52:床下エアコン:その利点と注意点

2024年11月20日

床下エアコンは、暖気が上昇するという特性を活かして家全体を暖房する方式で、1種の全館空調ともいえる方式です。

 

そして、非常に快適性の高い暖房方式といえます。

 

この床下エアコンの方式は様々な利点もありますが、設計上、施工上の注意点もいくつかあります。

 

それを知らずに安易に採用すると、失敗する可能性もあります。

 

今回は、この床下エアコンの利点と注意点についてのお話です。

 

 

 

■床下エアコン:その利点と注意点

 

 

 床下エアコンとは 

 

 

床下エアコンを使った暖房方式とは、一般的な家庭用の壁掛けエアコンを床下に設置して、下図のように暖気を床下に送り込み、その暖気が床面に設けた吹出用ガラリから室内に入ることによって暖房する方式です。

 

設計次第では、エアコン1台で、家中の暖房を賄うことも可能です。

 

 

 

 

ただ、このシステムで暖房する場合は、家の断熱レベルを等級6以上とし、気密性も最低でもC値1.0以下にしなければなりません。

 

この方式であれば、窓面に沿って吹出用ガラリを設ければ、温風により冬場に窓から冷気が足元に迫ってくる問題(コールドドラフト)も防ぐことができます。

 

 

 

床下エアコンと似たような方式で、床暖房というシステムもありますが、方式は全く違います。

 

床下エアコンは家庭用のエアコンを基本的には1台使用するだけですが、

 

床暖房というシステムは、下図のように温水用の配管と専用パネル、あるいは電気の場合ならヒータパネルなどの設備機器が必要となり、施工費もかかります。

 

 

 

註)ダイキンHPより

 

 

床暖房ですから、床面が暖かく快適ですが、家中を暖かくするには、施工範囲が広くなりすぎ現実的ではありません。

 

また、窓面からのコールドドラフトを防ぐこともできません。

 

熱源は、電気、ガス、灯油などがありますが、ランニングコストでは家庭用エアコンにはかないません。

 

このように、床下エアコンの方式はイニシャルコスト、ランニングコスト両面にメリットがあり、かなり良い方式といえます。

 

それでは次に、利点と注意点を詳しく見ていきましょう。

 

 

 

 床下エアコンの利点 

 

 

1)家庭用エアコン1台でムラなく家全体を暖めることができる

 

床下エアコンは床下に暖気を吹き込みます。

 

床下の空間は家中つながっていますので、部屋の間仕切りに関係なく暖気は広がり、家中にバランスよく設けた吹出用ガラリから暖気が部屋に供給されます。

 

その結果、寒いといわれる納戸やトイレ、洗面所までくまなく暖めることができるのです。

 

特にユニットバス廻りは、床下からの暖気が全体にまわるので、とても暖かくなり快適なお風呂となります。

 

 

2)壁掛けエアコン特有の足元の寒さや、直接温風が顔や体にあたるという不快感がない

 

暖気は上昇する性質があるため、通常の壁掛けエアコンでは、部屋が暖かくても足元が寒いという問題がありました。

 

これに対して、床下エアコンは、文字通り床下から暖めるため、足元が暖かく、また気流が直接顔や体にあたるということもありません。

 

エアコンの持っていた不快感の要素が解決されているといえます。

 

 

 

3)安いランニングコストで全館空調ができる

 

床下エアコンは、全館空調ができますが、家庭用のヒートポンプエアコン1台で賄っているため、ランニングコストが非常に安いです。

 

 

4)床材のフローリングは自由に選定できる

 

床暖房では、30℃~50℃の温水で床を暖めるため、床暖房用のフローリングを選定しないと、変形、反り、ひび割れを起こしてしまいます。

 

一方、床下エアコンは床面を直接暖めるわけではありませんので、特に専用のフローリングにするなどの配慮は不要で、無垢フローングでも複合フローリングでも自由に選定できます。

 

 

以上、4つの利点が挙げられます。

 

次に注意点です。

 

 

 

 床下エアコンの注意点 

 

 

1)家の断熱性、気密性を高める

 

床下エアコンは家庭用のエアコン1台で家中を暖めるため、下記のように高い断熱性能、気密性能が要求されます。

 

  • 断熱等級6以上
  • 気密性能 C値1.0以下

 

2)基礎断熱とする

 

床面の断熱には、基礎断熱と床断熱の2通りあります。

 

基礎断熱とは、下図のように床下のコンクリート基礎部分で断熱する方法です。

 

 

 註)国交省 住宅の省エネルギー基準と評価方法より

 

 

 

床断熱は、床下で断熱する方法で、床下は外気が通り抜けるような構造になっています。

 

 

註)国交省 住宅の省エネルギー基準と評価方法より

 

 

床下エアコンは床下に暖気を送り込みますので、床下空間が断熱されていなくてはなりません。そのため、基礎断熱にする必要があるわけです。

 

もし、床断熱で床下エアコンを行った場合は、床下は外気と同じ条件ですから、暖房が全く効かないだけでなく、電気代もとんでもないことになってしまいますので、絶対に間違えないようにしてください。

 

 

3)床下の基礎立上がりを減らす

 

 

一般的な基礎は写真のように間仕切壁の下に基礎の立ち上がりがあります。

 

 

 

床下エアコンでは、床下に暖気を行きわたらせるために、内部の基礎立上がりを減らす必要があります。

 

このように床下の構造にも大きく影響するため、設計段階からの検討が必要となります。

 

 

4)エアコン設置に注意

 

床下エアコンは、床面から半埋込にして設置しますが、エアコン周囲を密閉することで床下がチャンバーのようになり、エアコンから吹き出す暖気が遠くまで届くようになります。

 

メンテナンスが必要ですから、この密閉する部材は取り外しできるようにしなければなりません。

 

 

 

 

5)エアコンの選定に注意

 

床下エアコンを選定する場合、温度センサーが本体上部にあるか、リモコンにセンサーがついているタイプを選ぶ必要があります。

 

もし、センサーが下部についていると、床下の温度を感知してしまい、室温が上がる前に停止してしまいます。

 

また、家庭用の壁掛けエアコンを使用しますが、メーカーの想定している使い方ではないため、メーカー保証は出ません。

 

メーカー保証は普通1年ですが、1年で故障することはまずありませんが、どうしてもメーカー保証が欲しいという場合は、床下エアコンの採用はやめたほうが良いです。

 

 

 

 まとめ 

 

床下エアコンとは、家庭用の壁掛けエアコン1台を利用することで、床下から家全体をくまなく暖まることができるシステムです。

 

特別な設備やダクトも必要ないため、イニシャルコストが抑えられ、ヒートポンプエアコンのためランニングコストも非常に安く、とてもすぐれた全館暖房のシステムといえます。

 

但し、いくつかの注意点があります。

 

  • 高い断熱性能・気密性能
  • 基礎構造
  • 基礎断熱
  • エアコンの選定、設置方法

 

これらの注意点を知らずに、形だけ安易に床下エアコンにしたのでは、取り返しのつかない失敗につながります。

 

よく理解してこのシステムを採用すれば、とても快適な生活がおくれるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Categorised in: