39:古い木造住宅、「耐震補強」はどのようにするの?
古い木造住宅で、着工時期が平成12年5月以前の住宅、特に昭和56年5月以前の住宅は、耐震強度が不足していることが心配されます。
この時期に建てられて方は、是非耐震診断をして、どれほどの耐震性があるか調べられたほうが良いでしょう。
そして耐震診断の結果、評点が1.0未満でしたら、耐震補強の検討をしてください。
今回はこの、耐震補強についてのお話です。
補強計画は、まず地盤の状況から「著しく軟弱」か「軟弱」な地盤の上に住宅が建っている場合には、壁の量を1.5倍にするなど、壁量の目安をつかみます。
次に部屋の形状から耐震壁があまり多く設けられないようなら、強度の高い壁とします。この時、この耐力壁には力が集中するため、水平構面、柱梁の接合部、基礎までしっかり補強する必要が出てきます。
逆に、耐震壁を多く設置できそうな場合は、力が分散するので、接合部も水平構面も軽微な補強で済みます。
このように、耐震の補強計画は、建物全体を考えて効果的に耐震性を高めることが必要になります。
古い木造住宅で、この補強をどのようにしていくのか、具体的に解説していこうと思います。
(補強方法は日本建築防災協会の木造住宅の耐震診断と補強方法に沿って解説します)
目次
■古い木造住宅、「耐震補強」はどのようにするの?
耐震補強計画の考え方
補強計画を検討するにあたって、下記の7つのポイントがあります。
1)壁量の確保:既存の壁に筋交いをいれたり、構造用合板を張るなどして、壁の構造強度を強くします。
2)壁のバランスの良い配置:壁の量がた東西南北にバランスよく配置されるように検討します。
3)接合部:柱と梁、筋交いなどの接合部は、力のかかり方に応じた金物でしっかり補強しなければなりません。
4)基礎:古い建物は基礎に鉄筋が入っていません。このような基礎の場合は、鉄筋の入った鉄筋コンクリートの基礎を増設して補強します。
5)建物の一体性:2階建ての住宅など、上下階の壁の位置を一致させたり、オーバーハング部やピロティ部分の補強をします。
6)腐朽や蟻害:湿気やシロアリの害等によって木材が腐ると、耐震性は著しく低下します。そのような部材を取り換えたり、局部的なつぎ木等による補強をします。
7)その他:建物の軽量化は地震に対して有利なため、屋根材や外壁仕上げ材を軽い材料に変更することも考えられます。
これら7つのポイントにそって、補強計画を練っていくわけです。
この中で1)、3)、4)、5)、6)についてもう少し詳しく見ていきましょう。
1)壁量の確保
既設の壁に筋交いを均等に入れたり、構造用合板を張ることで、地震時の揺れに強い壁になるように補強をします。
このような耐力壁を増やすことは耐震性の向上に有効で、さらにつりあいよく配置されていることが重要です。
この壁の補強は、外壁側からでも室内側からでもできます。
外壁のリフォームを兼ねて工事する場合には、外部からの補強ができますが、外壁はそのままという場合は、内壁をはがして内側から補強することもできます。
下図は、構造用合板を張る場合と、筋交いによる補強の図面です。
どちらの図面にも接合部となる部分に金物が入れてあることがわかります。
3)接合部
柱や梁、土台などの構造上必要な部材を強くしても、接合部が十分に緊結されていないとすぐに外れてしまい、全く役に立ちません。
接合部の補強方法は、それぞれの接合部に適した接合金物を用いて補強することがととても重要です。
下図は主に柱と梁の接合部の金物補強の例を示したいます。
4)基礎
昔の基礎は鉄筋が入っていない、無筋コンクリートの基礎が多くあります。
無筋コンクリートの基礎は、鉄筋コンクリートの布基礎を増し打ちして補強することが有効です。
あるいは、耐力壁をバランスよく配置し、無筋コンクリート基礎に局所的に強い力がかからないようにする方法もあります。
下図は、無筋コンクリート基礎に鉄筋コンクリート基礎を添わせて補強している例です。
5)建物の一体性 地震による
地震による水平力を無理なく伝達するために床や吹き抜けなどの水平構面を剛にすることが必要です。
また、上下階の耐力壁の位置を一致させたり、ピロティやオーバーハングの下部に壁や柱を設置するなどして、上階から下階へ力を無理なく伝えることも重要です。
下図は、吹き抜けのある床面の剛性を高めるために、火打ち梁という部材を設置したり、キャットウォークを設けて、それにより吹き抜け面を補強している例です。
6)腐朽や蟻害
湿気等によって木材が腐朽したり、シロアリ被害が出ると木材の強度は著しく低下します。
腐朽や蟻害による劣化した部材は、新しい部材に取り換えることが必要です。また、その際に取り換えたことが構造的な弱点にならないように接合部を十分に緊結することが重要です。
下図は、土台と柱を部分的に抜き取り、新しい部材を入れ込んで、かなもので補強している例です。
このように様々な方法で古い木造住宅を耐震補強し、強度を高めることができます。
最後に施工上の留意点ですが、外側から補強する場合は、工事関係者が住宅室内に入らずに済むので、施主にとってはありがたい方法ですが、この場合は外壁を撤去しての工事となりますので、雨の侵入に対して十分な養生が必要となります。
また、反対に内部からの補強工事の場合は、工事関係者が室内に出入りすることになり、施主にとっては生活面での支障が極力少なくて済むように配慮する必要があります。
また、補強工事では室内の仕上材を撤去しての工事となりますので、リフォーム工事を一緒に行うことが有効といえます。
専門家と相談して、より良い方法を検討してみてください。
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