22:省エネ・・・設備による方法(その2)
今回は先回の「省エネ・・・設備による方法(その1)」に引き続き、「省エネ・・・設備による方法の(その2)」です。
換気設備と照明設備そして、自然エネルギー利用についてですね。
換気設備の省エネについて
換気設備は健康的な生活をする上ではとても重要な設備ですが、換気をするということは省エネに反する面もありますが、まずは換気というものを理解してから省エネについて考えてみましょう。
・換気の役割と種類
換 気 の 役 割 と は
換気とは簡単にいうと、室内の空気を排出しつつ、外の空気をあらたに取り込んで室内の空気を入れ替えることです。
昔の木造の家ですと、建具も木製で、なおかつ隙間だらけでしたから、あまり「換気」に注意しなくても自然に換気ができていました。
しかし昨今の住宅は、建具はアルミサッシとなり、造り方も高気密化の傾向にあり、隙間による換気などあり得なくなってきました。
そこで計画的に換気をすることがとても重用になってきたわけです。
この「換気」には次のような役割があります。
1)室内空気の浄化
2)熱の排除
3)湿気の排除
4)酸素の供給
5)有害物質の排除
これらのことから考えると、気密性の高い住宅で「換気」をしないとどうなるか?
● 人の呼吸によって排出された二酸化炭素の濃度が高まり、頭痛や吐き気の原因となる。
● 人から発せられる呼吸・汗からの水蒸気、あるいは石油ストーブ、ファンヒータなどから出る水蒸気などにより、結露が発生して、壁・柱を腐らせたり、カビの発生の原因となってしまう。
● カビやハウスダスト、建材に含まれているホルムアルデヒドなどの有害物質が排出されず、シックハウス症候群を引き起こしてしまう。
換気をしないといかに健康に悪いかがわかりましたね。
換 気 で 注 意 す べ き こ と
さて、高気密な住宅で、換気をする場合ですが、ただ換気扇をつければよいというわけではありません。
室内の汚れた空気を換気扇で外に排出するのですが、そのためには排出する空気と同じだけの量の空気を外から入れてあげなくてはなりません。
つまり、排気をするためには給気も考えて、「空気の流れ」を作らなければ、有効な換気はできないのです。
住宅省エネルギー技術講習テキストより掲載
換 気 の 種 類 と は
この「排気」と「給気」の考え方によって換気の方式は3つに分けられます。
第1種換気、第2種換気、第3種換気の3つです。
順に説明していきます。
1)第1種換気
「排気」と「給気」のそれぞれを「送風機」を設けて行う方式です。
この方式の利点は、排気量と給気量の両方を調整できるため、風量の調整も圧力制御もできます。
欠点はコストが高くなることです。
2)第2種換気
「給気」に送風機を設け、室内空気の量を増やして「排気口」から自然排気する換気方式です。
新鮮な空気を取り込んで、室内の汚れた空気を押し出すといったイメージです。
押し出しているわけですから、室内の圧力は周囲より高くなっています。これを「正圧」といいます。
例えば周囲に汚染空気などがあって、部屋に流入させたくない場合などに有効です。
病院の手術室などはこの方式です。
3)第3種換気
「排気」に送風機を設けて、「給気口」から自然給気する方式です。
第2種換気が押し出していたのに対して、第3種換気は室内空気を引っ張り出すイメージです。
引っ張り出すわけですから、室内は「負圧」となります。
例えば、トイレとか浴室、キッチンなどのように、臭気や水蒸気などを周囲に拡散させてはいけない場合に使われる方式です。
・実は大きい換気負荷(外気負荷)
換 気 負 荷 と は
はじめに換気は省エネに反する部分があると書きましたが、それはどういうことか説明します。
換気をするということは室内の汚れた空気を排出して、外の新鮮な空気を取り込むことですが、考えてみればせっかく冷やした(あるいは温めた)空気を排出して、新たに空気を取り込むわけですから、またその空気を冷やさなければ(あるいは温めなければ)なりません。
これって省エネではないですよね。
そして、この新鮮空気を冷やしたり、あるいは温めたりするためのエネルギーが「換気負荷」なのです。
換 気 の た め の エ ネ ル ギ ー は ど れ く ら い 必 要 ?
それでは、この換気負荷つまり、空気を冷やしたり、温めたりするためのエネルギーは一体どれくらい必要なのでしょうか。
コラム20でエアコンの本当に必要な能力について検討しましたが、そのケースでみてみます。
木造の20畳の部屋で、断熱は標準の場合として、コラム20でのBパタンでみてみましょう。
ここではエアコン能力算定の基準であるJIS基準で計算していましたので、その基準によると必要な換気量は1.5回換気です。
これは部屋の容積の1.5倍の容量の空気を換気しなさいということです。
そして、空気の温度の条件は、(外気が夏33°、冬0°)、(室内は夏27°、冬20°)という条件でした。
20畳の部屋は32.4㎡で、天井高を2.4mとしますと、必要な換気量は 32.4*2.4*1.5=116.64㎥となります。
この量の空気を上記の温度条件で空調すると、必要なエネルギーは、夏の冷房では1.3Kw、冬の暖房では1.4Kwが必要となります。
これが換気のために必要な負荷です。
一方、全体の空調で必要な能力が、冷房で3.78Kw, 暖房で3.23Kwでした。
ということは換気に必要なエネルギーが全体に占める割合は、冷房で34%、暖房で43%です。
どうですか、換気負荷って結構大きくないですか?
住 宅 に 必 要 な 換 気 量 は ?
先ほどの換気量1.5回というのは、エアコンの能力算定のためのJIS基準でした。
それでは、実際に住宅に必要な換気量とはどれくらいでしょうか。
換気量については、実は建築基準法に定められています。
それによると、人間一人当たり20㎥となっています。
また、シックハウス対策として24時間換気が義務付けれれ、住宅の居室全体の容積の0.5回分の換気をせよということにもなっています。
一方、ビル管理法では二酸化炭素の濃度を1000ppm以下にしなければならないと定められています。
この基準は住宅には適用されませんが、1000ppmという数字が一つの基準となって、ここから逆算すると一人当たりに必要な換気量は30㎥となります。
これは健康的な環境にするためには、これくらいの換気量が必要だということですね。
実際に空調で負荷計算をする場合は、25㎥〜30㎥で計算するケースが多いです。
としますと、今回のシミュレーションの20畳の部屋で、例えば4人家族とした場合、必要な換気量は30㎥ * 4人 = 120㎥ となりますので、
1.5回換気の116.64㎥とほぼ同じとなりました。
もし5人家族でしたら、約30㎥ほど換気量が増えます。
その分、エアコンの能力を大きくする必要があるわけですね。
ですから、換気の負荷というのは生活する人数にも関係しますが、実はとても大きいわけです。
そこで、換気負荷にたいして省エネを考えなくてはいけないわけですね。
・換気負荷を減らすための全熱交換器
換気で一番もったいないのは、せっかく空調した空気を排出してしまうことでした。
この無駄ををなんとかしてくれる、優れものの換気扇が全熱交換器なのです。
ただ、これが使えるのは第1種換気の場合のみです。
全 熱 っ て 何 ?
さて、全熱交換器の全熱ってなんでしょうか。聞き慣れない言葉ですよね。
実は空気には、顕熱(けんねつ)と潜熱(せんねつ)という2つの熱があるのです。
顕熱とはある物体に熱を加えたり、あるいは物体から熱を奪ったりして、その物体の温度が変化する時の熱のことで、空気の温度が上下するときの温度の変化による熱のことをいいます。
それに対して、湿度の変化による熱を潜熱と言います。
空気を加湿したり、除湿したりするときはこの潜熱を加減するわけです。
この空気が持っている顕熱と潜熱を合わせて全熱といい、これが空気の持つ総エネルギーを表します。
全 熱 交 換 器 と は ?
換気で一番もったいないのは、せっかく空調した空気を排出してしまうことだと書きました。
そして、この無駄をなんとかしてくれる、すぐれものの換気扇がこの全熱交換器です。
簡単に仕組みを説明しますと、換気とは汚れた室内の空気を排出して、外の新鮮な空気と入れ替えることですが、これを一つの機械の中で同時に行うのです。
例えば夏であれば、室内の空気は温度が低く、なおかつ湿気も少ない空気です。一方外の空気は温度が高く、湿気もあります。
この2つの空気を、同時に熱交換器の中を通して、熱を交換するわけです。
全熱交換器というほどですから、温度(顕熱)と湿度(潜熱)の両方を交換するわけですね。
どのように交換するかというと、コラム21でご説明したように、熱は高い方から低い方に移動します。水分も湿ったほうから乾いた方に移動します。
その性質を利用して全熱を交換するわけです。
具体的には、温度も湿度も低い室内の空気を排出する時、同時に温度・湿度共に高い外の空気とを、エレメントといわれる特殊な薄膜紙をとおして接触させて熱交換します。
そうすることで、外から取り入れられる空気は、室内から排出される空気に温度・湿度共に移動させ、両方が低くなった状態で室内に取り込まれるわけです。
すると当然、エアコンの負荷は少なくて済むわけですね。
いかがでしょうか。
負荷の大きい空気を、熱の性質を利用して、交換してるんですね。ホント、スグレモノです。
三菱電機製の「ロスナイ」という換気扇が非常によく使われていますが、これが全熱交換器です
熱交換の仕組みは下図を参照してください。
ダイキンHPより掲載
照明設備の省エネについて
照明器具はいまやほとんどの器具がLEDになっています。
照明設備の省エネはLEDを使うしかないと思います。
器具ごと取り換えることができれば一番いいですが、従来の蛍光灯とかダウンライトでも電球だけLEDに取り替えが可能です。
LEDの利点は消費電力が一般電球に比べて、1/4から1/6と省エネであり、寿命は約40,000時間で非常に長寿命です。
難点は一般電球に比べて値段が高いことです。
しかし、一般電球が白熱灯なら寿命は1000時間〜2000時間くらいなので、取り替え手間なども考慮するとやはりLEDのほうがいいですね。
参考までにパナソニックさんのLED電球のカタログを添付します。
これは一般電球100W相当の明るさのLED電球です。
消費電力は12.9Wですから電気代が1/5くらいになりますね。
参考までに、Ra 84という数字が書いてありますが、これは演色性というものを表す数字です。
この数値が100に近いほど、本来の自然の色を再現できる性質が高いことを示しています。
これについてもパナソニックさんのカタログから添付します。
これを見てもRaの数字が高い右側の方がより自然の色に近いですね。
LEDを選ぶ時、こんな数値も注意したほうがいいです。
自然エネルギー利用による省エネ
・太陽光設備
太陽光発電は、「太陽光電池」と呼ばれる装置を用いて、太陽の光エネルギーを電気に変えるシステムです。
太陽の光は再生可能エネルギーといわれ、発電に際して有害物質を発生させないクリーンなエネルギーであり、将来枯渇する心配もありません。
また、2012年に始まったFIT制度(固定価格買取制度)により、住宅であれば自宅で発電した電気を自家消費し、余った電気を電力会社に売電することができます。
太陽光発電の設置費用は、住宅用であれば一般的に150〜300万円程度ですが、余剰売電をすれば初期投資は12〜13年で回収できるようです。
そして発電により、光熱費が削減でき、パワーコンディショナーを設置することで、災害時には非常電源として電気が使えるというメリットもあります。
地球温暖化が心配される中では、検討に値する設備だと思います。
住宅省エネルギー技術講習テキストより掲載
・太陽熱設備
「太陽光」は電気をつくるのに対して、「太陽熱」はお湯を作ります。
太陽熱利用システムは太陽の熱を使って温水や温風を作り、給湯や冷暖房に利用するシステムなのです。
太陽光発電では、「太陽電池」を使いましたが、太陽熱利用では効率的に熱を集めるための「集熱パネル」を使います。
この「集熱パネル」には水式集熱器と空気式集熱器の2つに分けられますが、太陽光発電に較べると、太陽熱使用のほうが「変換効率」が高くなっていますが、太陽光発電の発電効率は15〜20%程度に対して、太陽熱利用で水をお湯に変える変換効率は45〜60%ほどにもなるようです。
東京都環境局のHPにわかりやすい図と表がありましたので、添付します。
以上で、省エネ・・・設備による方法は完了です。
Categorised in: 建築設計あれこれコラム