44:良い間取りと普通の間取り、何が違うのか

2024年9月27日

家を建てるには、間取りが必要です。

この間取り、誰でも作れますが、良い間取りとなるとハードルがいっきに上がります。

かといって、間取りには正解はなく、住まう方が満足していればそれが正解とも言えます。

しかしながら、住まう方は建築の素人ですから、本当はもっと良い間取りがあっても、それに気づくことができません。

 

一生をかけて家をつくるわけですから、理想的な生活のできるより良い間取りの家に住んでもらいたいものだと思います。

 

今回は、間取りを提案されたけど、「何か違う」「なんかモヤモヤする」といった疑問、不安をお持ちの方に向けて、良い間取りと普通の間取りで何が違うのかまとめてみたいと思います。

 

 

■良い間取りと普通の間取り、何が違うのか

 

 

 普通の間取りとは 

 

普通の間取りといっても、何が普通なのか難しいところですが、ココでは一般的な間取りといってもいいかもしれません。

新聞広告でよく見る「建売住宅の間取り」とか、マンションによくあるような「〇LDK」といわれる間取りなんかが該当します。

 

こうした間取りは、不特定多数の方に向けた間取りであるため、可もなく不可もなくといいますか、特にこだわりのない間取りといえます。また、多くの家がこのタイプに近いのではないでしょか。

 

例えば「居間、食堂、キッチン、寝室、子供室2室」といったような必要諸室を廊下でつないだような間取りです。

 

建築学科の学生に課題で、はじめて家を設計させると、このような間取りをしてくる学生も多いと聞きます。おそらく自分の住んでいる家を基準に考えているからなのでしょう。

 

ましてや素人の方であれば、それで満足してしまうのもうなづけます。

 

機能的には全く問題ありません。

 

しかしながら、ここであえて不足しているものを言わせてもらえば、「まー、素敵!こんな家に住みたいな」と思わせてくれるような魅力です。

 

部屋を機能的に並べただけの間取りでは、こうした魅力を作ることはまずできません。

 

 

 

 良い間取りとは 

 

良い間取りとは、住まう方の希望、夢、ライフスタイル、将来像、そして敷地の持つ特性など様々な与条件を整理して、その方独自の、そしてその家ならではの解決策として提案された間取りだと思います。

 

そのようにしてできた間取りには、ほかにない独自の魅力が備わっているのです。

 

逆に言えば、解決すべき問題がはっきりしている場合は、良い間取りになる可能性が非常に高いといえます。

 

そして最も残念なケースは、解決すべき問題があるにも関わらず、その問題に気付かずただなんとなく間取りを作ってしまった場合でしょう。

 

それでは、住宅の設計で解決すべき問題はどのようなものがあるかを考えてみます。

 

 

 住宅設計における解決すべき課題のいろいろ 

 

 

住宅設計における解決すべき課題は建てる敷地、そして住まう方のライフスタイルによって千差万別です。

ある人にとっては正解でも、別の人にとっては不正解になることもあります。

ここではその中でも、共通して問題になるであろう項目をいくつかまとめてみました。

 

 

敷地における課題

  • 敷地形状

敷地の形状が正方形、長方形の場合は良いが、三角形など変形敷地の場合は配置計画、建物形状に工夫が必要。個性的な家ができる可能性が大です。

  • 周辺環境

周辺の状況によって、採光の取り方、庭の取り方、窓の取り方が決まってくる。特に都会では隣地の建物がせまって建っているケースが多い。

  • 高低差

敷地に高低差がある場合は、擁壁によってフラットにするか、高低差なりに建物を造るか、コストにも密接にかかわるため、高度な判断が要される。反面魅力的な家になりそう。

  • 敷地利用

周辺環境にも絡んでくるが、建物本体の設計に先だって、駐車場の取り方、庭の取り方(採光に影響)をまず検討する。後回しにしてはダメ。

 

 

建物本体における課題

  • 広さ問題

限られた敷地と予算の中で、要望をいかにコンパクトにまとめ、そしていかに広く見せるか、設計者の腕が試される。

  • 採光問題

南側採光がベストだが、敷地形状、周辺環境によりそれが無理な場合、どのように採光をとるかのか。(北側採光、ハイサイドライト、光だまり等、様々な可能性を検討する)

  • LDK問題

周辺環境、採光方法から、LDKを1階に設けるか2階に設けるかどちらが適しているか検討する。

  • 動線問題

駐車場から玄関、玄関から居間、あるいはパントリー、そして家事動線など、生活でよく使う場所どうしが無理なくつながっているかが重要であり、回遊できるのが理想

  • 収納問題

十分な収納スペースが、無理なくすっきりと確保できているか、クローゼット、パントリーが適切か、空間の立体的利用ができているか等。

  • バルコニー問題

何のために設置するのか、物干しはどこでするか、インナーバルコニーにするか検討する。外観デザインにも関連するので、注意深く検討する。

  • 吹き抜け問題

なんとなく憧れで設けるのではなく、空間のメリハリ感、採光利用、階段と一体的にするのか等どんな効果を狙って設置するのか、特に冷暖房の対策は大丈夫か検討する。安易に設置した場合は失敗する可能性がある。

  • ライフステージ問題

家族構成や生活スタイルは時間と共に変わるが、その変化に柔軟に対応できるか、無駄なスペースにならないか検討する。子供室は将来不要になるが、どう考えるのか等。

 

 

まだまだ、いろいろ検討すべきことは山ほどあることと思います。

 

建て主から直接このような課題が提示されるわけではなく、建て主の要望を咀嚼した時に上記のような課題が浮かび上がってきます。

 

 

このような様々な課題、問題を一つ一つ検討して解決していくことが良い間取り、魅力的な間取りにつながっていくわけです。

 

さらにコラム42でお話したように、壁・柱の直下率なども検討しながら間取りを考えなければなりません。

 

最初に間取りは誰でも作れますといいましたが、それはただ部屋を並べただけの間取りであって、本当に良い間取りを作るには専門的な高度な知識が必要です。

 

建築士がしっかり腰を据えて、様々な問題を解決してはじめてできるものなのです。

 

よくハウスメーカーでは営業担当の方が間取りを作るという話も聞きますが、その場合はただ部屋を並べただけの間取りになりがちです。

 

 

 良い間取りを作るためには 

 

 

良い間取りを作るためには、当然のことですが、建築士と住まう方(建て主)の共同作業となります。

 

それぞれの役割は

 

建て主:家を造るにあたって、予算とできるだけ詳細な要望をまとめる。

建築士:顧客の予算と要望をもとに、ヒヤリングを重ねどんな間取りが可能で、どんな問題があって、それをどのように解決するのか様々な可能性を検討してプランにまとめる。

 

ここで、大前提となるのは、間取りは必ず建築士が行うことです。

決して営業担当など専門外の人に任せてはいけません。

 

また、顧客が要望をまとめるといっても、設計に必要な要件をすべて満足することはできませんので、建築士のヒヤリングもとても重要です。

さらに、建て主の言葉にならない潜在的な欲求や欲望をも引き出して形にする能力も要求されます。

 

建て主の立場から見ると、要望通りの間取りになってはいるけれど、「何か違う」「ちょっと引っかかるな」なんて思うこともあるかもしれません。

 

これは、往々にして建築士が御用聞きのように建て主から言われたことを、言われたとおりにそのまま設計した結果である場合が多いでしょう。

 

建築士の役割は、確かに要望は聞きますが、それをそのまま形にするのではなく、要望に隠れた欲求のようなものをくみ取って、要望以上の提案をしなくてはなりません。その結果、信頼関係も生まれます。

 

大切なのは、建て主がその家でどんな暮らしをしたいと望んでいるかをくみ取らなければならないのです。

 

良い間取りを作るには、建築士と建て主とが信頼関係によって結ばれ、建て主の要望を深く理解して、建て主にあった解決策で提案された間取りこそが、その建て主にとっての良い間取りになるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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