省エネ・・・建物による方法

今回から、省エネについて考えていきたいと思います。
コラム18で、省エネには2つの方法があるとお伝えしました。
1つは「建物による方法」、もう一つは「設備による方法」です。
さて、今回は建物による方法について考えていきます。
これはいかに負荷を低減させるかということですが、ここで、建物の負荷にはどんなものがあるかをみてみましょう。
建物の負荷には大きく分けて2つあります。
1つは「外部負荷」、もう1つは「内部負荷」です。
「外部負荷」とは、外の暑さや、寒さが建物の外壁・屋根・窓などを通して内部に伝わってくる負荷です。
「内部負荷」とは、家の中の照明器具だったり、パソコン、テレビなどの設備機器から発生する熱、そして人から発生する熱などの負荷です。
人は100Wの電球ほどの熱を発しているんですよ。
結構熱いですね。
そしてもう一つ、大きな負荷が、実は換気による負荷(外部から取り入れる新鮮空気による負荷)外気負荷なのです。
換気をして、外の空気を取り込むと、暖かい空気、あるいは冷たい空気が部屋の中に入ってきます。
この空気が負荷になるわけですね。
この外気負荷については「設備による低減」で考えてみたいと思います。
さて、これらの負荷の中で、どの負荷を低減することができそうでしょうか。
そうです。外部負荷です。
外壁や屋根の断熱性能を高めれば、外からの熱が伝わるのを少なくできそうですよね。
また、窓でも、ガラスをペアガラスにしたり、日射を防ぐ遮熱ガラスにしたりして、断熱性能を高めることができそうです。
昨今、高断熱住宅とか高気密住宅とか外張断熱とかよく耳にしますが、いずれも建物の断熱性・気密性を高めて、負荷を低減させようということですね。
それではここからは、断熱について少し考えてみます。
断熱の基本は、地盤に近接している床、外気に接している外壁、屋根、天井などをぐるりと断熱材で包んで外部環境から保護することです。
隙間なく施工することで、熱が外に逃げたり、外から熱が入り込むことを防ぐわけですね。
住宅省エネルギー技術講習ー基本テキストより
そして、この断熱材にはいろいろな種類があります。
大きく分けると、グラスウール、セルロースファイバー、現場発泡ウレタン、ポリスチレンフォームといったところでしょうか。
さらにこれらには様々なグレードがあり、性能が違ってきます。
もちろんコストも違ってきます。
施工も含めて考えた場合、コストは
セルロースファイバー>発泡ウレタン>ポリスチレンフォーム>グラスウール
のようになるかと思います。
先ほど列記した断熱材の種別と性能を簡単に表にまとめてみました。
性能は熱伝導率で示していますが、これはその材質の熱の伝わりやすさを数値で示したものです。
この数値が小さいほど、熱が伝わりにくく、断熱性能が高いということです。
こうした断熱材を使って建物を断熱して外部からの負荷を低減するわけです。
それでは、建物を断熱する工法には、どんな方法があるでしょうか。
大きく分けて2通りあります。
1つは充填断熱工法、もう一つが外張断熱工法です。
住宅省エネルギー技術講習ー基本テキストより
充填断熱工法とは壁の中の柱、間柱そして梁などの構造の軸組みの中に断熱材を充填する工法です。
一方、外張断熱工法は、柱、間柱、梁などの構造の軸組の外側に断熱材を施工する工法です。
さらにいえば、充填断熱した軸組の外側に外張断熱をする付加断熱という工法もあります。
充填断熱工法は、施工精度によって断熱性能が左右されますが、ローコストで施工でき、また、使える断熱材も上記の断熱材の全てが使用できます。
また、断熱性能を発揮させるために、気密材などにより気密性の確保が重要です。
外張断熱工法は建物全体を断熱材で覆ってしまうため、熱損失が発生しにくく、かつ気密性の施工もしやすいというメリットがあります。
使用する断熱材はポリスチレンフォームかグラスウールボードが一般的ではないかと思います。
このように断熱材の種類も、断熱工法もいろいろあるわけですが、各々のメリット、デメリット、そしてコストなどを勘案して、最適なバランスを取って設計することが大切だと思います。
しかし最も重要なのは十分な断熱性能が発揮できるように、しっかりとした丁寧な施工をするということです。
せっかくいい断熱材を入れても少しの隙間で、断熱性能が大きく下がってしまいますからね。
ここまで、建物による負荷の低減ということで、簡単ではありますが断熱について考えてきました。
それでは次に、この断熱というものが部屋の環境にどのように影響してくるでしょうか。
断熱材の有無、断熱材の違い、あるいはサッシのガラスが1枚の場合、ペアガラスの場合などによって部屋の環境がどれほど変わってくるのかを考えてみたいと思います。
このテーマについては次回のコラムで考えてみようと思います。