
空間がフラットに広がることで、どこにいても気配が感じられる距離感に。離れすぎず、近すぎないちょうどいい距離感での暮らしが実現します。
● 平屋をより快適にする間取りの工夫
平屋は「平面的にすべてがつながる」からこそ、間取りの工夫が住み心地を大きく左右します。以下のポイントを押さえると、さらに快適な住まいになります。
◎ 水回りは1か所にまとめて、家事の負担を軽減
キッチン・洗面・浴室・洗濯機を近くに配置することで、移動距離が短くなり、家事がスムーズに。洗濯〜干す〜しまうまでが1か所で完結する「家事動線の最短化」もおすすめです。
◎ 寝室とトイレはなるべく近くに
夜間のトイレ利用などを考慮して、寝室とトイレは隣接、または数歩で行ける距離にすると安心です。
◎ LDK+隠れた個室のバランス
ワンルーム的な開放感あるLDKに加えて、趣味や昼寝に使える「こもれる部屋」が一つあると、お互いが心地よい距離感で暮らせる工夫になります。
◎ 採光・通風計画をしっかりと
平屋では、建物の中央部が暗く・風通しが悪くなりがちです。天窓や吹き抜け、または中庭(パティオ)の活用で、自然光や風をしっかり取り入れることができます。
◎ 大きな窓で庭とつなぐ
平屋の良さは、地面との結びつきがが強いところです。
庭に向けて大きな開口部を設け、フルオープンにすれば庭と一体化して、豊かな生活につながります。
2.バリアフリー設計で将来の不安を減らす
高齢期のケガで最も多いのは「家庭内での転倒」です。未然に防ぐには、初めからバリアフリーを意識した設計が重要です。
● バリアフリーって“介護のため”だけじゃない
「バリアフリー」と聞くと、多くの方が“要介護になったときの話”だと考えがちですが、実はそれだけではありません。
たとえば、
- 疲れやすくなってきた
- つまずきやすくなった
- 夜中の移動が不安になってきた
こんな小さな変化に早くから対応できるのが、バリアフリー設計の強みです。
“いまの快適さ”と“将来の安心”を同時に叶えるための備えとして考えると、より現実的なイメージが持てるでしょう。
● 住まいの中で押さえておきたいバリアフリーの基本ポイント
◎ 段差をなくす(床のフラット化)
玄関、トイレ、洗面室、リビングなど、室内に小さな段差があるだけでも転倒リスクに直結します。すべての床をフラットにすることで、日々のストレスやケガのリスクを大きく減らせます。
◎ 幅の広い廊下・ドア(車いすも考慮して)
廊下は75cm以上、できれば90cm程度。ドアは引き戸タイプにしておくと、将来の車いす利用や歩行器でもスムーズな動線が確保できます。
◎ 手すりの設置/設置しやすい構造に
今すぐ必要なくても、あらかじめ補強しておけば将来**「いざというときにすぐ設置できる」**のが安心です。階段・トイレ・浴室・玄関などは特に優先ポイントです。
◎ 滑りにくい床材を選ぶ
特に水回りでは、滑りにくい素材(ノンスリップタイプのフローリング、クッションフロアなど)を選ぶことが大切です。
◎ トイレ・浴室の広さも要チェック
介助が必要になった場合にも備えて、トイレや浴室には最初からゆとりある寸法を。
3.生活動線の最適化
60代以降は、「いかに少ない動きで、効率よく暮らせるか」が大切になります。
● 動線とは「日常の動きの流れ」
生活動線とは、家の中で人がどのように移動しながら生活するかの「動きの経路」のこと。たとえば、
- 朝起きてからトイレ・洗面所へ行く
- キッチンで料理してから食事を運ぶ
- 洗濯して干して、たたんでしまう
…といった日常の流れがスムーズにいくかどうかは、動線の設計が大きく関係しています。
年齢を重ねると、ちょっとした移動も負担になりがち。だからこそ、なるべく「短く・楽に・安全に」行動できることが老後の暮らしの質を左右します。
● 老後の暮らしに合った3つの基本動線
◎ ① 家事動線|無駄な動きゼロで、体力も時間もムダにしない
洗濯、料理、掃除といった家事は毎日のこと。特に、洗濯動線は意識しておきたいところ。
【おすすめのつながり方の一例】
「洗面脱衣室 → 洗濯機 → 室内物干し or ウッドデッキ → ファミリークローゼット」
このように、洗う→干す→しまうが一直線に完結する間取りにすると、移動の負担が大きく減ります。
また、キッチンとダイニング、パントリーが近くにまとまっていると、調理や買い物収納もラクに。
◎ ② 生活動線|移動距離をできるだけ短く、安全に
- トイレと寝室が近い
- お風呂と洗面・脱衣室が近い
- 玄関からLDKまで段差なくスムーズに入れる
など、日常でよく使う場所の「移動経路」がムダなく短く、ストレスが少ないことが理想です。
特に夜間のトイレや、寒暖差のある脱衣所などは、移動が億劫になりがちなので、近さと温度差の少ない設計が重要になります。
◎ ③ 来客・家族動線|プライバシーと気配りのバランス
- 家族の寝室エリアと、来客の通る動線は少し分ける
- 玄関からトイレが丸見えにならない
- 訪問介護や宅配が来たときに、生活スペースを通らずに対応できる勝手口の設置
こうした配慮は、気持ちよく人を迎えるための「やさしさの設計」です。
● 生活動線の最適化=毎日の安心と自立につながる
動線が無理なく計画されている家は、“ラク”で“疲れにくい”=長く自立して暮らせる家になります。
逆に、毎日の動きが不便だったり遠回りだったりすると、体力の消耗や転倒などのリスクも高まります。
「いまはまだ平気」でも、「この先ずっと快適に暮らせるか?」という視点で見直すことが、老後の家づくりではとても大切です。
4.断熱性・気密性の高い快適な住環境を
年齢を重ねると、温度変化による身体への負担が大きくなります。
特に冬場の「ヒートショック」は命に関わる危険性もあるため、家全体の温熱環境がとても重要です。
● なぜ断熱・気密が老後にとって大切なのか?
60代以降の暮らしでは、「快適さ」だけでなく「健康」と「家計」に対する意識も高まります。
断熱性・気密性が高い家は、まさにこの3つのバランスを整える“見えないけれど大きな安心”をもたらします。
例えばこんなメリットがあります:
- ヒートショックを防ぐ(健康)
家の中の温度差が少なくなることで、心筋梗塞・脳卒中などのリスクが減ります。 - 冷暖房効率がアップ(経済)
エアコンの効きが良くなり、光熱費の負担を減らせます。 - 室温が安定して過ごしやすい(快適)
夏は涼しく、冬は暖かい。季節の変化にストレスを感じにくくなります。
● 断熱性能を高める具体的なポイント
◎ 高性能な断熱材を使用する
壁・天井・床にしっかりと断熱材を施工することで、外気温の影響を抑えます。
特に床下断熱は、足元からの冷えを防ぐために重要です。
◎ 断熱窓の導入(ペアガラス・トリプルガラス)
窓は熱の出入りが最も大きい場所。複層ガラス+樹脂サッシを使うことで、外気の影響を最小限に抑えます。
結露も発生しにくく、家の寿命にも好影響。
◎ 屋根や天井の断熱も重要
夏場の屋根面の暑さ対策や、冬の暖房効率にも関わります。遮熱効果のある屋根材の活用もおすすめです。
● 気密性能で“すきま風”をシャットアウト
どんなに断熱性能が良くても、すきま風が入ってしまうと台無しです。
そこで必要なのが「気密性」。これは、家全体の隙間をどれだけ少なくできているかを示す指標です。
- 気密性が高いと…
・エアコンがすぐ効く
・外の音が入りにくい
・花粉・ホコリも入りにくく、空気がクリーン
・計画換気がしっかり機能する
老後の暮らしでは、音や空気環境への敏感さも増してくるため、気密性の高い家は安心感が違います。
● 断熱と気密のセットで、「健康寿命」を伸ばす住まいへ
国の調査によると、住宅の性能と健康状態には相関関係があるという報告もあります。
断熱性・気密性の高い家に住む人は、
- 睡眠の質が良くなり
- 血圧が安定し
- ヒートショックのリスクが減り
- 季節による体調の波が少ない
といった健康面でのメリットがあるとされています。
5.将来のサポートを受けやすい家づくりの工夫
将来、万が一介護が必要になったときに備えて、「支えられる暮らし」を意識した設計もポイントです。
● サポートとは「介護」だけではありません
60代の家づくりでは「介護になったらどうしよう」という不安が頭をよぎることもあるかもしれません。
ただし、“将来のサポート”とは、必ずしも介護に限らず、
- 一人暮らしになったとき
- 子どもや訪問ヘルパーが来てくれるとき
- 病気やケガで一時的に不自由になるとき
など、「外部からの手助けが必要になるシーン」を広く想定しておくことが大切です。
● 将来に備えた家づくりの3つの工夫
◎ ① 外部の人が入りやすい「玄関まわりの計画」
- 玄関に段差がなく、車いすでも入りやすいアプローチ
- 土間スペースを広めに取って、ヘルパーや介護用品を持ち込める余裕を
- 外から室内が丸見えにならない「ちょっとした目隠し」の工夫も安心
こうした設計は、将来的に宅配や訪問診療、見守りサービスなどを利用する際にも役立ちます。
◎ ② トイレ・浴室・寝室の関係性を意識する
高齢になると、トイレ・お風呂・寝室は、サポートが必要になりやすい場所です。
そのため、
- 寝室の近くにトイレ・洗面所を配置する
- トイレや浴室に介助スペースを確保する(ドア幅・回転スペース)
- いざという時にはベッドの横にポータブルトイレが置けるような設計にしておく
といった備えが、将来の安心につながります。
現時点では不要でも、“準備してある安心感”があるだけで気持ちに余裕が生まれます。
◎ ③ ちょっとした設備やスペースが「支えやすさ」を変える
- 廊下やトイレの手すり設置を想定した壁下地
- 将来の「介護ベッド」や「訪問ヘルパー用の動線」が確保しやすいレイアウト
- 「家族と同居・二世帯化」などへの柔軟な変更ができる間取り
たとえば、あらかじめ可変性のある間取りや設備にしておけば、
- 奥様の寝室を娘さんと共有できる
- 今は収納として使っているスペースを、将来は簡易ケアスペースに
といった“暮らしの柔軟さ”が生まれます。
● もしもの時も「暮らし慣れた家で過ごせる」という選択肢
サポートを受けやすい家というのは、裏を返せば「施設に移らず、住み慣れた家で過ごせる可能性が高まる家」。
それは、身体的にも精神的にも大きなメリットになります。
今からできる工夫をしておくことで、将来の選択肢が増え、「家で暮らし続ける」という希望をかなえる家になります。
まとめ|”セカンドライフ”を安心して楽しむための家づくり
60代からの家づくりは、単なる「住み替え」ではなく、これから始まるセカンドライフ=第二の人生をどう過ごすかを考える大切なステップです。
子育てを終え、仕事もひと区切り。自分たちらしい時間を取り戻せる時期だからこそ、「安心・快適で、心豊かに暮らせる住まい」をつくることが、これからの暮らしに大きな意味を持ちます。
● 今回ご紹介した5つのポイントを振り返ると…
1. バリアフリー設計で将来の不安を減らす
段差のない住まい、広めの通路、手すりの準備など、ちょっとした工夫が“ケガを防ぎ、老後の自立”を支えてくれます。
2. 平屋建てのメリットと間取りの工夫
ワンフロアで生活が完結する平屋は、移動の負担が少なく、老後の暮らしにぴったり。自然と夫婦の距離も近くなる、優しい間取りが実現できます。
3. 生活動線の最適化
毎日の暮らしやすさを支えるのが動線設計。家事が楽になり、体に負担をかけずに過ごせる住まいは、長く暮らすほどに実感できる価値があります。
4. 断熱性・気密性の高い快適な住環境
健康にも家計にも優しい、高性能な住まい。冬暖かく夏涼しい家は、体調管理がしやすくなり、ヒートショックのリスクも軽減されます。
5. 将来のサポートを受けやすい家づくりの工夫
もしもの時にも外部の手助けを受け入れやすい設計で、自宅での暮らしを続ける選択肢を広げておけます。家は「暮らす場所」であると同時に、「支えてもらう場所」でもあります。
● セカンドライフの“安心と自由”をかなえる住まいへ
年齢を重ねることは、できなくなることが増えるのではなく、ゆっくりと向き合いたいことが見えてくる時期。
そんなセカンドライフだからこそ、自分たちの「好き」と「安心」をバランスよく満たした家で、心豊かに過ごしてほしいと思います。
性能も、間取りも、将来への備えも…
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