土地は親の名義のまま大丈夫?家を建てる前に知っておきたい相続登記

マイホームを建てようと考えたとき、多くの人がまず気にするのは「土地はあるのか?」「住宅ローンはいくら借りられるか?」といった点ではないでしょうか。親や祖父母から受け継いだ土地がある場合、「土地代がかからないから助かる」と安心してしまう方も多いと思います。
しかし、ここで意外な落とし穴になるのが 土地の名義 です。
土地が親や祖父母の名義のままになっていると、いざ家を建てようとしたときに次のような問題が起こり得ます。
- その土地が何らかの担保に入っていた場合、銀行の住宅ローンが通らない可能性がある
- 相続人が複数人いる場合、家を建てる前の段階で、将来相続が発生した場合にどうするのかをきちっと話し合っておく必要がある
つまり、土地の名義が整理されていないと、家づくりのスタートラインにすら立てなくなってしまうのです。
さらに、2024年4月からは「相続登記」が義務化されました。これまで任意だった相続登記を怠ると、将来的に10万円以下の罰則が課される可能性があります。相続登記は「後でやればいい手続き」ではなく、家を建てる前に必ず確認・対応しておくべき大切な準備なのです。
この記事では、相続登記義務化の内容や、家づくりにどんな影響があるのか、そして安心してマイホーム計画を進めるために必要なポイントを、わかりやすく解説します。
土地の名義が親のままだと家を建てられない?
「親の土地があるから、その上に家を建てればいい」と考える方は少なくありません。土地が用意されていれば土地代がかからず、住宅ローンの負担も軽くなるため、とても魅力的に思えます。
しかし、土地の名義が親のままになっている場合、実際には家づくりがスムーズに進まないケースが多くあります。
住宅ローンの審査が通らない
銀行は住宅ローンを貸す際に、建てる家と土地を担保として設定します。つまり、万が一返済が滞った場合には、その不動産を処分して返済に充てる仕組みです。
そのため、土地が親の何らかの担保に入っていた場合は、、住宅ローンの審査に通らない可能性が高くなります。
例えば「土地は親名義、建物だけを自分名義で建てたい」という場合でも、銀行は「土地も含めて担保にできないなら融資できません」と判断することがあります。結果として、現金で建築費をまかなわなければならず、計画が頓挫してしまうこともあります。
相続人全員の同意が必要になるケースも
さらに厄介なのが、すでに親が亡くなっていて、土地の相続登記をしていない場合です。この場合、土地は法的には「相続人全員の共有」という扱いになります。
つまり、子どもが家を建てたいと思っても、兄弟姉妹など相続人全員の同意がなければ建てられないのです。もし相続人が複数いて意見が割れてしまった場合、計画は立ち行かなくなってしまいます。
相続人が増えれば増えるほど話し合いは難航し、調整に時間がかかり、最悪の場合は「建てられない」という結論になることもあります。
まずは土地の名義を確認することが大切
このように、土地が親の名義のままでは、住宅ローン・建築確認・相続人同士の話し合いなど、あらゆる段階で壁にぶつかる可能性があります。
家を建てる前には、法務局で「土地の登記簿謄本」を取得し、名義が誰になっているのかを必ず確認しましょう。
もし名義が親や祖父母のままなら、相続登記や名義変更の手続きを早めに進めておくことが、安心して家づくりを進めるための第一歩となります。
相続登記の義務化とは?いつまでに手続きが必要?
2024年4月から、土地や建物を相続した場合には「相続登記を行うこと」が法律で義務化されました。これまで相続登記は任意で、「やらなくても大きな問題はない」と考えられてきましたが、今ではそうはいきません。
義務化の背景
これまで日本では、相続登記をしないまま放置される土地が数多くありました。
例えば、親が亡くなっても子どもが相続登記をせず、そのまま生活しているケースは珍しくありません。その結果、誰が本当の所有者なのか分からない土地(=所有者不明土地) が全国で増え、社会問題となっていました。
- 公共事業の道路や公園をつくる際に土地所有者がわからず、事業が進められない
- 農地や空き地が活用できず、地域のまちづくりに支障が出る
- 相続が何代も放置され、相続人が数十人に膨れ上がって合意形成が困難になる
このようなトラブルを解決するため、相続登記の義務化が導入されたのです。
義務の内容
義務化によって、相続が発生したら次のようなルールが適用されます。
- 期限:相続が発生したことを知ってから3年以内
たとえば、親が亡くなったことを知った日から3年以内に登記を行う必要があります。 - 罰則:正当な理由なく放置すると10万円以下の過料(罰金)の対象
病気や災害など、やむを得ない事情がある場合を除き、放置するとペナルティが科される可能性があります。
これにより、相続登記は「時間があるときにやればいい」手続きではなく、期限内に必ず行う義務になりました。
家づくりにも直結するポイント
家を建てたい人にとっても、この義務化は大きな意味を持ちます。
相続登記をしていなければ土地の名義が自分にならず、住宅ローンや建築確認に支障が出るからです。言い換えれば、相続登記は家づくりを進めるための第一歩であり、同時に法律上も必ずやらなければならない手続きになったということです。
相続登記をしていないと起こるトラブル
相続登記をしないまま土地を放置していると、「いざ家を建てよう」と思ったときに大きな壁にぶつかります。ここでは代表的なトラブルを詳しく見てみましょう。
住宅ローンが使えない場合がある
住宅ローンを利用するには、金融機関に土地と建物を担保として差し出す必要があります。
ところが、土地の名義が親や祖父母のままで、その土地がすでに別の担保に設定されている場合、本人がその土地を担保にできず、銀行の審査に通らない可能性が高くなります。
例えば、
- 「土地は親の名義、建物だけを子ども名義で建てたい」という場合
- 「相続が発生しているが、登記をしていない状態で家を建てたい」という場合
いずれも金融機関からは「担保として認められない」と判断され、結果的に住宅ローンが使えなくなるのです。現金で全額をまかなえない限り、家づくりがストップしてしまいます。
相続人が増えて手続きが複雑化する
相続登記を長い間しないままにしておくと、時間の経過とともに相続人はどんどん増えていきます。
例えば、父親が亡くなって相続登記をしないまま母親も亡くなると、相続人は子どもだけでなく孫まで広がる可能性があります。さらに兄弟姉妹が多ければ、配偶者や子どもを含めて相続人の数は一気に膨れ上がります。
その結果、
- 相続人全員の同意を得るのに時間がかかる
- 遠方に住む相続人がいて連絡が取れない
- 一部の相続人が反対し、話し合いがまとまらない
といった状況になり、家を建てるどころか土地の利用自体ができなくなってしまうのです。
土地を売却・贈与できない
土地の名義が整理されていないと、売却や贈与といった取引もできません。
不動産会社に土地を売りたいと相談しても、「登記が親名義のままでは売却できません」と断られてしまいます。
また、「親の土地を贈与してもらって、その上に家を建てたい」と考えても、名義が相続未登記の状態では贈与の手続きすらできません。結果として、土地を資産として活用できないまま時間だけが過ぎてしまうのです。
放置すると「負の遺産」になってしまうことも
相続登記をしない土地は、最終的に「誰のものか分からない土地」になってしまいます。こうなると売ることも貸すこともできず、固定資産税だけを払い続ける“負の遺産”となってしまうリスクもあります。
家を建てたい人が取るべき対応ステップ
相続登記の義務化を受けて、家づくりを計画する人は「まず土地の名義を確認する」ことが欠かせません。ここでは、実際に取るべきステップを詳しく見ていきましょう。
1. 土地の登記簿を確認する
最初のステップは「土地の所有者が誰になっているか」を確認することです。
土地の登記簿は、法務局で申請すれば数百円で取得できますし、近年はオンライン(法務局の「登記情報提供サービス」)からも確認できます。
登記簿には、
- 現在の所有者の氏名
- 所有権移転の履歴(売買・相続など)
- 抵当権(ローンの担保)などの権利関係
といった重要な情報が記載されています。
「親名義のままなのか?」「すでに祖父母の名義で止まっていないか?」をここで確認し、もし自分が知らない名義になっている場合は要注意です。
2. 相続登記が必要なら司法書士に相談する
土地の名義が自分や配偶者ではなく、相続によって引き継ぐ必要がある場合は、相続登記の手続きを進める必要があります。
相続登記には、戸籍謄本・遺産分割協議書など複数の書類を揃えたり、相続人全員の同意を得るなどの作業が必要になります。専門的で煩雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士に相談することで、
- 必要な書類や準備の流れを教えてもらえる
- 相続人が多い場合の調整について助言を受けられる
- 登記申請をスムーズに進められる
といったメリットがあります。特に家づくりの計画と並行する場合、登記に時間がかかることもあるため、早めに専門家へ相談することが安心につながります。
3. 家づくりのスケジュールに合わせて進める
相続登記は「申請すればすぐ終わる」というものではなく、書類収集や関係者との調整に時間がかかる場合があります。
そのため、家づくりを進める際は、
- 住宅ローンの申請に入る前に相続登記を完了させておく
- 設計打ち合わせや土地の調査と並行して司法書士に依頼する
- 登記の進行状況を踏まえた上で建築スケジュールを組む
といった工夫が大切です。
特に住宅ローン審査では「土地の名義が本人であること」が必須条件となるため、登記が完了していないと審査が進められません。計画の途中で足止めを食らわないためにも、「家づくり=名義確認から」という意識を持つことがポイントです。
まとめ:相続登記を済ませて安心して家づくりを進めよう
土地の名義は、家を建てるときに必ず確認すべき重要なポイントです。
「親の土地があるから大丈夫」と思っていても、名義が親や祖父母のままになっていると、住宅ローンが通らなかったり、建築確認申請が進まなかったりと、家づくりに大きな支障が出る可能性があります。
さらに、相続登記をしないまま放置すると、時間が経つにつれて相続人が増えてしまい、手続きが複雑化する恐れがあります。最悪の場合、相続人全員の合意が得られず、家づくり自体が断念せざるを得なくなるケースもあり得ます。
こうした問題を防ぐために、2024年4月から相続登記は義務化されました。相続が発生したことを知ってから 3年以内 に登記をしなければならず、正当な理由なく放置すると 10万円以下の過料(罰金) が課される可能性もあります。もはや「やってもやらなくてもよい手続き」ではなく、必ず済ませなければならない大切な義務なのです。
家づくりを安心して進めるためには、まず土地の登記簿を取り寄せて名義を確認すること。そして、相続登記が必要な場合は、早めに司法書士に相談して手続きを進めておくことが重要です。登記を済ませておけば、住宅ローンや建築確認もスムーズに進み、家づくりに集中できる環境が整います。
「土地の名義を整えること」も、実は家づくりの第一歩。
しっかりと準備を整えて、安心して理想の住まいづくりをスタートさせましょう。
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