11:設計図って何が書いてあるの?
コラム10で良い図面と悪い図面をテーマに書きましたが、それでは設計図とはどんな図面があって、どんなことを書いているのでしょうか。
実は僕も大学時代には設計図にどんな種類があって、どんなことを書いているのかよく知りませんでした。
ましてや一般の方々は全くご存知ないのではないかと思います。
日常でよく目にするのは、新聞広告に入っているマンションとか建て売り住宅の間取り図だと思います。
これは平面図といいますが、おそらく大多数の方がこの平面図とその他数枚の図面が設計図だとの認識ではないかと思います。
コラム01で平面図があれば大工さんが建物を造ってくれると書きましたが、これは大工さんの頭の中に建物を造る上での必要な情報が全て入っているからできるのです。
でもこの情報は他の人が見ることはできません。
大工さんが変われば、同じ平面図でもまた違う建物ができることでしょう。
また、あるハウスメーカーの図面では、クライアントと打ち合わせをしたその情報が細かく網羅された平面図、そして外観を示す立面図があり、その他の情報は規格が決まっているため、記号で全てが施工者に通じるように要領よくまとめてあります。
この場合も、クライアントは図面で形状などを確認することはできません。
設計事務所が書く設計図はこのような大工さんの頭の中にある情報、あるいはハウスメーカーの規格になっているような情報を図面に表現して、誰でもわかるようにしたものといえます。
もう少し具体的にご説明します。
図面の種類には意匠図、構造図、電気設備図、給排水衛生空調図があり、意匠図はさらに下記のような図面で構成されます。
平面図・・・建物を水平方向に切断して真上から見た図で、間取り、窓、出入り口などを書いた図面
断面図・・・建物を垂直に切断して、横から見た図で、建物の高さ、屋根形状、室内の天井高を書いた図面
立面図・・・建物の東西南北の各面を真横から見た図面で、窓の位置、外壁などの仕上を書いた図面
天井伏図・・・建物を水平に切断して、上を見た図で天井の形状、仕上げを書いた図面
平面詳細図・・・平面図を拡大して書いた図で、柱、窓の位置と大きさ、外壁の仕組み、断熱材の仕様、内壁の仕組みと位置、各出入口の位置と大きさ、造つけ家具の位置と大きさなど、細かく各部の納まり、寸法を指定した図面
断面詳細図・・・断面図を拡大して書いた図で、屋根の仕組みと勾配、梁の位置と大きさ、床の仕組み、窓及出入口の高さと取付の仕組みなど細かく納まり、仕上げ、寸法を指定した図面
展開図・・・部屋の中の壁を真横から見た図で、四角い部屋なら4つの壁を各々書き、壁の仕上げ、窓、出入り口の高さ、位置、家具などの形状、寸法、仕上げを書いた図面
建具表・・・窓、出入り口の建具を書いた図で、アルミサッシ、スチールサッシ、木製建具などの種別と各建具の幅、高さの寸法、仕上げ、鍵とか蝶番などの金物の仕様など細かく指定した図面
外構図・・・塀とか、テラスとか植栽とか建物以外の外部廻りの仕様を書いた図面
その他に特記仕様書(建物を造る上での細かな約束事を書いた図面)、内部、外部仕上表、さらに平面・断面詳細図をさらに拡大した部分詳細図、また家具詳細図などがあります。
これらの図面を総合すると数十枚の図面になるわけです。
ここまで、書いてはじめて、建物の全貌が明確になり、どの施工業者さんでも同じ仕様の見積もりができるようになるわけです。
こうした図面を書く上で、各設計事務所は自社の技術力、美的感覚を研ぎ澄まして表現するわけですね。
この図面を元にして、各工務店さんに工事費を見積もっていただき、安くてお任せできそうな工務店さんに施工を依頼するという流れになります。
図面をキチッと書いても、工事費にばらつきが出てしまうのですが、全ての情報が金額と共に詳らかにされるているわけですから、公正に比較もできますし、予算に合わせるための増減もしやすくなるわけです。
いかがでしょうか。何となく設計図のことがおわかりいただけたでしょうか。
次回は、もう少し突っ込んで、プロポーション、スケール感について考えてみたいと思います。
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