38:「耐震診断!」って何を診断するの?
前回のコラム「耐震補強は重要(平成12年以前、特に昭和56年以前の住宅は要注意!何が問題か)
で、平成12年5月以前の木造住宅は耐震強度の不足がありうるので、耐震診断をお勧めしますとご紹介しました。
さて、この「耐震診断」とは、いったい何をするのでしょうか。
今回はそのお話です。
目次
■「耐震診断!」って何を診断するの?
一般的には、耐震診断は専門家が現地調査を行い、目視で間取りや、床下、屋根裏等を調べて評価しますが、その前に素人でもできる「誰でもできるわが家の耐震診断」についてご紹介します。
これは、10個の設問にわかる範囲で回答して、その評点によって下記のように「判定・今後の対策」が示されています。
10点:ひとまず安心ですが、念のため専門家に診てもらいましょう
8~9点:専門家に診てもらいましょう
7点以下:心配ですので、早めに専門家に診てもらいましょう
これはNETで簡単に検索できます。下記をクリックしてみてください。
簡単にできますよ。
参考までに診断してみてください。
それでは次に我々専門家が行う耐震診断についてご説明します。
(日本建築防災協会:木造住宅の耐震診断と補強方法に沿って解説します)
診断項目
診断は、(a)地盤・基礎 (b)上部構造の耐力 と大きく2つの項目に分けられます。
(a)地盤・基礎の調査
地盤
地盤崩壊などの地盤災害の可能性の有無を判断するために建ても周辺の地形・地盤の調査を行います。
地盤の評価基準は
「良い・普通の地盤」・「悪い地盤」・「非常に悪い地盤」の3つで評価します。
特に「非常に悪い地盤」の場合は、必要壁量を1.5倍して補強設計を行います。
基礎
基礎仕様を判別するために、基礎形状、鉄筋の有無、クラックに注目して基礎の調査を行います。
補強設計で耐力壁が増え、基礎の強度が不足する場合などには、鉄筋を入れた基礎を抱かせて適切に基礎の補強などを行います。
(b)上部構造の調査
(1)壁の基準耐力
壁の基準耐力を算定するためには、「壁の仕様」・「横架材の接合部」・「壁材の劣化」などを中心に調査を行います。
壁が土壁なのか、サイディング壁なのか、また筋交いが入っているか、入ってないか、入っていればその部材寸法はいくらかなどを調べ、その仕様によって壁の基準耐力が決められているため、その住宅の壁の持つ耐力が計算できるわけです。
(2)柱接合部による低減計数
壁周辺の柱の頭(柱頭)及び柱の足元(柱脚)の接合部の仕様を調べ、柱接合部の仕様により、強度の低減係数が算定されます。
この調査は、床下や天井裏・小屋裏から目視で行います。
(3)耐震要素の配置等による低減係数
耐力要素の配置がバランスよく適切でないと、偏心率が大きくなり、特定の耐震要素の負担が大きくなる可能性があります。
この耐力要素の配置のバランスを算定するとともに、床仕様による水平構面の剛性も評価し、低減係数を算定します。
(4)劣化度による低減係数
劣化による低減は、調査項目として①屋根葺き材、②樋、③外壁仕上げ・露出した躯体、④バルコニー、⑤内壁、⑥床が挙げられます。
これらの診断項目を列記したチェックシートをもとに、各項目で劣化の状況を調べて建物を評価し、低減係数を算定します。
総合評価
このようにして、(a)地盤・基礎と(b)上部構造を別々に評価します。
(a)地盤。基礎については、地震時に起きる被害について注意事項を記述します。
(b)上部構造については、評点が算出され、その評点によって下記のように判定されます。
1.5以上:倒壊しない
1.0以上~1.5未満:一応倒壊しない
0.7以上~1.0未満:倒壊する可能性がある
0.7未満:倒壊する可能性が高い
耐震診断では、この評点が1.0未満の場合に耐震補強をして少なくとも1.0以上の評点になるように勧めています。
ただ、ここでの注意事項ですが、この評点が1.0になったとしてもそれは一応倒壊しないだろうという判断で、倒壊による命の危険が避けられるということであって、そのまま住み続けられることではありません。
そのため、耐震補強をする場合は、予算の許す限り、できるだけ評点を高くするように心がけていただけると良いと思います。
また、耐震補強にはいろいろなやり方がありますが、リフォームと兼ねて耐震補強をすると、補強できる範囲も広がり効果的な工事ができる利点があります。
いずれにしても、専門家の判断が必要ですので、まずは信頼できる専門家に相談されることをお勧めします。
最後に実際の耐震診断の結果の表を参考までに添付します。
この住宅は築50年の平屋の木造住宅でしたが、評価は0.92で「倒壊する可能性がある」というものでした。
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