昨日、設備設計一級建築士の講習会に行ってきました。
「設備設計一級建築士」って、聞き慣れない資格ですよね。
僕は設備の専門家ではないのですが、この資格を持っています。
というか、取らざるを得なかったのですが。
さて、コラムで「建築士のいろいろ」を書きましたが、ちょっと言葉足らずでした。
もう少し詳しくお伝えします。
一般的によく知られている資格は「一級建築士」です。
建築士には大きく分けて、2つの専門領域があって、一つは「意匠系」ともう一つは「構造系」です。
「意匠系」は、建築のプランから、外観、インテリア、設備、構造の全てをまとめる役割をしています。
木造の一般的な住宅でしたら、この全てを意匠系の建築士が行うことは可能です。
しかし、住宅でも鉄骨造、鉄筋コンクリート造であったり、あるいはビル系の建築の場合などの構造は専門的な知識が必要で、難しい構造計算もしなければなりません。
このような時は、構造を専門とする「構造系」の一級建築士の方に構造の設計を依頼するわけです。
同様に設備についても、設備を専門とする設備設計事務所に設計を依頼します。
「意匠系」と「構造系」で役割が違うのですが、資格上はどちらも「一級建築士」なのです。
しかし、設備については、特に「一級建築士」である必要はないので、「建築設備士」の資格は持っていても、「一級建築士」の資格を持っている方は非常に少ないです。
ここまでが、建築をつくる上での、役割分担と資格の説明です。
でもここには「設備設計一級建築士」の資格がまだ、出てきていません。
この資格は比較的新しい資格なのですが、
実は、この「設備設計一級建築士」の資格でができた背景にはある大きな事件が関わっています。
それが2005年に起きた、「構造計算書偽装問題」とか「耐震偽装問題」と呼ばれている、事件です。
ある一級建築士が、構造計算書を偽装して申請を通し、そのまま建築を造ってしまった事件です。
構造計算を偽装して、構造の耐力が不足したまま、建築を造って大問題となりました。
建築界は大揺れで、その後この一連の問題の対策の一環として、高度な専門能力を有する建築士による構造設計及び設備設計の適正化を図るために、一定規模以上の建築物について「構造設計一級建築士」及び「設備設計一級建築士」によるチェックが行われるようになったわけです。
こうして、「設備設計一級建築士」なる新たな資格ができたわけです。
このため、3階建て以上で、床面積が5,000m2超えの建築物を設計するには、「設備設計一級建築士」の資格が必要になってしまったのです。
当時は僕は田村設計で働いていましたが、5,000m2を超える建築の設計もありましたので、この「設備設計一級建築士」の資格をもった設備設計事務所が必要となりました。
「構造設計一級建築士」の資格については、構造を専門とする一級建築士の多くの方が取得しましたので、問題はなかったのですが、設備についてはこの資格を取れる方が周りにいませんでした。
なぜかというと、「設備設計一級建築士」は設備の資格であるのに、その前提として、「一級建築士」を持っていいることが条件とされていたためです。
前にも書きましたが、設備設計には「一級建築士」の資格は必要とされません。
従って、設備設計の多くの方が「一級建築士」の資格を持っていないため、「設備設計一級建築士」の資格が取れなかったわけです。
田村設計もはたと困ってしまい、こうなったら自分たちで取るしかないという結論となり、僕を含めて4人がこの試験に挑戦した次第です。
4人とも「意匠系」の専門ですから、設備の資格にハードルは非常に高いものです。
困っていると、偶然、とてもよい「対策講習会」が見つかり、そこで短期間に試験用の勉強をして、運良く4人そろって、資格の取得ができたというわけです。
説明がずいぶん長くなりましたが、そんな背景で取得した、「設備設計一級建築士」ですが、この資格を維持するために3年に1度、講習会を受ける必要があります。
それで、講習会に行ってきたわけです。
コロナ禍のおり、30人ほど入れる会場にたった6人でも講習会でした。
そして僕の席は一番前、
ビデオによる講習で、講師の先生もロボットのようにテキストを読むだけで、面白くもなんともありません。
しかし、最後の試験があるので、一生懸命聞いていました。
面白くはありませんが、3年に一度なので、その間にさまざまな法律ができていますので、それらをおさらいする意味では非常に役立ちます。
せっかくこんないい資格を持っているので、5,000m2を超える仕事、こないかな。。。。。。
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