断熱等級6とは?家づくりで押さえておきたい高性能住宅の基準

近年、住宅の高性能化が進むなかで「断熱等級6」という言葉を耳にする機会が大きく増えてきました。特に冬の冷え込みが厳しい地域や、夏の強い日差しが続く地域では、住宅の断熱性能が暮らしの快適性や健康、さらには家の寿命にも大きく影響することが知られるようになってきています。これまでの住宅性能では満足できず、光熱費の高騰やヒートショックなどのリスクを感じて「より性能の高い家づくり」を求める方が増えているのもそのためです。しかしながら、断熱等級6がどのような基準なのか、従来の等級とどのような違いがあるのかまでは意外と知られていません。そこで本記事では、家づくりを検討されている方に向けて、断熱等級6の概要やメリット、実現するために知っておきたい設計のポイントまでわかりやすく解説します。
断熱等級6とは?最新基準の概要
断熱等級とはそもそも何か
断熱等級とは、住宅の壁・床・屋根・開口部(窓や玄関ドアなど)からどれだけ熱が出入りするかを数値で評価し、一定の水準を超えた住宅に対して付与される国の性能表示基準です。住宅の省エネルギー化を目的に制定されており、等級1〜7まで段階的に設定されています。数字が大きいほど断熱性能が高く、冷暖房に頼らなくても室内環境を安定させやすい家と評価されます。断熱等級はUA値によって客観的に評価されるため、住宅の性能を比較するときの指標としても活用されています。
断熱等級6が導入された背景
近年、エネルギー価格の高騰や地球温暖化対策への関心が高まり、省エネ性能の高い住宅への需要が全国的に高まっています。従来の基準(断熱等級4)でも一定の性能は確保されていましたが、さらなる断熱性・省エネ性の向上を図るため、2022年に断熱等級5,6,7が新たに追加されました。また、欧米諸国と比較して日本の住宅性能が遅れているという指摘もあり、国として住宅の性能底上げを進める狙いもあります。
断熱等級5との違い
断熱等級5でも高性能と言われていますが、等級6ではさらに厳しいUA値が求められます。例えば愛知県が該当する6地域では、等級5のUA値0.60W/㎡Kに対し、等級6では0.46W/㎡K以下を満たす必要があります。この違いは数字以上に大きく、同じ間取り・同じ設備でも室内の温度環境に大きな差が生まれます。特に窓まわりの開口部性能や屋根・床下の断熱材の性能を高めることが重要になり、うまく設計すればエアコン1台で家中を暖めることが可能となります。断熱等級7はさらに高グレードですが、一気に断熱のコストが上がります。最もコストパフォーマンスが良いのが、断熱等級6と言えます。
断熱等級6の家にするメリット
冬暖かく夏涼しい快適な室内環境
断熱等級6の住宅は外気との温度差を大幅に抑えられるため、冬場でも室内の熱が逃げにくく、少ない暖房でも家全体が均一に暖まります。逆に夏場は外からの熱の侵入を抑えることで冷房効率が高まり、エアコンを強く稼働させなくても涼しい室内環境が保てます。外気の影響を受けにくいため、寝室や廊下、トイレなど家全体の温度が安定し、一年を通して快適に暮らすことができます。
光熱費の削減につながる省エネ性能
断熱性能が高い住宅では、冷暖房に必要なエネルギーを最小限に抑えることができます。例えば冬に暖房を一度入れるとその暖かさが長時間持続し、頻繁に暖房を入れ直す必要がありません。夏も同様に冷房が効率良く働くため、エアコンの稼働時間を短縮できます。これにより年間の光熱費を大きく削減でき、長期的には住宅のライフサイクルコストを抑えることにつながります。
健康面への影響(ヒートショック対策など)
断熱等級6の家では室内の温度差が少なくなるため、特に冬場に起きやすいヒートショックのリスクを大幅に軽減できます。浴室や脱衣室、トイレなども居室と同じような温度に保たれることで、急激な温度変化による身体への負担を減らすことができます。また、結露が発生しにくいため、カビやダニの発生を抑制でき、アレルギーや喘息などの健康被害を予防できるというメリットもあります。
断熱等級6を実現するために重要なポイント

断熱材の種類と厚み
断熱等級6を満たすためには、断熱材そのものの性能だけでなく、使用する部位に応じて適切な厚みを確保することが重要です。壁の断熱材はもちろん、屋根や天井は熱が最も逃げやすい部分であるため、特に厚みを確保して断熱性能を高める必要があります。また、床下も外気の影響を直接受けやすい場所のため、床下断熱材の種類や施工方法にも注意が必要です。グラスウール、セルロースファイバー、フェノールフォームなど、材質ごとの熱伝導率や吸湿性の違いを理解して使い分けることが、高い断熱性能を実現するポイントになります。
窓・サッシの選び方(断熱性能を高める開口部設計)
住宅における熱の約5〜6割は窓や玄関などの開口部から出入りしていると言われています。そのため、開口部の断熱性能を強化することは断熱等級6を実現するうえで欠かせません。Low-E複層ガラスやトリプルガラス、樹脂サッシを採用することで開口部の熱損失を大幅に抑えることができます。また、窓の配置やサイズも重要で、南面には日射取得を考慮した大きめの窓を設け、北面や西面では小さめの窓にして日射遮蔽を図るといった設計上の工夫を行うことで、さらに断熱・省エネ効果を高めることができます。
気密性と断熱性能の関係

いくら高性能な断熱材や窓を採用しても、住宅に隙間が多いとその効果は十分に発揮されません。気密性を高めることで、室内の暖気や冷気を逃がさず安定した室温を維持することができます。特に配管や配線部分、サッシ周り、建物の接合部などに隙間が生じやすいので、施工時にしっかりと防湿気密シートを貼り、気密テープなどで丁寧に処理することが重要です。断熱性能と気密性能はセットで考えることで、断熱等級6本来の性能を最大限に引き出すことができます。
断熱等級6を実現するためには「計算」が必要
1. 計算が必要な理由
断熱等級6を満たすには、ただ断熱材を厚くすればいいわけではありません。理由は次の通りです。
- 家全体のバランスが重要
- 壁だけ断熱しても、窓が大きくて性能が低いと、熱がそこから大量に逃げてしまいます。
- 屋根や床も含めて全体で計算する必要があります。
- UA値で性能を確認
- 外皮平均熱貫流率(UA値)という計算を行い、家全体の断熱性能を評価します。
- この計算結果に基づき、どの壁にどの厚さの断熱材を使うか、窓の性能はどの程度必要かを決めます。
2. 計算で求める主な項目
断熱等級6の家を設計する際には、以下の項目を計算して決めます。
- 外壁・屋根・床の断熱材の種類と厚さ
- 例えば、外壁に100mmの高性能グラスウールを入れた場合、計算によって、屋根にはさらに厚い断熱材が必要になることがあります。
- 窓(サッシ+ガラス)の性能
- ペアガラスでは断熱性能が不足する場合は、樹脂サッシ+トリプルガラスなどの高性能窓を選ぶ必要もでてきます。
- 窓の断熱性能が低いと、家全体のUA値が悪化します。
- 窓の面積比率
- 大きすぎる窓は熱の逃げやすさに直結します。
- 設計段階で窓の大きさや配置も外観のデザインとともに検討し、計算に反映させます。
断熱等級6の家づくりは、断熱材や窓の性能を単に選ぶだけではなく、設計段階での正確な数値計算が不可欠です。
この計算をもとに設計を行うことで、
- 冬は暖かく、夏は涼しい快適な家
- 光熱費の少ない効率的な家
を作ることが可能になります。
3. 断熱等級6の各部断熱材の仕様の目安
ここで、参考までに最も一般的な断熱材であるグラスウールを使用した場合に、断熱等級6を確保するために必要な密度と厚みを記しておきます。
ただし、平面や、窓の大きさ、屋根形状によって変わってきますので、ひとつの目安として理解してください。
- 屋根:高性能グラスウールで密度14Kまたは16K、厚み310mm
- 外壁:高性能グラスウールで密度20Kまたは24K、厚み105mm
- 床:大引間:床用グラスウール密度24Kまたは32K、厚み80mm
- 窓:U値1.6W/m2・K(Low-E複層ガラス、樹脂窓)
- 玄関ドア:U値1.6W/m2・K(断熱ドア)
断熱等級6の家を建てる際の注意点
コストとのバランス
断熱性能を高めるためには、断熱材や高性能サッシなどの材料コストが増えるため、初期費用は一般的な住宅より高くなる傾向があります。そのため、限られた予算の中で“どの部位に優先的に投資するか”を整理することが大切です。例えば屋根や窓など、熱の出入りが大きい部分から優先的に性能を高めることで、全体のコストを抑えつつ高い効果を得ることができます。また、初期費用だけで判断するのではなく、光熱費の削減や健康面でのメリットなど長期的な視点から総コストを比較することが重要になります。
換気・結露対策もセットで考える
高断熱・高気密住宅では、隙間が少ないため、一般の住宅に較べて外部との空気の出入りが減ります。そのため、計画的な換気を行うことで、室内の湿気を排出し、結露やカビが発生するリスクを減らすことが重要です。また、断熱等級6相当の住宅では、24時間換気に加えて熱交換型換気システムを採用することで、外気を取り入れながら室内温度を保つことで、より省エネ性が高まります。また、浴室や洗濯干しスペースなど湿気が多い場所には局所換気を併用し、換気計画と断熱・気密性能を一体で設計することが重要です。
愛知で断熱等級6の家を建てるなら
地域特性(冬の冷え込み・夏の暑さ)を考慮する
愛知県は、冬は比較的冷え込む日もあり、夏は蒸し暑さが厳しい地域です。そのため、住宅の断熱・気密性能だけでなく、屋根・外壁の遮熱対策や窓の配置にも配慮する必要があります。具体的には、冬季に日射を有効に取り入れる南向きの窓設計や、夏季の日射を遮る庇や外付けブラインドなどを組み合わせることで、一年を通じて快適な室温を維持することができます。また、冷暖房の効率を高めるために、地域の気候特性に合わせた断熱材の厚みや材料選定を行うことも重要です。
対応可能な設計事務所を選ぶポイント
断熱等級6の家を建てるには、単に断熱材を厚くするだけではなく、気密性や換気計画も含めたトータル設計が必要です。対応可能な設計事務所は、断熱・気密の性能計算や材料選定の知識を持ち、実際に等級6に対応した住宅の設計・施工実績があるかを確認できます。また、施工事例において室温のシミュレーションや光熱費削減の効果を示している設計事務所は、地域特性に適した最適な設計提案をしてくれる可能性が高いです。信頼できる設計事務所を選ぶことで、性能だけでなく快適性や長期的なコストメリットも確保できます。
まとめ|高性能な家づくりには正しい知識が不可欠
断熱等級6は、これからの家づくりにおけるスタンダードとも言える高性能基準です。室内の温度が安定することで、冬の暖房負荷や夏の冷房負荷が軽減され、光熱費の削減にもつながります。また、温度差が少ないことでヒートショックなど健康リスクも抑えられ、快適性と安全性の両立が可能です。さらに、断熱等級6の住宅は結露やカビの発生を抑えやすく、建物の耐久性向上にも寄与します。
性能を十分に発揮するためには、断熱材や窓の選択だけでなく、気密性の確保や換気計画、間取りとのトータル設計が不可欠です。設備や素材、施工の質を含めた総合的な設計が、長期にわたって快適で省エネな住まいを実現します。
愛知で断熱等級6の家を建てることを検討している方は、地域特性に合わせた断熱・遮熱計画や気密施工、換気システムをしっかり提案してくれる設計事務所に相談することで、安心して高性能住宅のメリットを享受できます。
断熱等級6の家づくりを考えるなら、経験豊富で地域特性に精通した設計事務所と一緒に計画を進めることが重要です。足立和太建築設計室では、愛知の気候に合わせた断熱・遮熱設計や、気密性・換気計画までトータルでサポートしています。
当事務所では、快適性・省エネ性・健康面・建物の耐久性を考慮した高性能住宅の設計を心がけています。お客様のライフスタイルや希望に沿ったプランニングを行い、光熱費削減や長期的な住まいの安心を提供します。
まずはお気軽に足立和太建築設計室までお問い合わせいただければと思います。
無料相談・無料プランニングはこちらからどうぞ