先日、「新美の巨人たち」という番組で、建築家の村野藤吾さんの特集をしていました。
村野さんはもう35年ほど前にお亡くなりになっていますが、丹下健三さんと並んで、日本を代表する偉大な建築家です。
僕は村野藤吾さんの建築が大好きで、最も尊敬する建築家です。
その作品は
身近なところでは、
・ザ・プリンス箱根芦ノ湖
・グランドプリンスホテル新高輪
・志摩観光ホテル
・グランドプリンスホテル京都
・日生劇場
・丸栄百貨店(最近解体されてしまいました)
などがあります。
特にグランドプリンスホテル新高輪では、テレビでおなじみの歌謡際が「飛天」という大広間で取り行われています。
「飛天」は天井が柔らかい曲面になっていて、大きなシャンデリアが特徴的です。
ザ・プリンス箱根芦ノ湖のホールはこんな感じです。
村野藤吾さんは、もともとは様式建築の事務所で修行をされていたこともあり、直線的な近代建築とは一線を画した作風ですが、村野さんのように、柔らかく包み込むような優美な空間は、恐らくもう誰も設計できないのではないかと思います。
それほど、個性的で独特な空間です。
実際に村野藤吾さんの建築をあちこち見て回りましたが、空間を作る壁、天井の素材感、決して角張らない細部の納まり、ドアの取手のデザイン、照明器具のデザイン、そして空間にマッチした椅子、テーブルなど、あらゆるものが全てデザインされ、そしてその設計の密度の高さに唖然としてしまいます。
下の写真は、ザ・プリンス芦ノ湖のレストランの特注の照明器具です。
村野さんが、どこかの民芸品を気に入り、それをモチーフに照明器具としてデザインされています。
可愛いですよね。
これは、ダンサーの顔がモチーフなんでしょうかね。
そして圧巻は階段のデザインです。
美しすぎる。手すりの曲線が色っぽいなんて感じてしまいます。
村野さんの設計する階段は、とても曲線が美しく、手すりのデザインも手にやさしく、思わず登りたくなるような階段です。
本で読みましたが、村野藤吾さんが現場の中で、若い人たちに、
「君たち、階段で最も重要な部分は何かわかるかね?」
と質問したそうです。
彼らは
「それは手すりのデザインです」
「いやいや、踏面と蹴上のバランスではないか」
「いや、ササラのカーブだ」
などと思い思いの回答をしたそうですが、
村野さん答えは
「階段で最も大切なのは段裏のたたずまいだよ」
と、おっしゃったそうです。
なるほど、確かに村野さんの設計する階段は裏から見てもとっても綺麗だ。そういうことか。
などと納得しました。
テレビを見て、村野藤吾さんのことを思い出したわけですが、改めて、設計の奥深さ、面白さ、難しさを感じた次第です。
設計者は、何事も揺るがせにしないという姿勢が大事という村野さんの言葉にも気を引き締められました。
精進しないといけませんね。
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