床下エアコンとは?仕組み・メリット・注意点をわかりやすく解説

目次

はじめに

冬の朝、床が冷たくて起きるのがつらい…」そんな経験はありませんか?
住宅の暖房方法にはさまざまな種類がありますが、その中でも近年注目されているのが「床下エアコン」という仕組みです。

床下エアコンは、一般的な壁掛けエアコンとは異なり、足元からじんわりと家全体を暖めてくれる暖房方式。高断熱・高気密住宅と相性が良く、快適な室内環境を実現できる可能性があります。

しかし、「後悔した」という声があるのも事実です。導入にはしっかりとした設計と住宅性能のバランスが求められるため、仕組みや注意点を正しく理解しておくことが大切です。

この記事では、建築士の視点から、床下エアコンの基本的な仕組み、メリット・デメリット、向いている住宅の特徴、設計のポイントまでを詳しく解説します。
「床下エアコンを採用して快適な家にしたい」とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

床下エアコンとは?

床下エアコンの基本的な仕組み

床下エアコンとは、エアコンからの暖気を床下空間に送り込み、床を通じて室内を暖める暖房方式です。従来のエアコンが壁から暖気を吹き出すのに対し、床下エアコンは足元から部屋全体を均一に暖めるのが特徴です。

床下エアコンは、住宅の「床下空間」に暖房用のエアコンから温風を送り、床を通して室内を暖める仕組みです。床暖房のように直接床材を暖めるわけではなく、「床下空間を温めることで、床や室内の空気をじんわり暖める」間接的な暖房方式です。


■ 暖房の流れはこうなっています:

  1. 床下に設置されたエアコンが温風を送る
     → 使用するのは通常の家庭用エアコン(床置きタイプや壁掛けを転用)です。
     → 設置場所は、点検口のある収納下やユーティリティスペースなど。
  2. 温風が基礎内部の床下空間全体に広がる
     → 基礎断熱工法を採用し、床下を「室内と同じ温熱環境」にしておくことが前提です。
  3. 床材(フローリングなど)を通して室内にじわじわ熱が伝わる
     → 床材がほんのり温かくなり、足元から暖かい空気が自然に立ち上がります。
  4. 熱は対流しながら家全体に広がる
     → 空気の通り道(スリットやガラリ、通気口など)を設けて、間仕切りの多い空間でも循環するよう設計します。

通常のエアコンとの違い

一般的な壁掛けエアコンでは、暖かい空気が天井付近に溜まりやすく、足元が冷えがちです。一方、床下エアコンは暖かい空気を床下から循環させることで、足元が冷えにくく、快適な室内環境をつくることができます。

また、通常の壁掛けエアコンでは、気流が直接顔や、からだに当たって、不快な思いをしがちですが、床下エアコンにはそうした不快感がありません。

通常の床暖房との違い

床下エアコンと似た方式で「床暖房」というシステムもありますが、方式は全く違います。

床下エアコンは家庭用のエアコンを基本的には1台使用するだけですが、床暖房というシステムは、下図のように温水用の配管と専用パネル、あるいは電気の場合ならヒーターパネルなどの設備機器が必要となり、施工費用もかなりかかります。

註)ダイキンHPより

床暖房ですから、床面は暖かく快適ですが、家中を暖かくするにはヒーターパネルの施工範囲が広くなりすぎ現実的ではありません。

また、熱源は電気、ガス、灯油などありますが、ランニングコストでは家庭用のエアコンにはかないません。

このように、床下エアコンの方式はイニシャルコスト、ランニングコスト両面にメリットがあり、かなり良い方式と家ます。

床下エアコンの仕組みと構造

どこにエアコンを設置するのか?

一般的には、床下点検口や収納スペース内に壁掛けエアコンもしくは床置きタイプのエアコンを設置します。機種は暖房能力の高いタイプを選ぶのがポイントです。

下図の例は居間のTV台に組み込んだ場合の図面です。

エアコンの上部から空気を吸い込み、下部から床下に暖気を噴き出しています。

床下エアコンの設置例

床下に温風を送る流れ

エアコンから出た温風は、基礎断熱された床下空間を通って家中に拡がります。通気口やガラリ(床のスリット)から自然に立ち上がる熱で室内を暖める設計です。

このように床下から家中に温風が広がることができるのは、床下の基礎がひとつづきの空間になっているからです。

必要な断熱・気密性能

床下エアコンは高断熱・高気密の家との相性が抜群です。特に床下の断熱施工が甘いと効果が半減しますので、設計段階から断熱・気密の確保が重要です。

● 床下エアコンでは「床下も室内」として扱う

床下エアコンの運用では、床下空間を準居室(=室内とほぼ同じ温熱環境)とみなします。そのため、床下の断熱は外気と完全に切り離す断熱構造=基礎断熱が基本です。

● 床下エアコンで必要な断熱性能

床下エアコンの効果を十分に発揮するには、少なくとも以下のレベルを目安にしましょう。

地域区分推奨UA値(床下エアコン向け)
6地域(愛知・岐阜など)0.46 W/㎡・K 以下(断熱等級6〜7相当)
5地域(長野南部など)0.40 W/㎡・K 以下
寒冷地(北海道・東北)0.30 W/㎡・K 以下またはそれ以上の高性能

※ 数値が低いほど断熱性能が高い

⚫️床下エアコンに必要な「気密性能」とは?

床下エアコンの暖房効率は、温風が想定通りのルートを通って各部屋に届くかどうかに大きく左右されます。気密性が低いと、せっかく温めた空気が隙間から漏れてしまい、暖まりにくい・ランニングコストが上がるといった問題が発生します。

床下エアコンを導入するなら、最低でも以下の気密性能を確保することが望ましいです。

評価項目推奨値
C値(相当隙間面積)1.0cm²/m² 以下(できれば 0.5 以下)

※ 気密測定を実施することが前提です

床下エアコンのメリット

冬でも足元から暖かい

「部屋は暖かいけど足元が冷える…」という不満を解消できます。床面温度が安定することで、体感的にとても心地よく過ごせます。

壁掛けエアコンのように、暖気が直接顔や体にあたってしまう不快感がありません。

エアコンが持っていた不快感の要素が解決されていると言えます。

家全体を効率的に暖房できる

一台のエアコンで家全体を暖められる設計も可能です。間仕切りの少ない間取りやコンパクトな平屋に特に向いています。

ランニングコストが安い

一台の家庭用エアコンで家中を暖房できるわけですから、ランニングコストが抑えられる点も大きなメリットです。

床材のフローリングは自由に選定できる

床暖房では、30℃〜50℃の温水で床を温めるため、床暖房用のフローリングを使用しいないと変形、反り、ひび割れを起こしてしまいます。

一方、床下エアコンは床面を直接温める訳ではありませんので、特に専用のフローリングにするなどの配慮は不要で、無垢フローリングでの複合フローリングでも自由に選定できます。

4. 床下エアコンのデメリット・注意点

間取りや基礎設計に注意が必要

空気の流れを考慮した間取り設計が必要です。吹き抜けや通気経路がうまく設計されていないと、暖まりにくい場所が出てしまうことも。

また、特に床下の基礎の設計に注意が必要です。

一般的な基礎は下の写真のように間仕切り壁の下に基礎の立ち上がりがあります。

この基礎の立ち上がりが、暖気の流れを阻害してしまいます。

床下エアコンを採用する場合は、この基礎の立ち上がりを少なくする設計上の工夫が必要です。これをせず普通の基礎で作ってしまうと、暖気がうまく流れず暖房が効かないという失敗につながってしまいます。

エアコンの選定に注意が必要

床下エアコンを選定する場合は、温度センサーが本体上部にあるか、リモコンにセンサーが付いているタイプを選ぶ必要があります。

もし、センサーが下部についていると、床下の温度を感知してしまい、室温が上がる前に停止してしまいます。

また、家庭用の壁掛けエアコンを使用しますが、メーカーの想定している使い方ではないため、メーカー保証は出ません。

メーカー保証は普通1年ですが、1年で故障することはまずありませんが、そうしてもメーカー保証が欲しいという場合は、床下エアコンの採用はやめた方が良いです。

設計・施工に高い技術が必要

一般的なエアコン設置とは異なるため、床下エアコンに詳しい設計士・施工業者の選定がとても大切です。

基礎の設計、断熱性能、気密性能、空気の流れ、機種の選定など注意すべきことが多いので、見よう見まねで採用することは避けた方が良いと言えます。

5. 床下エアコンに向いている家・向いていない家

向いている家の条件

① 高断熱・高気密住宅であること(性能)

これは絶対条件です。
床下エアコンは間接暖房なので、熱が逃げにくい性能の家でなければ、十分に暖まりません。

  • UA値 0.46以下(断熱等級6〜7)
  • C値 1.0以下(できれば0.5以下)
  • 基礎断熱+床下の気密施工がされている

▶︎ 特に基礎の断熱・気密が甘いと、床下の暖気が屋外に逃げてしまい、床が冷たい・部屋が暖まらないという失敗につながります。


② 基礎断熱工法の住宅であること(構造)

床下エアコンは、床下を暖房経路に使う=床下を室内扱いするという考え方なので、床断熱(床下を外気とする)工法の家では使えません

  • 基礎断熱工法(外周基礎+土間スラブを断熱)
  • 布基礎・ベタ基礎ともに対応可能

③ 平屋、または1階を主に使う生活スタイル

床下エアコンは主に「1階部分の暖房」に適した方式です。
2階まで空気を循環させることは可能ですが、やや設計の工夫が必要です。

  • 平屋住宅
  • 1階にLDK+寝室など生活の中心がある家
  • 2階は個室中心で、使用頻度が少ない

向いていないケース

①断熱・気密性能が不足している

理由:
断熱・気密が不十分だと、暖めた空気が逃げてしまい、床下エアコンの効果が大幅に低下します。

よくある状況:

  • 断熱等級4(旧省エネ基準)レベル
  • 床下の基礎断熱が甘く、気密も未処理
  • 気密測定をしていない

②床下が外気に開放されている(床断熱・通気基礎)

理由:
床下が冷たい外気にさらされる状態では、そこに温風を送っても熱がすぐ逃げてしまうため、暖房効果が得られません。

よくある状況:

  • 床下に通気口があり、床断熱仕様
  • ベタ基礎だけど断熱がスラブ下にない
  • シロアリ対策優先で通風設計になっている

床下エアコンの電気代は高い?ランニングコストの目安

消費電力と電気代の目安

高断熱・高気密住宅であれば、むしろランニングコストは安く済む場合が多いです。

「床全体を暖める」というと一見コストが高そうに思われがちですが、床下エアコンは家庭用エアコン1台で暖房できる点が最大のメリット。
しかも空気を直接温める対流型暖房なので、床暖房などの放熱型に比べて立ち上がりが早く、効率が良いという特徴もあります。


床下エアコンのランニングコストの目安

ここでは、延床30坪(約100㎡)・1階20坪(約66㎡)程度の住宅で、床下エアコンを1台稼働した場合のシミュレーションです。

▶ 想定条件

  • 家庭用14畳用エアコン(消費電力:500W〜1,200W)
  • 暖房期間:11月〜3月(5ヶ月間)
  • 稼働時間:1日15時間(つけっぱなしも含む)
  • 電気料金単価:27円/kWh(中部電力などの目安)

▶ 月間電気代の目安(平均800W使用時)

0.8kW × 15時間 × 30日 × 27円 = 約9,720円/月

▶ 暖房期間(5ヶ月)の合計電気代

9,720円 × 5ヶ月 = 約48,600円/冬シーズン

これがエアコン1台で1階の床暖+空間暖房を兼ねた金額と考えると、コストパフォーマンスはかなり良好といえます。


床暖房との比較

床暖房とのランニングコストの比較をしてみました。

暖房方式初期費用ランニングコスト(冬)備考
床下エアコン◎低い(10〜20万円)◎5〜6万円程度エアコン1台で全館暖房が可能
床暖房(電気式)×高い(50〜100万円)△7〜12万円程度温まるのが遅い、広い面積は非効率
床暖房(温水式)×高い(80〜150万円)△6〜10万円程度ボイラー・メンテ費用あり

建築士から見た「床下エアコン」のおすすめポイント

「床下エアコン」は、単に暖房方式のひとつではなく、住宅性能と暮らし方をトータルで考える暖房計画のひとつの答えです。ここでは、建築士として数多くの家づくりに関わってきた立場から、設計目線でのおすすめポイントを詳しく紹介します。


1. 一台で全館暖房を実現できる省エネ性

高断熱・高気密の家において、床下エアコンは1階全体+吹き抜けを通じて2階の一部まで暖房可能な優れたシステムです。

  • 空間ごとにエアコンを設ける必要がなく、設備費や配線もシンプル
  • 床下に温風を送り、自然な対流で家全体を暖める設計
  • 家全体がほぼ同じ温度で保たれるので、ヒートショックのリスクも低減

2. 暖房器具が見えない美しい空間づくり

設計者としては、インテリアに機器類を見せない工夫も大切にしています。床下エアコンはその点でも非常に優秀です。

  • エアコン本体は床下または床面近くの収納内に設置
  • 吹き出し口は床面に目立たないガラリ(通気口)
  • 生活感のない、すっきりとしたデザイン性の高い空間に仕上がります

▶ 「暖房機器が見えないのに、冬はずっとぽかぽかしている家」──これはお施主様にとっても、大きな満足ポイントです。


3. 床がほんのり温かく、快適性が高い

床暖房ほど熱くならず、エアコン特有のドラフトと言われる風の直撃感が少ないのも床下エアコンの特徴。

  • 輻射+対流の中間的な暖房感覚
  • 朝起きたときや帰宅時でも、足元がほんのり暖かい
  • 吹出口の風もやわらかく、音も静か

▶ 赤ちゃんのいるご家庭や、高齢の方にもおすすめできる暖房方法です。


4. メンテナンス性が良く、長く使いやすい

住宅設備の選定では、「シンプルな仕組みで、長く使えること」も大切な視点です。床下エアコンは家庭用エアコンを活用するため、次のようなメリットがあります。

  • 家電量販店でも買える一般的なエアコンが使える
  • 故障時の修理や交換も特別な設備が不要
  • ランニングコストが安く、将来の更新も負担が少ない

▶ 床暖房や温水暖房と比べて、設備更新の自由度が高いのも魅力です。


5. 暖房と同時に「空気の流れ」を設計できる

床下エアコンの大きな特徴は、単に暖めるだけでなく、空気の流れ=家の環境そのものをデザインできることです。

  • 吹き抜けや階段を通じて家全体をゆるやかに空気が循環
  • 家族のいる場所すべてが均一な温度環境
  • 湿気や結露、カビ対策にも有効

まとめ:床下エアコンで快適な冬を過ごすために

床下エアコンは、高断熱・高気密の住宅において、快適性・省エネ性・デザイン性をすべて兼ね備えた暖房方式です。

  • 足元からじんわりと暖かく、家全体をムラなく暖めてくれる
  • エアコン1台でも、吹き抜けを通して2階まで暖かくなる
  • 機器が見えず、インテリアを邪魔しない
  • 将来のメンテナンスや更新も安心

床下エアコンは、冬を快適に過ごすための有効な暖房手段です。ただし、設計・施工に技術が必要なため、「なんとなく良さそう」で選ぶと後悔するケースもあります。

信頼できる設計者と相談しながら、自分たちの暮らし方・家の性能に合った暖房計画を立てることが大切です。

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