50:家づくりに失敗しないための5つのポイント
家をつくるにあたっては、どうしても外してはいけないポイントがいくつかあります。
しかしながら、家づくりは、ほとんどの人が初めて経験するため、何に注意したらよいのかよくわからないのが現状だと思います。
家づくりはやり直しがききません。
だからこそ根本的な失敗は絶対に避けたいところです。
大きなお金が必要となる家づくりだからこそ、自分の気にいった理想の家を手に入れ、充実した生活をおくりたいものです。
今回は、家が建ってしまった後にこんなはずではなかったと後悔しないための注意すべきポイントについてのお話です。
目次
■家づくりに失敗しないための5つのポイント
家は一度建てたら立て直すことはできません。
建ててから後悔しないために、下記の5つのポイントは絶対押さえておくべき要件です。
- 敷地の日当たりの状況の把握
- 家の配置、駐車場、庭などの敷地利用の検討
- 予算組の検討及びライフステージから適切な規模の設定
- 目指すべき家の「性能」
- 生活動線の効率化
順番にみていきましょう。
1.敷地の日当たりの状況の把握
まずは、敷地の日当たり状況を確認しましょう。
郊外の土地で、周りに何も建っていなければ、全く問題ありませんが、市街地では敷地周囲は隣地の建物がたいていは建っています。
特に北側道路で敷地の南側、東側、西側が隣地の場合は、3方向に建物が建っています。
このような場合は、敷地のどのあたりに何時頃日が差すか、現地でよく観察する必要があります。
そして日の差す位置がわかれば、そこに庭を設け、生活の中心となる居間、もしくは食堂を配置するようにします。
もし、建築士がいるのであれば、周辺の状況を入力して日影図を書いてもらえば、図面上でどこに何時間くらいの日影ができるかわかりますので、より明確に位置が決定できます。
こうした検討をしないで、計画を進めると、せっかく日の当たる場所があるにも関わらず、全く日の当たらない暗い部屋になってしまい,後で後悔することになってしまいます。
それは避けたいですよね。
また、もし検討の結果南側から採光が期待できないと判明した場合は、どうしたらよいでしょうか。
その場合は下記のようにちょっと工夫が必要です。
代表的な例です。
- 居間を2階にする
- ハイサイド窓を設ける
- 吹き抜けを設け、上部から採光を確保する。
簡単なスケッチで見てみます。
- 居間を2階にする
- ハイサイド窓を設置する
- 吹き抜けを設け、上部から採光を確保する
敷地の状況によって、いろいろなことが検討できると思います。
2.家の配置、駐車場、庭などの敷地利用の検討
敷地内の建物の配置計画においては、重要な要素は「建物、駐車場、庭」の3つです。
そして、そのうち、駐車場と庭の配置を最優先に考えます。
庭は最初に検討した日当たりの良い位置に配置します。そうすることで、庭は建物に光を呼び込むスペースとなり、その庭に面して居間を設ければ明るく健康的な部屋になります。
そして、駐車場は当然のことながら、道路と接する場所に駐車しやすいように配置しなければなりませんが、庭にすべきスペースは避けるようにします。
この順番で考えれば、南側の居間に採光が取れても、その前が駐車場となってしまって、窓越しに車を見るはめになるという失敗も防げます。
このように、具体的に間取りに入る前に、駐車場、庭の位置をまず検討しなければなりません。
建物の配置、間取りを先に考えて、余ったスペースに駐車場を設けるといったような考えでは良い計画にはなりません。
以下に敷地利用の簡単な参考図を添付します。
1)敷地間口、奥行きが狭いケース
2)敷地間口、奥行きがあるケース
3)車を2台駐車するケース
3.予算組の検討及びライフステージから適切な規模の設定
家づくりで最も頭を悩ます問題が予算です。
理想だけ追い求めて、際限なく計画してしまうと、建物はどんどん大きくなり、最後に予算オーバーとなってしまい、計画をやり直すという失敗につながってしまいます。
こうした失敗を防ぐには、あらかじめ適切な規模を設定する必要があります。
まず、自己資金、銀行融資などを検討して、総予算を決め、いくらまで建物に予算が回せるか慎重に検討しなければなりません。
コラム45「坪単価での比較は要注意」でも書きましたが、家づくりでは様々なコストがかかります。
一般的には、建築本体にかけられる費用は総予算のうちの大体70%程度だといわれています。
そのほかには、外構工事、屋外排水工事、電気引込工事などの付帯工事費が20%、登記費用、火災保険などの諸費用に10%ほどの費用がかかります。
総予算が決まったら、まず初めに建物本体にかける予算を決めましょう。
そして予算から建築できる建物の広さを逆算します。
逆算はするには、まず「坪単価」を調べ、予算をその坪単価で割れば建築できる広さが求められます。
次に、ライフステージを考えます。
若い方の場合は、ゆくゆくは家族が増えていきます。そして子供が大きくなり、その先にはみんな独立し、家族が減ります。
最近よく聞く話は、若いころに家をつくり、子供室を設けたが、いまはみな独立し部屋が余っている、そして、夫婦二人では家が広すぎて持て余しているというお話です。
そう考えると、子供室はあまり広くつくらない、もしくは独立した後の用途も考えて最小限の広さで考えてもいいかもしれません。
子供部屋を、将来の家族のライフステージに合わせて活用できる空間と考え、設計段階で多用途性を考慮しておくのがよいと思います。
基本的には、家はなるべきコンパクトに作り、広く見えるように工夫してつくるのが、予算面からみても一番いいように思います。
このようにして、予算から逆算した広さと、ライフステージから考えた広さの両面から適切な広さを割り出しましょう。
4.目指すべき家の「性能」
家をつくるにあたっては、やはり夏涼しくて、冬暖かい家が理想です。
これを実現するには、適切な断熱性能と気密性能が必要になります。
このように家には「性能」という指標があります。
性能について詳しくはコラム33「家の性能って何」をご覧下さい。
家の「性能」については幅がありますので、どこを目指したいかは建て主が意思表示することが大切です。
といいますのも、断熱性能にしても下図のように「断熱等級1」から「断熱等級7」まで幅があります。
国交省HPより
そのため、設計者もしくは工務店に、単に「冬に暖かい家がいいです」と要望しても、本来であれば断熱等級6程度欲しいところが、断熱に対する認識の違いから断熱等級4で十分と判断されてしまう場合もあります。
また、断熱性能が良くても気密性を考慮した施工をしないと、本来の断熱性能が発揮できません。
気密性能は計算で算定できるものではなく、目標数値を設定し、それに向けて丁寧な施工が要求されます。
こうした失敗をしないためには、依頼する設計事務もしくは工務店が断熱性、気密性など家の性能についてどのように考えているかよく調べ、しっかり性能について考えているところを選ぶことが大切です。
5.生活動線の効率化
最後に間取りの話になりますが、一度建てた家は当然ですが、末永く住み続けます。
もし、建てた家の生活動線が悪いと、一生不便に感じて、ストレスを持ちながら生活することになってしまいます。
生活動線には以下の3つがあります。
- 家事動線:料理や洗濯、掃除などの家事に必要な動線
- 通勤・通学動線:玄関から寝室やリビングなど、外出や帰宅の際に通る動線
- 生活動線:リビング、寝室、バスルーム、トイレなど、日常生活で頻繁に行き来する動線
これらの動線が無駄なく効率的になるように平面計画することが大切です。
また、無駄なスペース、特に廊下などは極力少なくするのが良いでしょう。
そのためには、玄関と階段をセットに考え、できれば家の中央あたりに設置できると無駄のない平面計画ができます。
以上、5つのポイントについてご説明してきました。
家を建てるのは、ほとんどの方が一生に1回です。
どうか、「こんなはずでなかった」と後悔せずに済むように、慎重に考え、そして楽しくワクワクする家づくりをしていただきたいと思います。
Categorised in: 建築設計あれこれコラム