賃貸か持ち家か迷ったら読む!後悔しない住まい選びをデータで解説

「賃貸と持ち家、どちらが得なのか?」──これは住まい選びにおける永遠のテーマともいえる問いです。
「家賃を払い続けても資産にならないから持ち家の方が良い」
「住宅ローンという大きな借金を抱えるのは不安だから賃貸が安心」
このように、人それぞれの考え方やライフスタイルによって意見は分かれがちです。しかし実際のところ、数字やデータに基づいて冷静に比較すると、状況や年齢によって「有利な選択」が変わることが見えてきます。
本記事では、以下の視点から賃貸と持ち家を客観的に比較します。
- 住宅にかかる生涯コストの試算(30年・50年単位)
- 資産として残るかどうかの違い
- 調査データに基づく居住満足度
- 総務省統計に見る年齢別の持ち家比率
これらのデータをもとに、単なる「イメージの比較」ではなく、数字で根拠を示しながら賃貸と持ち家のメリット・デメリットを明らかにします。
さらに、20代・30代の若い世代から、子育て期、老後に至るまで──ライフステージごとにどちらが合理的かを整理し、最後にデータから導かれる結論を提示します。
住まいを選ぶうえで迷っている方にとって、長期的な視点からの判断材料となると思います。
住宅にかかる生涯コストの比較
住まい選びでまず気になるのは、「結局、一生でいくらかかるのか」という点です。ここでは、持ち家と賃貸それぞれに必要となる代表的な支出項目を整理し、シミュレーションを交えて比較してみます。
持ち家にかかる費用
購入費用:建築費や土地代、マンションであれば購入価格。愛知県で戸建を新築する場合、最近の市場動向を反映して、4,500万〜5,500万円程度を想定します。
住宅ローンの利息:4,500万円を35年ローン(固定金利1.3%程度)で借りると、支払利息は約1,000万〜1,200万円前後となります。
固定資産税・都市計画税:毎年10〜20万円程度。50年住むと合計で500万〜1,000万円規模になることもあります。
修繕・リフォーム費用:屋根や外壁の塗り替え、水まわりリフォームなどを含め、30年で数百万円、50年で1,000万円近くかかるケースもあります。
賃貸にかかる費用
- 初期費用:敷金・礼金・仲介手数料など、入居時に家賃の4〜6か月分が必要です。
- 毎月の家賃:愛知県内での相場を考慮すると、家賃12万〜15万円が一般的です。例えば家賃12万円の場合、30年で4,320万円、50年で7,200万円となります。
- 更新料:2年ごとに家賃1か月分がかかる物件が多く、長期では数百万円規模になることもあります。
データに基づくシミュレーション
住宅金融支援機構や国交省「住宅市場動向調査」のデータをもとに、30年・50年の居住コストを試算すると以下のようになります。
賃貸(家賃12万円想定、更新料込み)
- 家賃:12万円 × 12か月 × 30年 = 約4,320万円
- 更新料:2年ごとに家賃1か月分 × 15回(30年) = 約180万円
- 合計(30年):約4,500万円前後
- 家賃:12万円 × 12か月 × 50年 = 約7,200万円
- 更新料:2年ごとに家賃1か月分 × 25回(50年) = 約300万円
- 合計(50年):約7,500万円前後
持ち家(購入費4,500万円、ローン利息・修繕費込み)
- 購入費:4,500万円
- 住宅ローン利息(35年、固定金利1.3%想定):約900万円
- 修繕・リフォーム費用(30年で概算):約500万円
- 合計(30年):約5,900万円前後
- 修繕・リフォーム費用(50年で概算):約1,000万円
- 合計(50年):約6,400万円前後
まとめ
短期的(30年)で見ると、賃貸の方が持ち家よりもコストが低めですが、50年の長期スパンではローン完済後の持ち家は住居費が抑えられるため、総支出の差は縮まります。また、持ち家は資産として残る点も大きなメリットです。
資産としての価値を比較する
次に注目したいのは、「その住まいが資産として残るかどうか」です。家計における住居費は支出であると同時に、持ち家の場合は“資産形成”という側面も持ちます。
持ち家の場合
住宅ローンを完済すれば、「不動産」という資産が手元に残ります。もちろん、建物自体は経年劣化により資産価値が下がりますが、土地付き住宅なら一定の価値を維持しやすいのが特徴です。特に都市部や需要のある地域では、中古住宅としての売却や賃貸化も可能で、「住み替え資金」「老後の生活費」に充てられるケースも考えられます。
また、持ち家の最大の強みは、老後に住居費がほぼ不要になることです。住宅金融支援機構の調査でも、60歳以降に持ち家に住む人の生活満足度は高く、家賃を払い続ける必要がないことが心理的な安心につながっています。
賃貸の場合
賃貸は毎月の支払いが純粋な「消費」であり、資産としては残りません。ただし、自由度という点でメリットがあります。転勤・ライフスタイルの変化に応じて住み替えがしやすく、住宅ローンという長期の負担を抱えない点も魅力です。さらに、家賃に充てていた分の資金を投資や貯蓄に回す戦略をとれば、持ち家を上回る資産形成を実現できる可能性もあります。
データから見える資産価値の分かれ目
不動産流通推進センターのデータによると、日本の中古住宅流通市場やリフォーム市場は拡大傾向にあります。背景には、「新築偏重」から「ストック活用」へという国の政策転換があり、今後は中古住宅でも価値が残りやすい社会に変わりつつあるのです。
一方で、賃貸派の場合は老後も一定の家賃を払い続ける必要があります。総務省の調査では、65歳以上の単身世帯の平均家賃負担は月5〜6万円程度で、年金収入に占める割合が大きく、生活に圧迫を与えやすいという現実もあります。
まとめ
つまり、「老後に住まいを資産として持っているかどうか」が、持ち家派と賃貸派の最大の違いです。持ち家なら家賃負担から解放される安心感があり、賃貸なら資産運用で補う柔軟性がある——この二つの選択がライフプラン全体に大きく影響を与えます。
ライフスタイルと居住満足度の調査データ
住まい選びにおいて重要なのは「お金」だけではありません。実際に暮らしてみて「どれだけ満足しているか」「自分らしい生活を実現できているか」も大きなポイントです。ここでは、各種調査データをもとに、持ち家と賃貸の居住満足度を比較します。
持ち家派の満足度
総務省や住宅金融支援機構の意識調査によると、持ち家に住む人は以下の点で高い満足度を示しています。
- 安定感:住宅ローンを支払い終えれば住居費が大幅に軽減され、老後の安心感につながる。
- 快適性:断熱・耐震・間取りなど、自分好みに設計・改修できるため生活の質が上がりやすい。
- 自由度:リフォームやDIYを自由に行えるため、長期的にライフスタイルの変化に対応できる。
この「住まいを自分仕様にできる点」が、特に子育て世帯や定年後の世代にはメリットと言えます。
賃貸派の満足度
一方で、賃貸に住む人の満足度は以下の項目で高い傾向があります。
- 柔軟性:転勤やライフスタイルの変化に応じて住み替えが容易。
- 利便性:駅近や都市部の好立地物件に住みやすい。
- 身軽さ:修繕や大規模リフォームの負担をオーナーに任せられるため、管理コストや精神的な負担が少ない。
特に若い世代や単身世帯は、この「自由に動ける身軽さ」を重視して賃貸を選ぶケースが多いのです。
年齢と持ち家率の関係
2018年の住宅・土地統計調査のデータを見ると、年齢が上がるほど持ち家率が高くなる傾向が明確に現れています。
- 20代の持ち家率:約6.4%
- 30代の持ち家率:約35.7%
- 40代の持ち家率:約57.6%
- 50代の持ち家率:約67.6%
- 60代の持ち家率:約79.8%
この数字は、ライフステージが進むにつれて「資産形成」「老後の安定」を重視し、持ち家を選ぶ人が増えることを示しています。若い頃は柔軟性を優先して賃貸を選び、子育てや老後を意識する年齢になると安定を求めて持ち家にシフトする——こうした住まい方の傾向が、統計からも裏付けられているのです。
まとめ
つまり、持ち家派は「安定・快適性・自由度」、賃貸派は「柔軟性・利便性・身軽さ」を重視しており、年齢が上がるほど持ち家を選ぶ割合が高くなります。居住満足度はライフスタイルや人生の段階によって変わるため、「今の自分に合った選択」をすることが重要だといえます。
ライフステージ別に最適解は変わる
「賃貸と持ち家、どちらが正しいか」という問いに、普遍的な正解は存在しません。重要なのは、その時々のライフステージに合わせて最適な住まいを選ぶことです。人生の節目ごとに重視する価値観や経済状況が変わるため、選択の基準も自然と変化していきます。
20〜30代:柔軟性を重視する時期 → 賃貸優位
社会人としてのキャリア形成や転職、転勤、結婚など、ライフイベントが多い時期です。この年代はまだ将来の生活設計が固まりにくいため、「柔軟に住み替えられる」賃貸にメリットがあります。
- 転勤や転職で居住地が変わっても対応しやすい
- 結婚や出産など家族構成の変化に合わせて間取りを変更できる
- 賃貸なら初期費用を抑えつつ、駅近や便利な立地にも住みやすい
実際に統計でも、20代の持ち家率は約6.4%にとどまります。多くの若い世代が「今の生活にフィットすること」を優先して、賃貸を選んでいるといえます。
30〜50代:資産形成と子育ての安定 → 持ち家優位
30代以降になると、ライフスタイルは安定し、家族を持つ人も増えます。教育環境や老後資産を見据えて、「腰を据えて暮らせる持ち家」を選ぶ人が増加します。
- 子どもの学校や通学環境を優先しやすい
- 住宅ローンを組んでも収入のピーク期に返済が進みやすい
- 自分好みに間取りやリフォームを行い、生活の質を高められる
調査でも、持ち家率は40代で約57%に達し、50代では65%を超えます。人生の中で最も「住まいを資産として築きたい」と考える時期だといえるでしょう。
60代以降:老後資金と住まいの安心 → 持ち家が優位
60代になると、住宅ローンを完済している人も多く、「住居費がほとんどかからない持ち家」の安心感が際立ちます。実際、60代の持ち家率は約79%と非常に高く、老後生活の安定を支える基盤となっています。
- ローン返済が終わり、住居費が大幅に軽減される
- 自宅をリフォームしてバリアフリー化するなど、老後仕様に対応できる
- 持ち家を資産として次世代に残せる
ただし、全員に持ち家が最適とは限りません。
近年は シニア向け賃貸住宅やサービス付き高齢者向け住宅 も増えており、「身の回りのサポートを受けながら賃貸で暮らす」選択肢を取る高齢者も少なくありません。
まとめ
- 20〜30代は柔軟性を重視し賃貸が有利
- 30〜50代は資産形成・子育て安定のため持ち家が有利
- 60代以降はローン完済で住居費が下がる持ち家が有利だが、賃貸も選択肢に
つまり、ライフステージに応じて「住まいに求めるもの」が変化するため、その時々に合った最適解を選ぶことが大切です。
データから導く結論
ここまでのデータを整理すると、賃貸と持ち家の違いはコスト・資産性・居住満足度・柔軟性の4つの視点で明確になります。それぞれの特徴を理解することで、自分にとって合理的な選択が見えてきます。
1. コスト面
生涯コストで見ると、短期的には賃貸、長期的には持ち家が有利です。
- 例:都市部の家賃12万円の賃貸に30年間住む場合の総支出は約4,500万円
- 一方、4,500万円の持ち家に30年間住む場合は約5,900万円
- 50年スパンで見ると、持ち家はローン完済後の住居費負担が減るため、賃貸より数百万円〜千万円程度安くなるケースが多い
つまり、「短期的には家賃負担が少ない賃貸が有利」「長期定住なら持ち家の方が経済的」と整理できます。
2. 資産性
持ち家の最大の強みは、老後に資産として住まいが残ることです。土地付き住宅であれば価値が完全にゼロになることは少なく、住宅ローン完済後は住居費がほぼ不要になります。
一方、賃貸は毎月の支払いが純粋な消費であり、資産は残りません。ただし、家賃分を投資や貯蓄に回すことで、別の資産形成が可能です。
不動産流通推進センターのデータによれば、中古住宅やリフォーム市場は拡大傾向にあり、持ち家を資産として活用する選択肢の幅も広がっています。
3. 居住満足度
居住満足度は年齢とともに変化します。
- 若い世代(20代〜30代)は賃貸派が多く、「身軽さ」「利便性」「住み替えの柔軟性」を重視
- 年齢が上がるにつれ持ち家派の満足度が上昇し、40代〜60代では「安定感」「快適性」「リフォーム自由度」が生活満足度に直結
このデータからも、ライフステージに応じた住まい選びが合理的であることがわかります。
4. 柔軟性
ライフスタイルの変化に対応するなら賃貸が合理的です。転勤・転職・家族構成の変化に応じて住まいを変えやすく、修繕やリフォームの負担もありません。若い世代やライフイベントが多い時期には、この「身軽さ」が非常に大きなメリットとなります。
結論:ライフステージに応じた最適解
- ライフステージ初期(20〜30代):柔軟性を優先して賃貸で身軽に暮らすのが合理的
- 資産形成期(30〜50代):教育・資産形成・家族安定の観点から持ち家で腰を据える
- 老後(60代以降):ローン完済済みの持ち家を活かし、住居費を抑えて安心の生活を送る
つまり、「若い時は賃貸で自由に、資産形成期は持ち家で安定、老後は持ち家を活用して安心」という流れが、データから導かれる最も合理的な住まい選びのパターンです。
最後に
賃貸か持ち家かの選択に「絶対の正解」はありません。人によってライフスタイルや価値観、経済状況は異なるためです。しかし、データに基づいて判断することで、後悔しない住まい選びが可能になります。
自分に合った選択を知るための具体的手段
- 住宅ローンと家賃の比較シミュレーション
- 月々の支払い、総支出、生涯コストを比較することで、短期・長期どちらが有利か客観的に確認できます。
- 金利や返済期間、将来のリフォーム費用なども考慮すると、より現実的なシミュレーションが可能です。
- 将来の収入・支出を踏まえたライフプラン表の作成
- 住宅費だけでなく、教育費、老後資金、医療費などの支出を加味すると、持ち家か賃貸かの合理性がより明確になります。
- 収入の増減やライフイベント(結婚、出産、転職など)もシナリオに組み込むことで、長期的な安心感を見極められます。
- 専門家への相談
- ファイナンシャルプランナー(FP)は、住宅費・資産形成・老後資金のバランスを数値で示してくれます。
- 設計士や不動産の専門家は、土地や建物の資産価値やリフォーム計画を踏まえた現実的な提案が可能です。
- 自分の条件に合った客観的アドバイスを受けることで、感覚的な判断によるリスクを減らせます。
将来の安心を見据えた選択を
住まいは人生における大きな投資です。ライフステージに合わせて、今の自分に必要な柔軟性・安定・資産性のバランスを考えることが、後悔しない選択の鍵となります。
- 若い世代なら賃貸で柔軟性を確保
- 子育て期や資産形成期なら持ち家で安定を確保
- 老後は持ち家を活かして住居費を軽減
これらを組み合わせて検討することで、生活の安心と資産形成を両立した住まい選びが実現できます。
賃貸か持ち家か、ライフステージに応じた住まいの選択について、データをもとに整理してきました。最終的には、自分の収入・ライフプラン・将来の安心を踏まえた判断が重要です。
もし「自分の場合はどちらが合理的か」を具体的に知りたい場合、専門家のアドバイスを受けることが最も確実です。私たち足立和太建築設計室では、
- ご家族のライフステージや将来設計に応じた住宅プランの提案
- 生涯コストや資産性を踏まえた間取り・仕様の検討
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