Low-Eガラス 日射遮蔽型と日射取得型ときちっと区別してますか

YKKap HPより

最近の住宅では、ほとんどがガラスが2枚の複層ガラスを使っていると思います。

場合によっては3枚のトリプルガラスもめずらしくありません。

そして、省エネ住宅にするならば、これらのガラスは、ほとんどの場合でLow-Eガラスというものが使われていると思います。

このLow-Eガラスとは、ガラス面をLow-E金属膜でコーティングして、太陽の熱線をカットして冷房効率を上げたり(日射遮蔽型)、反対に暖かい太陽光を取り込み、室内の熱を逃がさない(日射取得型)といった効果のあるガラスのことです。

大切なのは、この日射遮蔽型と日射取得型をきちっと区別して使い分けることですが、街に建っている住宅を見ていると、どうも使い分けはほとんどされていない様なのです。

僕の現場での体験でも、ガラス屋さんも日射遮蔽型と取得型を勘違いしていたり、さらにサッシメーカーの担当者も間違った説明をしているという経験をしました。

今回は、このLow-Eガラスについてのお話です。

■Low-Eガラス、日射遮蔽型と日射取得型ときちっと区別してますか

目次

 Low-Eガラスの種類と使い分け 

Low-Eガラスには、「日射遮蔽型」と「日射取得型」の2種類があります。

そしてそれぞれ使うのに適した向きがあります。

日射遮蔽型

室外側のガラスをLow-E金属膜でコーティングし、太陽の熱線を約60%カットします。それにより冷房効果を高め、西日対策による色褪せ防止をします。

このような効果のあるガラスですから、主に東面・西面に使用します。

日射取得型

室内側のガラスをL0ow-E金属膜でコーティングし、暖かい太陽光を取り込み、室内の暖房熱を逃がさない働きをします。

冬場に太陽光を取り入れたいわけですから、このガラスは主に南面に使用します。

「エコハウスのウソ」より掲載

このように、Low-Eガラスを使う場合は、日射遮蔽型と、日射取得型をきちっと区別して、それぞれ適した方向に設置してください。

一般的に日射遮蔽型のガラスは色がグリーンあるいはブロンズ色、日射取得型はニュートラル、クリアなイメージです。

街中で見る多くの住宅で、南側のガラスがグリーンぽくなっています。

おそらく、省エネを考えて、一律にすべての壁面に日射遮蔽型のガラスを入れているのだと思います。

しかし、正しい省エネは、冬場の暖房効率を上げるために南側は日射取得型のガラスにして、しっかり熱を蓄え、夏場には庇などで、日射を遮蔽することなのです。

 日射遮蔽型と取得型、コーティングの位置だけでは決まらない 

ここからは、ちょっとマニアックなお話。

LowーEガラスの日射遮蔽型と、日射取得型の区別はLow-Eコーティングの位置が室内側か、室外側かで決まると前項ではお伝えしましたが、確かに一般的な説明ではそのとおりなのですが、実はコーティング面が室内側でも日射遮蔽型のガラスはあります。

下図はLIXILさんのサーモスⅡのガラスの説明図です。

コーティング面が室内側ですが、日射遮蔽型と、日射取得型の2種類あります。

以前、住宅の現場でサッシ業者さんと、ちょっとしたトラブルになったことがあります。

そこの現場では、南側のサッシのガラスは日射取得型にするように指示をしました。

しかし、現場に搬入されたガラスは、グリーンがかった色をしていて、ひょっとして日射遮蔽ではないかと、ガラス品番を調べました。

すると案の定、日射遮蔽型のガラスだったのです。

すぐに現場に、ガラスが間違っていることを連絡しました。

すると現場からの回答は

「サッシ業者にその旨伝えましたが、サッシ業者は金属コーティング面が室内側にあるので、間違いなく日射取得型だといっています。」

でした。

僕のほうからは、

「いやいや納品書の品番も日射遮蔽型だし、ガラス面に刻印されている品番も日射遮蔽型ですよ」

と伝えました。

驚くことに、それでもコーティング面が室内側なので、日射取得型だとまだ言い張ります。

最終的には、このサッシ業者さんも、間違いを認めてくれましたが、専門の業者さんでも勘違いされていることがあるのだと、この時学びました。

参考までに、正式な日射遮蔽型と日射取得型区分けは、板ガラス協会に確認してみました。

その見解は、

「Low-Eガラスの位置が室内側か、室外側かという区別ではなく、日射取得区分の判断は、このLow-Eガラスを室外側にした基本ガラス構成におけるガラスの日射取得率で判断します。

そして、その日射取得率が0.5以上なら、日射取得型、0.49以下なら日射遮蔽型となります。」

とのことでした。

結論としては、Low-Eコーティング面が室内側か室外側かではなく、単純に日射取得率の数値で判断するということですね。

 まとめ 

Low-Eガラスは「設計の考え方」とセットで選ぶことが大切です

Low-Eガラスには日射遮蔽型・日射取得型がありますが、どちらを使うべきかは窓の向き、地域の気候、ご家族の暮らし方によって変わります。
単純に「性能が高いものを選べばいい」という話ではありません。

たとえば──

  • 南側の大きな窓には日射取得型を使い、冬の日差しを最大限に活かす

  • 西日が強く当たる窓には日射遮蔽型を使い、夏の冷房効率を高める

  • 吹き抜けや大開口でも、断熱・気密・日射取得のバランスで快適性を保つ

このように、ガラスの種類だけでなく「どの位置に、どう活かすか」を考えることが大切です
そしてそれは、単なる部材選びではなく、家全体の設計思想そのものに関わるテーマでもあります。


足立和太建築設計室では、窓の選び方から家全体の快適性を設計します

当設計室では、「夏涼しく、冬暖かい家づくり」をコンセプトに、断熱・日射取得・通風などを一体的に考えた設計を行っています。
Low-Eガラスをはじめとする部材の選定も、「どのような暮らしをしたいか」から逆算してご提案しています。


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